2005年10月9、10日 三国川 黒又沢五竜沢→御神楽沢下降
メンバー:現場監督さん、ひろた
装備:ザイル9mm×45、9mm×20m、靴:フェルト
参考ガイド:上信越の谷105ルート
3連休でオツルミズを計画していたが、天気の都合で五竜沢に変更。十字峡からから入り山口へ下山するルートが一般的だが、車1台でのアプローチのため御神楽沢を下降に利用。
このルートは以前moto.p氏が計画。今回、特許侵害の恐れがあるが(笑)、お先に監督さんと調査遡行する事にした。
前夜アプローチ
17:00自宅発→(自治医大ルート)19:16大間々→20:00赤城IC通過→20:24月夜野→(三国峠)21:30湯沢
現場監督さんとJR湯沢駅で待ち合わせ。8月の西沢本棚沢以来。コンビニは六日町を過ぎて、R291から十字峡へ入る県道233との交差点のセブンイレブン
が最後。十字峡で仮眠をとっても良いが、三国川ダム脇にあるトイレ付の駐車スペース& 公園ならば携帯もつながり便利だ。ここから十字峡までは車で10分 弱の距離だ。
初日:雨のち曇り
6:10十字峡発→7:55 五竜沢出合→13:35 F10 25m滝上→15:00 F13上 幕営。
紅葉シーズンなのか、10台程度の十字峡の駐車スペースはほぼ満杯。まぁここに止められなくても、下津川側に広い駐車スペースがあるので、車が停め
られないという事はまず無いだろう。今回はなんとか道路にはみ出ずに車を停めることが出来た。すぐ近くには利根川に入ると言っていたmoto.pさんの車 も発見。。。 黒又沢へは以前日向沢に行ったので、何の迷いも無く、巨大堰堤の右側の踏跡に入る。踏後は明瞭でバックウォーターの切れ目で適当に沢に下りて 遡行開始。前日の雨で水量は多目だが問題なく黒又沢を遡行。日向沢出合を過ぎ、しばらく進むと右岸から今回下降を予定している御神楽沢が入る。 ここから見る御神楽沢は凄い絶壁から水を落としており、本当に下降できるのか、かなり不安だ。
このあたりから黒又沢本流はゴルジュっぽくなっていく。多くの記録にある鉄橋が現れ、そのほぼ真下の左岸側から30m滝がものすごい勢いで水を落とし
ている。もう少し増水していたら、全身ズブ濡れにならないと突破できないところだった。これを過ぎると深い釜をもった5m滝、ここは右壁を3級の登りで 左岸を小さく巻く。暑い時には泳いで取り付くことも考えられるが、この滝の上も厄介な感じなので、巻いた方が早いと思う。
結局、十字峡から1時間45分で五竜沢出合到着。五竜沢は出合から狭いゴルジュになっている。小滝をいくつか越えると沢が左90°曲がったところに
F1 7m滝。 左を登るが、スタンスが草に隠れていて登りづらい。草を掴んで上がるところもあって、チョイトいやらしい感じ。すぐ次の3mCS滝もこの水量 ではシャワー突破は不可能で左から小さく巻く。 沢は右や左にクネクネ曲がりF2 6mが行く手を阻む。直登はムリで右ルンゼから高巻こうとしたが、どんどん上に追い上げられる感じなので引き返す。
ここで自分は少し引き返したところから、草を掴んで滝の右壁に取り付く。一方、監督さんは「左から巻いて見ると」といって右岸の高巻きを開始。 滝の右壁は1mチョットだが垂直。安心して使えるホールドが無かったが、何とか突破して草付に上がれた。ここまで登れば沢への下降も問題ない。一方、 監督さんの方を見ると、右岸の高巻きも結構な高さに追い上げられ大変そう。しかも右岸からはザイル無しでは沢には降りられず。監督さんが持っている 20mザイルでは下まで届かない。そこで、20mザイルを投げてもらい、私の持っている45mザイルを結んで再度引き上げてもらい、それで懸垂下降してもらう つもりで、TRYしてもらったが、20mザイルがどうしても途中の草に引っ掛かってしまい下まで届かず。監督さんにはそのまま沢に沿って右岸をF3 6m滝上 まで巻いてもらった。
さて、このF3 6mだが、これもかなり難しそう。右から小さく巻くつもりで取り付いたが、スタンスが今ひとつで、細い潅木に身をあずけるポイントが多く、精神
衛生上良くない。さらに落ち口へのトラバースが難しく。先に上がってもらった監督さんにザイルコールを要求するが、私がハマッている近くに寄れないらしく、 フリー突破を余儀なくされる。結局「気合一発」で突破。冷や冷やモノ。。。 このF2、F3でかなり時間を浪費してしまった感じだ。F2はおとなしく右岸を巻いて、F3も右岸高巻きの方が早いだろう。
この先10mナメ滝を快適に越えるとF4、F5に気付かず。F6 20m滝のある二俣に出る。右が本流のF6。左も30m3段滝で見事。結構な絶景である。
。。。で、「これ、どーやって超えるの?」
とガイドをとりだすと、"滝と滝の間を直登するが、断念して懸垂下降。左岸を高巻く"と書いてある。監督さんの読んだ記録ではこの断念した真ん中直登で突破した
らしい。。。見た感じそんな難しくは無さそうだが今ひとつ弱気な私は、
「監督さん、ここはひとつどーですか!」と投げかける
「よし!じゃぁ行って見ますか!」
と快諾!ザイルを結んで左の30m3段滝右から取り付く。。。が、「相当ツルツルなんだけど…!」とのコール。これほど一歩一歩慎重に上がる監督さんは あまり見た事が無い。下から見た印象とは違いかなり難しい様だ。8m程登った所でハーケンを打ち、さらにフリクション頼りに5m登ったところでカムでビレイ。 そこから2m程登って、左右の滝を分けるリッジにトラバースしようとしたとき、足を掛けた瞬間15cm級の岩が外れる。
「おぉー!セーフ!」
岩だけが落ちていった。。。
現場監督さんが、違うスタンスを探している時。
「!」
監督さんが滑り落ちる、すかさずザイルロック。
「!!!」
カムで取った支点があっけなく外れた…
「!!!!!!」
ハーケンも抜けた!!!?
そのまま、あまり深く無い釜にダイブ…
「・・・」
セルフビレイを外して救出に行こうとしたとき、
「大丈夫!大丈夫!」
とすぐに立ち上がってそのまま歩いて上がってくるではないか!
「ちょっと全体的に右側をうったけど、折れてないし、血も出ていないし…」
ホッとする以上に「うっそー!」と言う方が強い。そのくらい位高いところからグランドフォールしてるんですけど…
15mだよ15m!
監督さんが言うには、カムの方は利きが甘い事を認識していたようだが、ハーケンはかなり利いている手ごたえがあったとの事。それなのに停まらなかった
ので、ザイルが切れたと思ったらしい。自分が見る限り、カムもハーケンも監督さんの落下スピードを一瞬緩める程度にしか見えなかったという事を伝える。 とにかく怪我が無く良かった。
それにしてもなんという強運! いや強力な守護霊様が付いておられるのだろう。。。
"さて、こうなってしまっては左岸高巻きかな" と思ったが、"監督さんを落とすとは許せん!" と
「じゃぁ俺行って見ます!」
とトップ交代して私が同じルートで取り付く。しかし、本当に滑りやすい。いきなり取り付きで1m滑って落ちてしまった。今度は慎重に一歩一歩上がり、監督
さんがハーケンを打った同じ所で同じくハーケンを打つ。ここから、監督さんがスリップした方を見ると、確かに岩は脆そうな印象。さらにスリップ地点から滝を分けるリッジ
へのトラバースもかなり難しそうに感じたので、"二人取り付いて二人とも落ちたんじゃ洒落にならんあぁー"と思い、ここからリッジに直上することにした。あまり良い
スタンスは無いがある程度ハンドホールドがしっかりしているようだったので、気合で1段登る。そこで改めてハーケンを打ち込み、ザイルを掛ける。そこから 草付リッジを直上。最後F6の落ち口へトラバースする所の岩が滑りやすそうなので、微妙な凹凸にフリクションを利かせ滝上に出た。 ここからではコールは 全く退かないので合図を決めておいた方が良いだろう。監督さんも登ってきて、ようやくF6が終了した。
すぐ上の5mナメ滝を左から超えると、F7 15mハング滝が現れるが直登は不可能で少し戻った所から右岸を巻く、足は滑りやすく灌木を掴んでの腕力勝負
だ。沢への下降は残置シュリンゲを掴み、窪からザイル無しで降りる事が出来る。F8 15mは直登する場合は3筋ある一番左か中央だが、ホールドが細かく ハマリそうなのでガイドの通り左岸草付を上がり、そのままF9も巻いてしまう。この先は沢S字上に入り組んだ流れになりゴルジュの幅も狭くなるが、大高巻き せずそのまま沢沿いを通過できる。1箇所4m滝が直登出来ず右岸を小さく巻くが、沢への下降がいやらしく、灌木も無い為懸垂も出来ない。自分は仕方なく 空身で1.5m程を飛び降りる。成功! 二人分のザックを受け取り、監督さんは、窪の細かいスタンスに慎重に足を置き、沢に下りた。
2,3小滝を超えるとF10 25m2段滝。下からは下段しか見えない。直登はムリで左岸草付を登る。ザイル無しで沢に降りれる。5mナメ滝を超えると、(2:1)の
二俣。確かに左から流れる枝沢の方が水量が多いが完全に藪沢だ。すぐ先のF11 10m3段滝は胸くらいまで水に浸かる覚悟があれば直登出来そうだが 断念して右から巻く。F12 10mは、右壁を微妙なバランスで経つりながら登り、突破していくのだが、フリーで登るには少々精神衛生上良くないので監督さん にはザイルを出す。F13 20m3段滝は印象に無く右から巻いたのかも。。。
これを過ぎると広いゴーロ帯となり多少の整地は必要とするが、幕営絶好ポイントとなる。水量はかなり減っているが、炊事には問題なく、薪は至る所に大量
に落ちていた。時間は15時、午前中降っていた雨も止み、焚き火も難なく着火。テント+耐用温度0℃の寝袋を持ってきたため暖かく寝れた。
二日目:曇り
6:45出発→8:30稜線→9:15"五龍王大神"池(下降ポイント) 、9:25下降開始→13:00黒又沢出合→13:40十字峡着
夜中雨も降られず、朝起きたら、水量が大分減っていた。本来ならこれくらいなのだろう。出発して20分程度で25m4段涸滝に到着。涸滝とガイドにあるが、
水が流れている。ゴーロが詰まったようなで特に問題無いと感じられたが、3段目の直登が難しく。右の草付壁を腕力勝負で登る1ポイントが核心となった。 この先の4m滝は少し濡れる事を覚悟すれば全く問題ない。この先はもう源頭部の様相になりだんだん藪沢っぽくなってくるが、チョット掻き分けながら進む 程度で、意外とあっさり五竜岳から10分程度南に下った稜線に出た。
曇り空で展望が殆ど無い為、五竜岳の山頂は登らずに、御神楽沢の下降ポイントに向かう。目印は神生池を過ぎて、進行方向左側に池が現れるところだ。
神生池はいかにも"ゲゲゲの鬼太郎"で出てきそうな池で神が生きているのか妖怪が生きているのか判らない。ここから地図どおり、ここから少し進むと、 目的の池が現れた。そこには『五龍王大神』と彫られた岩が立っているので確認してほしい。思ったよりも早く到着して、時間は9時半前。予定通り御神楽沢 へ下降を開始する。取り付き点は登山道から池を見て、池の右側。藪はそれ程濃くなく100m強進むと早くも沢形が現れるのでそこに入る。水は全く無く、 藪は無く、滝もない。。。下降するには申し分無い。1時間以上この状態で延々降りて行く。 やっと現れた最初の7m滝は左岸を小さく巻いて降りる。ここから滝がポツポツ出始め、懸垂下降を始める。適当な灌木はあるが、横向きに生えている木が
多いので、2,3のシュリンゲは残置することになる。ここから滝はだんだん大きくなり、ガイドにある15m滝は、45mザイルでギリギリ下まで届いた。
次の"20m滝"は実際には25m以上あり、2段になっていて、しかも段の部分が1枚岩の大ナメ。ザイル投げてみると案の定下まで届くはずも無く。しかも段の 少し上の所までしか届いていない。 「うーん、左の草付岩寄りに降ってみますかね!」 という事で、私が降りていくが、一旦降り始めるとその草付岩側に上手く移れ なくて、 「まっいいか!」 とそのまままっすぐ下降。少しずつ傾斜が緩くなる滑り台のような位置くらいでロープ末端がエイトカンを潜り抜ける。そのままロープを 左手一本で掴み、フリクションを利かせてゆっくり滑り降り傾斜が寝てきた所で上手く止まった。。。まぁよほどの事がなければ下まで落ちる事は無いだろう。 監督さんにはロープ回収もあるので、ロープ末端がエイトカンを潜り抜けた後、片方のロープだけを掴んだまま滑り降りてもらう。ここから下段はラッキーな
事に特に難しくないのでフリーで降りれた。次の滝は、ザイルは届きそうだったが、灌木が無い為、左岸の尾根に出て尾根を少し進んで、適当なところから 草付を下りていく。あとは最後の10m滝を残すのみ。この滝は進行方向右端ルンゼを利用して、ザイル無しで下れた。
下降開始から、黒又沢出合まで3時間半。これで、"山口"からバス/タクシーを利用しないで十字峡まで戻れることに満足!!!すたすた十字峡を目指す。十字峡にはmoto.pさんの車がまだ駐車してあり、メモを残して置いたが、丁度この頃稜線で藪と激闘していたらしい。そんな事とは知らず我々は、山の湯に移動。
P.S:"五竜沢にはビバーク地は無い"と紹介され、敬遠がちだった五竜沢であるが、丁度良い場所に絶好のビバーク地があるので、1泊二日の沢としてお勧めだ。
さらに御神楽沢を下降すれば、車1台でのアプローチも可能。御神楽沢を下降する場合はザイルは40m以上必要。雪渓があると状況は異なるので要注意。 |