2003年9月27日 谷川 鷹ノ巣沢 C沢

メンバー:単独
装備:ザイル9mm×20m(25mCS滝直登は45m必要)、フェルトソール
参考ガイド:白水社「日本登山体系 谷川岳」
地形図:水上
遡行図はこちら


昨年、「日本登山体系」をパラパラめくっていたら、鷹ノ巣沢C沢は300mの大ナメはすばらしいと書かれており、この目で見てみたいと思っていた。
沢登りガイド本にはこの沢が取り上げられている物は皆無でインターネットでもなかなか記録が見つからない。アタリなのかハズレなのか。。。調査遡行を開始する。

前夜移動
18:14自宅発→(一般道、R353)21:09関越自動車道赤城IC→9:50谷川温泉登山口駐車場着

水上ICを過ぎてからコンビニは1箇所しかない。みんなここで買い物をするためか、パン、おにぎりは品数が少ない時が多いので注意。
R291から谷川温泉に入っていくと携帯が繋がりにくくなる。谷川温泉登山口駐車場は谷川温泉街の突き当たりの水上山荘の入り口を入り、
すぐ右の細い道をはいると川沿いに無料駐車場がある.20台弱は停められる。
 
当日
5:09出発→6:08二俣、6:35入渓→6:55鷹ノ巣沢出合→7:40B,C沢二俣→9:35 30mCS大滝下→10:45同大滝上
→12:53爼ー稜線着→13:41オジカ沢ノ頭→14:21中ゴー尾根分岐→15:51二俣→16:53谷川温泉登山口駐車場着
17:11同発→17:48水上IC→18:00沼田IC→(赤城北面)19:00大間々駅前→(一般道)20:53自宅着

今日の日の出は5時半くらいらしい。5時過ぎの出発で、ぎりぎりヘッドライトは要らないくらいだ。突き当たりの民家の右から始まる登山道を入ってすぐ、
傾いた橋を渡ろうとした瞬間足が滑った。いきなり転落で敗退するところだった。。。
二俣までは水は数箇所取れるので心配無し。一度通った事があったせいか、1時間で二俣に到着。
 
 さて、谷川、鷹ノ巣沢に入ろうとしてオジカ沢に誤って入ってしまう記録が多く見受けられるが、実は入渓して判ったのだが2万5千分の1の
地図に多少誤りがあり、谷川本流とオジカ沢の二俣は"いわお新道/中ゴー尾根"分岐のすぐ真下に在る。なので、この分岐より手前(谷川温泉側)
で入渓しないといけない。
 
 谷川に入って鷹ノ巣沢出合いまでは、大きな岩がごろごろあるものの、目だった滝はない。前方に関越トンネルの排気口が見えてくるころから、
右側に注意すると、左岸から水流が流れてくる小さな沢筋(5:1)がある。これが鷹ノ巣沢出合ガイドには"伏流"と書いてあったが、ちゃんと水が
流れている。"出合"という感じではないので注意。
 鷹ノ巣沢に入ってしばらくは谷川とほぼ平行に進んでいく。滝もなくゴーロ歩き。A沢出合手前の水流左側にテン場あり。沢筋が多少開けたところで
A沢が右から入る。岩に赤ペンキで「A」と書かれてあるので間違うことは無いだろう。この二俣を左に入ると一旦伏流となるが、1,2分でまた水が
現れる。このあたりもゴーロ帯だが沢筋は明るく開け爼ー稜線と岩壁がそびえ、快適そのものだ。
鷹ノ巣沢出合
A沢が右から入る

鷹ノ巣沢出合から45分、A沢出合から20分くらいでB、C沢の出合。C沢はいきなり20mのナメ滝で始まる。一方B沢出合は貧相。20mナメ滝は
水流右を直登。岩が濡れている所は滑りやすいので注意。
この滝を登るとすぐに現れる釜を持った5mナメ滝を水流左を直登するとナメ床が続いたまま15mナメ滝を前衛に数百メートルに及ぶ大スラブ滝
現れる。その光景は西ゼンの第2スラブを思い起こさせ、C沢のハイライトといっても良いだろう。なぜこんな美しい光景を持った沢が多くの
ガイド本で取り上げられないのか不思議なくらいだ。前衛の15m滝は水流左を直登、この滝より上の大ナメは自由にルートが取れ、
快適の一言に尽きる。この大ナメ滝は7mをもって終了。この滝は容易に直登可能。
B、C沢の出合
鷹ノ巣C沢 大ナメと前衛の15m滝
大スラブ滝にて

左から(1:5)でスラブ状ナメ滝が入ると、小滝が幾つか続き、ゴルジュっぽくなってくる。ゴルジュ入口にある4m滝は右を小さく巻く。
ゴルジュ内にある幾つかの滝もシャワー浴びる事無く突破できる。ゴルジュと言っても右岸側は開け気味なので、小さく巻く事も含め、容易なルートを
選べば特に問題無い。最大7mくらいの滝を含め幾つか小滝を越えると、大きな岩を挟んだ30m2段滝が前方に現れる。
右岸手前を大きく巻けば、特に問題無さそうだが(「日本登山体系」には右岸を巻くと書いてあった)セッカクなので滝の真下まで進んで記念撮影。
 
30m2段滝(カーソルあてて)

さてこの30m2段滝だが、下段約20mは水流左を17mまでは多少傾斜が緩く、その上3mは多少傾斜がきつくなるが、のっぺりしていないので、
直登可能と判断、ザックを担ぎフリーで取りつく。確かに17mまではせいぜい3級+レベル、そして17m地点に残置ハーケンを発見。
しかし、ここから残りの3mは下から見るのとは異なりガバホールドが全く無い。残置ハーケンもこの上には無く、仕方なく1歩上がりガバを捜すが
やはり無い。。。この位置から右手を伸ばした30cm上にホールドを思わせる岩が出ていたが、そこに右腕が到達する為にはわずかな岩の突起に
足を乗せる必要があり、その1歩が出ない。リスも無し。そうこうしている内に、長時間、足の筋肉を緊張させていたせいか、足が震えてきたた。
一旦あきらめ残置ハーケンのポイントまで慎重に1歩下がる。残置ハーケンでセルフビレイを取って他のルートも探すが、やはりダメそう。
(この時一回落ちてしまった。。。セルフ取ってて大正解!)
仕方ないので、残置ハーケンからクイックドロー+長めのシュリンゲ2本を繋ぎ(全長2m強)先ほどの核心部の岩の突起に左足を乗せ、気合一発!
右手が上部のホールドに届く!だがこのホールドが今一つ決まりが悪い! 急いで左手で近くのホールドを捜し、一番よさそうな物を選んで
素早く右足、左足と運び、なんとか右手が2段目の傾斜が緩いテラスまで届いた。・・・が!ここにもガバが全く無い。。。
そして両足とも1/3も岩に乗っかっていない所で立ちあがると不幸にもシュリンゲの長さが短くツカエテシマッタ。。。 ヤバイ!最悪!

両手は放せないので、シュリンゲは継ぎ足し出来ず(今思うとカラビナを介せば継ぎ足し出来たのに)完全にハマる。
”セミ”といえば”セミ”なのだが、8月の前深沢と違って、"ミーン、ミーン"と鳴ける暇も取れないくらいの不安定度。筋肉の疲労もありシュリンゲを
ハーネスから外す事しか方法は無かった。ガバホールドが全く無い状況で、中腰になり左手でシュリンゲを外そうとするが上手く行かず、
ハーネスから管付きカラビナ事外す。
"ガチャ!"っと音を立てて落ちるシュリンゲとカラビナを見送る。もう気合で行くしか無い。微妙なホールドに指を噛ませて2段目に這い上がった!!!

今までお世話になったクイックドロー+缶付きカラビナ、計5000円を見捨てる事は出来ないので、ザイルを出し回収出動する。滝全体がナメ状なので
リスがほとんど無く、何とか見つけたポイントもハーケンが抜ける方向に力が加わる為、3ヶ所(3個しかハーケンを持って無かった)打ち、ザイルを固定、
懸垂で降りる。

さて、もう肉体的にも精神的にも疲れたが、まだ上段を残している。水流直登を試みるが、なんとなく不安で、右岸の壁を廻りこむルートを選ぶ。
だがここも微妙なバランスを強いられ、何とか突破する。結局この滝を越えるのに1時間以上を要してしまった。。。が生きているので良しとする。。。

しかし、ホッとする間も無く、25mのナメ滝が出現。さらに左岸の岩壁がかぶさる15m滝と緊張は緩められない。
それぞれの滝は大きな問題も無く突破。

この上の小滝を1箇所小さく巻いたが、沢に下降する時降りられない。仕方なく乾いたナメ岩に飛び下りたが滑ってしまい、そのまま4mナメ滝を
滑り落ちる!しかし体勢を入れ替え、着地を10点満点で決めたいした擦り傷も無く事無きを得た!着地点が平だったのは単なる運だけだった。。。
25mナメ滝
ゴルジュ奥に見える30mCS2段滝

そうしてようやく源頭部の様相となる。爼ー尾根のスラブ壁が美しい。途中沢筋が2つに分れ、水量の多い右に入ったが、ちょいとヤブっぽくなる為、
左の方がお勧めかもしれない。(どちらも同じ所に出るようだ)沢筋も無くなると草付きスラブの登攀になる。沢靴では滑るので、靴を履き替える。

ところで、爼ー尾根へ登るルートだが、何処へ登っても急な登り。取りついた所は2級+〜3級レベルの岩壁。一応階段状の様相だが高度感がある。
そしてこの岩壁が終わると草付きの急登。草を鷲掴みしている両腕が攣りそうになりながらもなんとかなんとか爼ー稜線に出た。もうボロボロ。。。
爼ー尾根へ登るルート

爼ー稜線は残念ながら踏み跡は殆ど無い状態で。雨も降り出す中、腰下までの笹薮を突き進む。疲れた体にオジカ沢ノ頭への登りはしんどかった。
ようやくオジカ沢ノ頭から万太郎山へ1分ほどの登山道に出る。

 帰りはヘッドライトが必要かと思ったが、2時間半かかると書いてある中ゴー尾根を1時間半で下れた為、明るいうちに駐車場まで戻れた。
中ゴー尾根は急激な下降ルートだが沢登りをやる人だったら、早いペースで降りられるだろう。下の方で数ヶ所、笹が覆っていて不明瞭な所が
あるのでヘッドライトを用いての下降はあまりお勧めできない。(赤テープも全く無し)

P.S:鷹ノ巣沢C沢は非常に明るく快適な沢だ。ラストの登りはチョイトきついが、ルートをうまく探せば楽に稜線に立てる事も可能だろう。
   核心の30mCS2段滝は右岸手前を大きく巻けば、私のような事にはならない。天気が約束された日にはヒツゴー沢以上にお勧めだ!

遡行図(クリックして)



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