2001年7月13,14 南ア 甲斐駒ケ岳 尾白川 (敗退)

メンバー:単独
装備:ザイル8mm×20m(懸垂下降、荷揚げに使用)
参考ガイド:沢登り読本

アプローチ16:30自宅発、上三川IC〜佐野藤岡、
      19:35高崎IC〜佐久IC R141、22:35駒ヶ岳神社

14日AM5:00発、尾白川渓谷道(尾根道)→6:35不動滝手前吊橋→8:15尾白川入渓(8:30溯上)→
   9:40 10m滝突破できず。10:30撤退を決め林道に向かう、13:30林道着→13:45不動滝降り口→
   14:15不動滝吊橋→15:55駐車場

13日、前夜の移動は、そんなに苦痛ではなかったが、長坂周辺で道に迷い時間を食ってしまった。
最初、尾白川林道の終点まで車を走らせたが、なんと日向山の手前の登山口のちょっと先で、
がけ崩れのためゲートが閉まっていた。
地図を見るとここから先、林道終点までは距離が3km以上ある。ここに車を止められるスペースはせいぜい
4,5台。今回は、諦めて、駒ヶ岳神社から上がる事を決め移動する。駒ヶ岳神社の駐車場は無料で
100台くらい止められる。トイレあり自販機あり、キャンプ場はここから200m程歩いた先にある。

AM5:00出発。300mほど歩くと駒ヶ岳神社があり、そこの左側に登山道が伸びる。
尾白川渓谷道は川沿いのルートと尾根ルートがあるが川沿いルートは一部崩壊して通行止め。仕方なく尾根
ルートを行く、これも10分ほど歩くと駒ヶ岳登山道と別れる。

 尾根ルートは1箇所道が二俣に分かれ(帰りに解ったのだが)、道を間違えてしまった。
尾根ルートよりもさらに上部のヤブをこぎながら進んだ。あまりにも疲れるので、
仕方なく川沿いルートに出ようとくだったら、尾根ルートにぶつかる。尾根ルートは駒ヶ岳登山道と別れた後は
そんなに登りは無いと思っておいた方がいい。
 やっと、渓谷道で不動滝に到着。結局コースタイムどうり。ここから橋を渡って進むと尾白川林道まで出るようだ。

 問題はココからだった。。。

ガイドによると橋の手前をかわの右岸に沿って道を進むとあるがこの道は30mくらい進むと無くなってしまう。
ガイドは右岸を高巻き、不動滝の上に出てここから入渓するとあるが、まったく川に下りれそうに無い。
結局、右岸の崖を上がっては下り、上がっては下り。。。をし、大高巻きになる。水も500ccしか持っておらず、
咽も乾き、結局、20mザイルの懸垂下降を3回繰り返し、尾白川に降りた。もう8時過ぎだ!

 ここで靴を履き替え進むが、いきなり泳ぎになる。ザックの中のテントとカッパが水を吸い、荷が一気に重くなる。
泳いでなんとか突破すると、いきなり大岩がかぶさる10m滝になる。水線からの突破は不可能。大岩の間に
隙間があり3mほど登れば突破できそうだったが、その最初の3mが登れない。仕方なく高巻きをする。
10m、15mと左岸の崖を登るがそこからトラバース出来ない。
ガイドでは左岸を高巻くと書いてあったが、いったいどれだけ登って高巻きしたのだろうか?

インターネットでの記録には『尾白川のこの領域を突破できずに林道まで上がった』と書かれてあったのを思い出す。
結局高巻きもダメで、懸垂下降で降りるが、懸垂下降途中でロープが腰からぶら下げていたハンマーに絡まり、
宙ぶらりんになりかける。体制を立て直すのにまた体力を使ってしまった。

 沢床に降りつき、再度登れるルートを探すが、やはりダメ。 これは一旦不動滝まで戻って吊橋をわたり林道に
登り林道を詰めるしかないと思ったが、何しろ懸垂下降で垂直の壁を降りたので登れるはずも無い。
仕方なく沢を下ろうとするが10mトイ状の滝があり、下る事も出来ない。。。

 青空が広がる中、川底に閉じ込められてしまった?!!!
登れなかった滝

右岸は断崖になっており完全にダメ、こうなると左岸を登るしかない。閉じ込められた長さ200mの川の左岸に登れ
そうな沢筋は2本。まず下流川の沢筋を登ってみる。
30mほどチムニー状の沢筋を登るが、適度なホールドがなく断念。岩をはさんだ隣のチムニーを登り返すが
ホールドが無くこれまた断念。また川底まで戻る。

 かなりバテたので、食事を軽くとる。以外とまだ冷静。。。

川を泳いでのぼり、靴を渓流シューズから登山靴に履き替え、上流側の沢筋を登る。時間は11時を廻っていた。
30m程登ると、チョックストーン状になってたがなんとかこれは突破。さらに進むとまた大岩が行く手を阻むかの
ように覆い被さっている。直登は無理なので、右側の草付きの崖を登ろうとするが、最初の2,3歩がもろくて
足を置ける場所も少ない。

。。。と、その時足場が崩れ、1m程だが落ちてしまった。体がさかさまの状態。
体制を立て直して痛い右腕を見ると血が流れていた。
 わずかに流れる水で腕を洗うとすぐに血は止まる。ラッキーだった。
しかし、この落ちた所を登るしかないので、ザックを降ろしロープを巻きつけ空身で登った後荷物を引き上げる
戦法にでる。

登れた!!!

ザックを引き上げここを突破する。
 
斜面の傾斜は相変わらず急で両手で木々をつかみ木の根元に足を置く感じ。
下を見ると、登れなかった滝の上になんと釣り人が1人見えた!おーい!と叫んでみるが声は届かない。

あの滝の上に最初から降りていれば、こんなに苦労しなくてよかったのに。。。

とにかく幅の狭い尾根を登れそうなところを見つけては、木をつかみ這い上がる。岩壁が出てきては左右にまわり、
かろうじて突破、しかし、また難しいところに出くわす。左腕はつりそう。足も立っているだけで筋力を
使う急斜面なので足もつりそう。一旦5mほど下がり大きな木のにザックを建てかけ、木を跨ぐ様に座り込んで休む。

体力はもう限界近い。幸い水は1L以上ある。甘い物、それと既に汗だくで塩分切れの症状が出ているので
お吸い物の素をそのまま口に流し込む。とにかくここは体を休めるしかない。

これを超えられるだろうかという不安を抱きながら、荷物を捨てる事も考えた。
またこの場所に、幅70cmくらい長さ2mくらいの平らな場所があったので、腕がつって途中で登れなくなったら
アウトなのでここでビバークするか・・・等、いろいろ考えた。。。。

30分程休んだだろうか。荷物を背負って再び登る。さっき登れなかった難所にたどり着く。
少しでも登り安いポジションまで身をもっていく。木にシュリンゲを絡ませるがこの方向には登れない。
"登れないよ!"と独り言まで飛び出した。が、木に腕をからませ、なんとか気合で突破!!!
この1歩、"生"への前進って感じだった。。。

 ここを突破するとようやく斜度が45度くらいになってきた。もう崖は現れないでくれ!と思い進んでいくと
錆びたワイヤーロープが落ちていた!"これは林道が近い証拠か!"
期待が膨らみ進むとさらに今度はドラム缶の切れ端が!!!安堵感が徐々に大きくなっていったそのとき、
目の前に林道が現れた。時間は13:30。なんと2時間の格闘だった。

林道には途中、水も得られる。15分ほど歩くと不動滝への登山道の看板が立ってあった。
ここからボロボロの体を引きずり、駐車場までの2時間半の道を歩いて戻った。

”ゴルジュ13”さんの2002年尾白川下降の報告によると、不動滝上流300mのゴルジュは
一度降りたら最後、滝も登れず、高巻きもNGで、50mザイル2本無いと不動滝の
懸垂も不可能との事。”沢登り読本”の通りに下降をしない事!

尾白川入渓は、林道のゲートから林道終点まで1時間程歩き、そこから入渓した方がい
い。
p.s:01年の11月7日、信じられない事が起きた!この記録に出てきた"滝の上にいた釣り人"からメールが届いたのだ!!!
  Yahooで"甲斐駒ケ岳"、"黒戸尾根"でこのhpが見つかったらしく、このページを読んで「自分に違いない」とメール送ってくれたのだ。
   さらにこの方は、私が登った1週間後、私が降りてしまった深いゴルジュに左岸の崖から懸垂下降で降りてしまい、やはり相当苦労して自分
  と同じルートでなんとか生還したのだ!当時、2ヶ月でたったの700アクセスしかない弱小HPでまさかこんな再会があるとは予想さえ出来ない。
  こんな事があるんだ。。。


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