2006年8月26〜28日 南アルプス 三峰川岳沢

メンバー:moto.pさん、ひろた
装備:ザイル9mm×45m、カム、靴:フェルト
遡行図、概念図はこちら

"moto.pさんの行きたい沢VOL2"の岳沢。日本100名谷であることは、最近知った。アイスでは有名な沢でmoto.pさんもアイスで行った事があるとの事。
一方、夏の遡行はWEBの記録が全く見あたらない。「日本登山大系」によると遡行時間10時間。「日本100名谷」だと5時間から8時間と書かれた三峰川屈指の
内容を誇る岳沢とはいかがなものか・・・

アプローチ
18:08自宅発→(バイク)18:40小金井→8:50府中本町→(八王子/諏訪IC)2:09丸山谷ゲート着
 
前回の聖沢同様、府中本町までは電車。小生の自宅は非常に不便な所にあり、最寄の駅までバイク(CB1000)で行った。ヘルメットを被っているとはいえ、
半ズボン、沢シャツ、サンダルで1000ccのバイクはかなり異様でリスキーだが、致し方ない・・・
府中本町からmoto.pさんの車で出発。諏訪ICからR156を南下。三峰川沿いの集落を抜けるとすぐに「関係者以外進入禁止」の立て看板が道を塞ぐが、
これらを一旦どけてさらに進入。途中でダートとなるが通常の2WD車で問題なく入っていける。塩沢の出合すぐ先でゲート。Moto.pさんが3月に来たときは
ゲートが閉まっていたようだが、鍵はかかっておらず。さらに車を進め、丸山谷沿いの林道に入る。南沢/北沢出合のすぐ先に再びゲートを発見。
ここも鍵はかかっていないようだが、この先で堰堤工事が行われているため。ここに車をデポすることにした。ゲートすぐ手前にミニ発電所があり。
平坦な所にテントを張って仮眠する。
 Moto.p氏によると手前のゲートから、この南沢/北沢のゲートまでは歩いて1時間との事。
 
初日
9:02丸山谷北沢/南沢出合ゲート発→10:01営林所小屋跡→11:25岳沢超→11:57岳沢出合着

今日の行動は"岳沢越ルート"(添付図参照)で岳沢の取り付きまで、『日本登山大系』の記述から推察すると約4時間の行動時間だ。夜寒かったので、
テントも持っていくことにする。荷物を纏めていると、

「あっ!行動食持ってくるのを忘れた!!!」とmoto.pさん

時間はまだ7時半。今日の行動時間の短さもあり、高遠町にあったセブンイレブン目指して戻ることにした。三峰川林道では何台もの釣人と思われる車と
すれ違う。この時期ゲートは常に開錠されているようだ。幸い、高遠町まで行かずに近くの酒屋でお菓子を買い求めることが出来ラッキーだったのだが、
途中で携帯で天気予報を見ると、昨日の予想と打って変わって、岳沢を遡行する日曜日の天気が悪い予報になっていた! 
「もう、このまま帰ろうか?!」なーんて感じでテンションダウン。1時間半後、再びゲートに戻り歩き出す。。。

さて、"岳沢越"だが、ゲートから南沢右岸につけられた林道が左岸に渡った先で、堰堤工事が行われており、ここで車道は終了。ゲートから2km弱。
左岸につけられた薄い踏み跡をすぐ上の巨大堰堤を越えた所まで進むと今度は右岸にかつての車道跡が標高1400m二俣まで付けられている。
二俣からは沢沿いには進まず、左の子尾根に付けられたジグザグの踏み跡を50m程直上してから、沢沿いにトラバース。しばらく行くと、
営林小屋跡に出る。
南沢/北沢出合
南沢の二俣
営林小屋跡

営林小屋完全な廃屋だが建物自体はちゃんと残っている。小屋の南側に付けられた踏み跡をさらに進むとすぐに奥の二俣。ここで沢床に一旦降り
右俣の沢を詰める。1つ2つの5m滝を越えると伏流になり大ガレが見えてきた所からは左岸に踏跡が付けられているので、これを利用すると早い。
ただトゲトゲの草がチクチク痛いこともあり、私はそのまま大ガレを直登したが、moto.pさんに遅れること数分で2113ピーク南の鞍部に到着した。
時間は11時半前。やはり車で奥まで入れたのが幸いだった。
南沢 奥の二俣の右俣
最後の大ガレ
2113ピーク南の鞍部

鞍部から踏み跡なのか獣道かよく判らないが歩きやすい所を見つけて下ればすぐに三峰川に出る。早くも魚影発見!ここから5分も下れば
岳沢出合に到着! 岳沢に50m程入った右岸に良いテン場を発見したので、ここで今日の行動を終了する。
さてさて、前回の聖沢の反省を踏まえ、今回は毛ばりで岩魚を狙うが、中途半端な仕掛けが悪いのかor茶色い毛ばりが悪いのか、魚は結構居るのに
なかなか釣れない!1匹毛ばりでGETした後、羽虫やバッタもTRYし、2時間近くウロウロしてたが結局1匹のみ・・・悲しいー!
moto.pさんがそれを察してか、豪勢につまみを持ってきてくれたので気を取り直して宴会!!! 暗くなると雨が降り出し明日の天気に不安を残したまま
テントに入った。
三峰川への下降
三峰川本流に出た
岳沢出合にて


二日目
5:07岳沢出合出発→8:28ソーメン流し滝下→9:55ソーメン流し滝上→11:55大仙丈ヶ岳山頂着→12:30仙丈ヶ岳山頂
→13:13下降点(三峰川無名沢)→14:51岳沢出合着

3時半に起きて空を見上げると星が見えた!「よし決行だ!」と準備を整えていざ出発の時間には空はどんより・・・
まぁ雨は降っていないし、予報では昼から雨なので中止にする理由が無いので必要な荷物だけもって・・・。

「あれ、ハーケンが無い!」 とmoto.pさん!
「マジ!俺3本しか持ってこなかったよー」
「うーん、ハーケン3本とカムかぁ・・・」
「まぁ、行って見るか」
             と出発する。

岳沢の序盤はゴーロ帯。途中で伏流になる。しばらく進むと6m,4mと小滝が二つ。何の問題も無く通過。その先の8mトイ状から厳しい雰囲気となってくる。
8mトイ状は水流右を快適に直登出来るが、その上の2段15mがいきなりシビア。落ち口付近までは行けそうなのだが、落ち口を乗り越える所がかなり
微妙。俺は水流左。moto.pさんは右と判断。ならばmoto.pさんトップお願い!と、難しそうな所は相手に押し付ける。(笑)
6m程右壁を直上し、ハーケンでビレイを取ろうとするので、下から「ハーケン3本しかないよー!」と鬼発言! 渋々と落ち口に向かって斜上していく
moto.pさん。途中の潅木でビレイを取ってようやく一息。ただ問題はこの先。じりじり落ち口に近づいて、シャワーを浴びながらルートをチェックするも
やはり超ムズのよう。水流左もかなり立っているとの事。微妙なバランスで潅木の所まで戻り懸垂下降。ここの滝は右岸を高幕くしかない様だ。
良い巻きではないが、お互い自分の見つけたルートで高巻いた。チョット脆い感じなので、3級+αの巻きになるが大高巻きになることは無い。
滝上から落ち口を見ると水流右はホールド少ないので、直登するなら水流左か?それでもかなり厳しいかも。。。
序盤のゴーロ帯
8mトイ状(奥に2段15m)
2段15m滝
懸垂下降で戻る

2段15m滝上で再びゴーロ帯、沢は左にカーブ。左岸の岩壁はとても高く、進行方向を見ると大壁が左から右から沢に切れ込み相当悪そう。さらに
このどんよりした天気が気分を一層不安にさせる。。。
ゴーロ帯から3m滝、6m滝と直登すると奥に大滝出現!その前衛2段7m滝は左に取り付き水流をシャワーを浴びながら横断、右から2段目を直上する。
折り重なる岩壁群
大滝?!
6m滝は直登
前衛2段7m(奥は50m大滝)


ここで50m大滝が全貌を現す。両岸の壁は大きく、全貌は写真に納まりきらない。大滝を直登するなら水流右だが下部20mは立っており4級+
間違いなくありそう。。。岳沢の大滝がこれ1つなら頑張り所かもしれないが、もちろんムリせず右ルンゼから大滝下部を巻く。20m程登ったところから
滝へ向かってトラバースするが、傾斜の強い草付なのでザイルを出してmoto.pさんが行く。滝に取り付くとそこからは問題無さそう。5m直上して
水流を横断。ザイル残り5mでピッチを切る。私がフォロー後そのまま2ピッチ目を行くがここは容易。すぐ上に垂直に水を落とす
30m滝が見え不安は消えない。ハーケンが無いため、右岸土手上にある潅木でビレイ。
50m大滝(カーソルを当てるとルートが出ます) 
50m大滝上部(カーソルを当てるとルートが出ます)

垂直30m滝は水流左から落ち口に向かって斜上するルートが考えられるがビレイ地点がすでに20mくらい上がった所なので、より安全なルートで
高巻いた。30m滝上で右岸から左ノ沢が大ガレとなって出合う。
50m大滝2ピッチ目と奥の垂直30m滝 
垂直30m滝

本流は高くそびえる大壁を切り裂くように流れ落ちる40m滝。あまりの悪さに、moto.pさんが「本流は左だよ左!」と言い出す気持ちもよく判る。
しかし、幸運にもこの40m滝、左から落ち口に向かって殆ど水平にバンドが伸びている! 左ノ沢のガレを横断し容易にバンドに到着すると、
そのまま潅木を掴みながら落ち口に向かってトラバースする事が出来た。
ここで、一息入れると、なんとmoto.pさんのハーケンがギアラックにちゃんとくっついていたのを発見!ハーケンが3本から7本に増え安心度も倍増!!!
このすぐ上の2条12mは左の水流を多少濡れながら直登。その上の10m末広滝は右から直登。
40m滝(左から落ち口に向かってバンド有り)
40m滝すぐ上の2条12m
10m末広滝

さらに上の7m滝を直登すると沢が左に折れそこにハイライトである"ソーメン流し110m滝"が現れる! "極悪"の滝かと思ったがそれほど悪くない印象。
下からザイルを出すと3ピッチだが、下部は容易。水流右をフリーで40m程直登。右壁が迫り滝の傾斜もグッと強まるところでザイルを出し私が
リードする。ここからは水流左に向かってシャワーを浴びながらトラバース。スタンス/ホールドはあるのでそれ程難しくは無いが"シャワー浴びっぱなし+
岩が滑りやすい+脆い部分有"と不確定要素がプラスされ4級レベル。残置ハーケン有。
無事トラバースした所はテラスになっている為、落ち着いてビレイポイントを探せる。ここにも残置アリ。 ここから5m直登。水流に近い所の方がホールドが
豊富。上に上がると傾斜が一旦緩むので左壁を掴みながら、さらに6m程登った所にあるテラスでピッチを切る。
ソーメン流しの滝(カーソルを当てて)
1ピッチ目の水流横断部。ここから5m直登

 2ピッチ目はmoto.pさん。ここから滝は垂直に近いので水流左のルンゼに入る。浮石が在る様で。「落石行くよー!」との声が上から聞こえる。
人間一人は岩陰に隠れるスペースが在るが。二人以上だとチョイト危ない。落ちてきた石は20cm級含め10個程。
「ヒョェ〜〜・・・」
その後、ビレイ解除らしき声が聞こえるが滝の音が凄いので、音声以外の合図も決めておいた方が良いだろう。2ピッチ目フォロー。ルンゼ自体は
それ程難しくないが、ルンゼから這い出る所が垂直で嫌らしい。両足ツッパリから右の潅木を掴んでルンゼから脱出。草付を7,8m登ると潅木が有り
そこで終了となる。
1ピッチ終了点
2ピッチ目(ここに出るまでが一苦労)

ここで大滝は終了かと思ったがそうはいかない。ソーメン流しの滝上には25m滝が見える。下部が垂直で直登はムリそう。そのまま右岸を巻いた。
その後も6m、7m滝、12m滝と続き癒し系にはまだならない。12m滝を水流右をフリーで直登すると左から涸ガレ沢が入りそこに4段30m滝
下からは2段目しか見えない。最下段の突破が難しく見える。moto.pさんは右壁。私は左ガレ沢を登って落ち口に向かうバンドを利用しようと
取り付いたが、落ち口へのバンドが下から見た以上に悪かったため。クライムダウン。moto.pさんが取り付いた右壁はザイル出せば行けるとの事。
さらによーく滝を見ると水流右も行けそう。
「寒いから濡れるのヤダ!」
とmoto.pさんが言うので
「しょうがないなぁー」と右壁に取り付く。右壁を7m程直登。そこから落ち口に向かってトラバースするのだが、ここはランニングビレイを取るのにカムが便利。
ソーメン流しの滝上の25m滝
7m滝
4段30m滝
 
4段30m滝の残りの部分は容易で快適に直登。これで終了かなぁと思いきや6m、7m斜瀑と続き、15m滝!「ヒェ〜〜まだあるよー!」と嘆いたが、
幸いにもフリーで直登可能! 次の25m滝は寝ているので快適。これでようやく滝が終了した。ここからは癒し系と行きたい所だが水はこの先で
すぐ涸れ、急傾斜のゴーロ帯。天気がよければそれでも快適なのだろうが、ガスっぽくて今ひとつ。これを詰めて、中央のハイ松交じりの子尾根を
登っていくと大仙丈ヶ岳頂上にダイレクトに到着!時間は12時前。遡行距離&高度差は先々週の前聖ノ滝沢とほぼ同じだが、前聖ノ滝沢の4時間強に
比べ7時間弱と手強い沢だった。。。
25m滝
上部のガレ
到着!
                   
一般登山者でにぎわう仙丈ヶ岳を通り過ぎ、下降点である地蔵尾根2422m付近に突き上げる無名沢まで移動する。下降点は幅広尾根でちょっとした
休憩ポイントみたいな感じなので(添付写真参照) 間違わないだろう。少し下ると踏み跡発見!無名沢右岸を本流である三軒岩小屋沢出合いより
先まで続いている。この道はそのまま中尾根の方に上がっていく感じだったので、三軒岩小屋沢出合の先で三峰川に降りる。
滝は5m程度のが1,2個あるくらいで下降になんら問題は無い。ただ、ここへ来て天気予報通り雨にたたられる。
 
テン場に戻ったときは辺りはビチョ濡れ。釣りをする気にもなれず、「寒いよー」といってタープ下で膝をを抱え、そのままテントに入る。1時間たっても
雨はやまないのでテントを少しずらしてタープ下のミニ焚き火で宴会を始める。しばらくすると雨がやんだので本格的に開始! 
「集めた木を残しても仕方ない!」と木を乾かすつもりで全部焚き火に突っ込んだら2m近く火柱が上がった!!! 
地蔵尾根(ここから下降開始!) 
三峰川本流
焚き火
 

三日目
7:00岳沢出合発→(岳沢超)9:33営林所小屋→10:22丸山谷ゲート着
10:37同発→12:03高遠さくらの湯発→(諏訪南/八王子IC)15:20府中本町→17:25小金井→18:00自宅着

今日は帰るだけなので、のんびり出発。岳沢越の上り口は赤テープがあるのだが、ちょっと隠れているので見つけることは難しいだろう。目印は三峰川を
跨ぐ様に倒れた大木とそこの左岸にあるテン場所適地といった所か。踏み跡を拾って登ったつもりだったのだが、獣道に出てしまったのか、岳沢越の
鞍部では無く、丸山(2224m)と2113ピークの間に出てしまった。ここから強引に下っても帰れるのだが、かなり急傾斜なので、岳沢越鞍部まで移動。
ガレの南側にある踏み跡を利用して下る。途中トゲトゲ草に嫌気がさしてガレに出たが、滝も出てくるので踏み跡を利用した方が結局は早い。
岳沢越鞍部で30分くらいロスしたが3時間半でゲート到着。

温泉は高遠町のさくらの湯500円に入る。月曜なのでガラガラ!

P.S:岳沢に入るとテン場は無いので、夏場遡行の場合は、今回のような日程で計画するのが良いでしょう。
   万一、岳沢で大幅に時間がかかってしまった場合は仙丈小屋で泊まって次の日そこから下山しても6〜7時間で
   ゲートまで戻れます。尚、岳沢越は赤テープは皆無に近いです。GPSがあると便利でしょう。

遡行図(クリックして) 岳沢越ルート(このような感じで踏み後が付いています)



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