2003年8月10,11日 楢俣川前深沢〜狩小屋沢下降

メンバー:植木さん、ひろた
装備:ザイル8mm×30m(使用せず)
ガイド:岳人03/9号(遡行図)
地形図:奥利根湖、藤原、至仏山、尾瀬ヶ原

当初、平ヶ岳に詰めあがる、大白沢ワカゴイ沢に行く計画であったが、突然の台風直撃.。また、台風通過後の天候も安定しない予想だったため、前日に狩小屋沢に決定。
しかし、当日朝、もう一つ奥の”前深沢”が岳人に紹介されており、面白そうということで当日になって行く沢が決定するという状態で出発することになった

初日
AM 7:35自宅発(日光宇都宮有料)→8:35今市→11:28奈良俣ダム林道ゲート着
11:50出発→13:40ヘイヅル沢出合→14:15林道から沢筋に入る14:50楢俣川種沢出合→15:40深沢出合→15:45前深沢出合
→16:15幕営ポイント着

前深沢は狩小屋沢の一本奥の沢で、取り付きまで、3時間弱の林道歩きを強いられるのがネックとなっている。

奈良俣ダムを過ぎると、左に『オートキャンプ』と書いて湖岸に降りる分岐があるが、これに入らず林道を進む事1kmくらいで早くもゲートがある。
(1/25000で”T路路”交差点になっている所)
駐車場/街灯/トイレ/水場は無く、車は道路の端に止めることになる。道幅は割とあるので、特に心配しなくていい。

 楢俣林道はきれいな林道で、ゲートさえ開いていれば、FF車でも何の問題も無く走れる。台風一過の青空の下、汗をかきかき歩いていく。
途中沢を横断するが、林道沿いで水を汲めるところは全く出てこない。水をあらかじめ用意してきたのは正解だった。
かれこれ2時間弱歩き、楢俣川を右下に見る所まで水場は無い。

さて、林道歩きも終盤を向かえ、楢俣川への下降するわけだが、ガイドには『林道からしっかりした踏跡を降りる』とあるが、目印は無く、
それらしい踏跡も2,3あり迷いやすい。

沢靴に履き替え、林道から踏み跡を入っていくとまず細いロープを渡している狩小屋沢を横断する。踏み跡はさらに伸びており、しばらく進むと
楢俣川に出る。ここには大きな岩に鉄の棒が埋め込まれた目印がある。ここで楢俣川を対岸に渡り10m程上流に進んだところでまた踏み跡がある。
10m程つづらおりで登ると楢俣川と平行に伸びてため、これを矢種沢にぶつかるまで進む。ここから矢種沢を下ること1分で楢俣川に出る。
ここから楢俣川を遡上する。
ヘイヅル沢を超えて
ここを左に入る
狩小屋沢を横断
楢俣川に出て→の踏跡から矢種沢へ

楢俣川は昨日台風が通ったばかりなので、結構な増水で、緩やかなナメ滝も”ナメんじゃねー”と言わんばかりに勢いよく水が流れている。
注意しながら進むと5m滝が現れるが余りの水流で虹が見えてる程だ。この先にも滝が一つあり、通常の水量なら何の問題も無く登れるのだろうが
結構気合と度胸を必要とした。楢俣川と格闘すること50分で深沢の出合に着く。
増水している楢俣川本流
楢俣川本流から深沢へ

深沢に入って1分ですぐ中深沢と前深沢の出合で、中深沢から15m滝が豪快に落ちているので
間違うことは無いだろう。一方、前深沢はちょいと暗く「えぇーこっちなのー」という印象だが、入ってみると白いナメ滝が点在し気持ちがいい。

さて、明日の事を考えると、もっと先に進んでおいた方が楽なのだが、釣りもしたいし・・・焚き火もしたいし・・・ でテン場を探す。。。がなかなか良いところは
見つからず。2段8m滝を越えたところでGOOD POINTを見つけ今日の行動を終了する。薪は大量だったが、植木さん共々岩魚は釣れずちょいと残念。
夜は防虫ネットを顔にかけて寝たが10箇所以上蚊に刺され、余り眠れなかった。(下唇刺されちゃってトランペット吹けるのかなー。。。。)
中深沢と前深沢の出合
白いナメ滝が点在
2段8m滝
テン場到着


2日目(曇り)
7:03出発→7:18 20m滝→8:45 4段19m滝→9:10 50m大滝→10:45二俣→11:35稜線着→11:46至仏山山頂→13:00狩小屋沢下降開始
→14:03 20m核心滝下→15:40二俣→17:16林道着19:49ゲート着
20:05ゲート発(金精峠ルート)→23:30自宅着

「朝早出しよう!」という事だったが、朝も焚き火で、結局7時出発。。。しばらくゴーロ帯を歩くといきなり20m滝が現れる。ガイドには
”登れそうだが左岸を巻く”と書いてあったが、植木さんが「これは行けるでしょう!」という事で直登する事にした。直登するには瀑心を横断するので
完全防水体制で取り付く。取り付いてみると特に問題無く登れ、実に楽しい。(残置1箇所アリ)
 大きい岩魚が走る様をちょくちょく見ながら進むと「どーん!」15m滝が現れ、これは水流左を直登。この滝上はきれいなナメとなっている。
ここから先は快適なナメ、ナメ滝が続き。ここでも岩魚をちょくちょく見かけた。一回植木さんが岩魚を追いかけ、2回ほど触ったそうだがキャッチできず。。。
平凡な様相を進む
20m滝(カーソルあてて)
15m滝(カーソルあてて)
ナメが続きます

癒し系の様相が続き、さらに進むと、ゴルジュっぽくなる4段19m滝が現れる。(誰が19mって測ったんだ?)この滝は自分は左壁から、植木さんは水流沿いを
取り付いたが、左壁からだとリッジを回り込む箇所がいやらしく、植木さんに「ホールド何処?」と不安げに聞く始末。。。なんとか突破できた。
水流沿いはホールドが乏しそうだったので左壁に取り付いたのだが花崗岩でフリクションが利くので特に問題無かったそうだ。。。
癒し系の様相です
6m滝
4段19m滝
4段19m滝基部から

この先もナメ、ナメ滝が続き、気持ちがよく、実に良い。さらに進むと。

「どどーん!」

50m滝が空から落ちていた。まさに「おぉぉぉぉ!」っという感じ。

さて、この滝だが、私は水流右から取り付くルートを見出す。。。と、植木さんは水流左にルートを見出したらしく、早速取り付く。下から見ると確かに
水流左も登れそうなのを確認、では私は右から。。。という感じで、おそらくここが核心だろうという滝を、あのリポビタンDのコマーシャルのように登っていく。
植木さんの方は快適だったらしく、しきりに「そっちは大丈夫ですか?」と聞いてくる。私は「大丈夫OK」といって登っていったのだが、次第に「まぁなんとか。。。」
トーンが下がってきた。
私の方も、40m程あがったところまで、しっかりしたホールドがあったのだが、ここから先がスタンスが小さくなり、急にシビアさが増してくる。
ジリジリ慎重に上がっていき落ち口高さまで上がると、この滝が2段になっており、外傾テラスに上がらなければいけないのだが、この70cm程の段差に
上がるためのホールドがなく、”セミ”になる。意を決して”ファイトイッパーツ!”でなんとか突破、外傾テラスに上がれた。
と思ったら今度は植木さんが水流左で進退窮まってしまって、

「弘田さんお助け紐だせる?」

と助けを求めている。確かに私はテラスにいるのだが、傾斜しており、ガバホールドもなく、ハーケンは植木さんのザックの中。。。
「ムリムリ。上あがってザイル出しますよ」といって登っていった。ハーケンが無いので、
木の枝で支点をとり、ザイルを広げたとき、植木さんが登ってきた!

「いやぁーほんのちょっとのスタンスに足を乗っけて突破したよーこぇぇ〜!」

ということで、無事二人とも50m滝を終了。通常は、40m以上のザイルを伸ばし、上段のテラスで1ピッチ切るというのが定石といったところか、
水流右ルートが残地が1箇所あった。もちハンマー、ハーケンは必要だ。
ナメが続きます
ハイライトの50m滝(カーソルあてて)
50m滝基部から(クリックして)

この先は沢も明るく開け、至仏山の稜線も見えてくる。ガイドではこのあたりに幕営したと書いてある。10mクラスの滝はいくつか超えていくと、
赤い岩の岩盤が両岸に現れその中に小滝群が続く荒々しい様相。1880mの二俣はたしかに右俣に10mクラスの大きな岩が引っかかっており
ここが二俣だというのは容易にわかるだろう。ただ水量は左俣のほうが多く、当然左俣を進む。水は急になくなるので、水を汲んでガレをどんどん
詰める。ヤブ漕ぎは無く稜線に出た。雲が出ており残念ながら展望は殆ど無い。
50m滝上の様相
この辺りが幕営適地か。
荒々しい様相に変化

ここから10分ほどで至仏山に出るのだが、植木さんが1トン近いだろう大岩を踏み越えた瞬間、その岩が転がり落ちるというハプニングがあり、
私の1.5m前を転がって行った。。。私は一歩しか後ろに下がる事が出来ず。真後ろについて歩いていたら死んでいるところだった。。。(マジッスカ・・・)
何事も無かったので笑って終了♪ 天気が悪いにも関わらず至仏山の山頂には多くの登山者がいる、さすが百名山!実は私は初登頂。

さて、休憩して下山を開始するのだが、1/25000を見ると、山頂付近から下ると再び前深沢に下ってしまい、遡行中見た10mの大岩が挟まった右俣に
出てしまう。逆に小至仏山をつなげる鞍部まで下ってしまうとヘイヅル沢に下ってしまう。視界が開けていれば問題無いのだろうが、100m位しか先が
見えないため、尾根の伸び方がつかめない。何処から降りればよいのか。。。ガイドには『明瞭な踏み跡が伸びている』と書いてあるが、
何本も踏み跡があり、良く判らない。登山道をウロウロする事40分。一瞬視界が開け、鞍部と尾根の伸び方見えた。早速地図と照らし合わせ、
およその下降位置を見出し、適当な踏み跡を見つけ下る。しかし、踏み跡はすぐ無くなりハイ松帯に突入。なかなか進めず、結構時間を食ってしまう。
初めての至仏山
狩小屋沢への下降ポイントへ移動(カーソルあてて)

ようやく沢筋に入り。ゴーロ帯を下っていくと20m滝が現れた。狩小屋沢の核心滝で3級レベルらしい。上部5mはシャワーを浴びながらホールドを
拾い下れるのだが、その下の10mのトイ状が水流龍両側の岩がのっぺりとしており下る事が出来ない。懸垂下降かと思うと、植木さんが水流沿いを
下る事にTRY。水流中にホールドがあるらしく、OKサインを出している。私も植木さんに言われるがままに下るとなんとか下降できた。

 この先は長いゴーロ帯をくだる。5m〜10m位の滝が現れてくるが、巻かずに下れる。(初心者は難しいかも)ナメ滝も前深沢と同じ花崗岩が多く
フリクションが利くため快適に下れる。12m3段滝は残置ハーケンを3つ見つけ、内きれいな1個をお持ちかえりする。このあたりではテン場は
全く見当たらない。 二俣を過ぎ、どんどん下降するとヒラタケを植木さんが発見(さすが植木さん!)。
狩小屋沢20m滝
10m3状滝
トイ状小滝の下降
7m2段滝

 滝も終わり(ザイルは使わなかった)ゴーロ帯になるとテン場も点在する。岩魚も泳いでいる。しかし、ここからが林道まで結構長い。ようやく林道に出たときは
5時過ぎ。。。下降3時間半とのことだったが4時間15分かかった。楢俣川の水量は1日でかなり減っている。(昨日と全然違うジャン)
日は完全に落ちても、月明かりで、ヘッドライトは点けずに歩く事が可能。時期はずれの蛍、そして蛍の幼虫をみつけ、わずかながら疲れを癒してくれた。

P.S:前深沢は、ナメの多さ、大小の滝があり、楽しい沢だった。車1台の場合はこのルートがお勧め、車2台であれば、
   1台を鳩待峠において前深沢だけでも十分楽しめると思う。大滝を含めほとんど直登可能。狩小屋沢はノーザイルで降りれますが
   前深沢遡行も含めザイルは40m以上あった方が良いでしょう。尚、2011年の地震によりゲート位置がこの記録に書かれたゲート位置より
   1.5km程手前のオートキャンプ場入り口までになります。

遡行図(クリックして)


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