2004年4月29,30日 北アルプス鹿島槍ヶ岳東尾根

メンバー:現場監督さん、弘田
装備:ザイル9mm×45m(シングル)
参考ガイド:岳人2003年3月号(?)
現場監督さんの記録はこちら

自発的なGWの予定が無く、現場監督さんに「沢に行きません?」とメールすると鹿島槍東尾根、同北壁主稜、同ダイレクト尾根、前穂高北尾根、明神東稜という全く想定外(笑)の
ルートを提案していただいた。慌ててWEBで調べると鹿島槍東尾根
なら行けそうな錯覚を抱いた為、「鹿島槍東尾根にしましょう!」という事で今回の計画が決定24日に予定していた
火打石谷が天気の都合で25日になり、疲れが抜けきらないまま突入する事になった。


前夜アプローチ
17:15自宅発→18:50常磐谷和原IC→19:11首都高ゲート→20:30中央石川PA→21:20JR八王子駅→23:00岡崎JC→ 23:30更科IC→23:50道の駅「安曇野松川」着

GW初日と言う事もあり首都高の流れが悪かったが、早めに出発した為、予定時刻前に八王子駅に到着。 現場監督さんと待ち合わせをし北アを目指す。
鹿島槍東尾根の基点は”大谷原”というところになるが、電話、トイレ等など施設の整った道の駅「安曇野松川」
の駐車場で車中泊することにした。
今回、監督さんの荷物が小さく、”40Lザックに入った”との事だったが、出てきた寝袋は自分が持ってきたもの (+6℃)より羽毛の量が多いもので、
山中では寒くて寝れないんじゃないかとかなり不安になる。
車の中ではGパン+シャツ+冬用寝袋でOK。


初日(快晴)
7:23大谷原着、8:05出発→8:27東尾根取り付き点→11:05一ノ沢ノ頭→12:15二ノ沢ノ頭 →第一岩峰基部着(幕営)

車は大谷原まで入れる。20台は停められるだろう。携帯は使えない。トイレは掘っ立て小屋みたいなのが そうなのだろうか?水は無いので川の水を汲む
ことになるが、我々は道の駅で用意済み。
夜中の寒さに対する不安があったため、当初着替え用として車の中においていくつもりだった薄手のシャツ、
ウインドブレーカーをザックに押し込め出発する。
東尾根の取り付きはゲートから徒歩20分くらいで林道が最初にS字カーブを描いた直後に赤布が 2,3ぶら下がっている所だ。あまりにも歩いてから
早いので、監督さんと「ここかなぁ???」なんて言いながら
ガイドを見ると”左手には堰堤”と書いてあり、なるほどその通りなので、ここを登っていく。
踏跡はすぐに薄くなり、まばらな赤布を見つけて登っていく。 いつもの事だが、最初の登りはきつい。寒さも無く汗だくになる。尾根に出ると
「ちょっとザックをおろしていいですか?」と早速弱音を吐いてしまった。

ここからは雪も現れるが、遅い時間にスタートしたにもかかわらず、トレースは無い。うっすら一週間くらい前の人と思 われるトレースを見つけた。監督さん
の話によると、一週間前、東尾根の第二岩峰上でザックを落とした
人の山行記録を見たそうで、その人達のかも?との事。
ようやく木々の間隔が少なくなってくると、広い尾根の上に出て、ここからは隣の天狗尾根、そしてこれから登る東尾根が姿を現す。一ノ沢ノ頭はここから
もう一息、すると、別の方角から一ノ沢ノ頭を目指す人影
が見えた。「あっちが正解かなぁ?」、「いや、こっちでしょ!」なんて言いながら一ノ沢ノ頭を目指す。
 東尾根取り付き点には赤布有り  序盤の登り  一ノ沢頭手前の広い尾根

一ノ沢ノ頭につくと、先ほどの人が登ってきた。50歳過ぎているような人で、独りだったので単独ですか?」 と聞くと後ろから二人来るという。
二ノ沢ノ頭の方を見ても人影はなく、”GW&快晴”と言うのに我々含めたった2パーティーというのは 凄くラッキーだ。一ノ沢ノ頭で東尾根全景をバックに
写真を撮ってもらい、二ノ沢ノ頭へ向け先に出発する。

一ノ沢ノ頭にて
 一ノ沢ノ頭からかは東尾根全貌(カーソルあてて)

一ノ沢ノ頭から二ノ沢ノ頭のルートはやせ尾根も現れ緊張する場面も出てくる。ダブルアックスで登れば 楽勝な急斜面も長いピッケル右手に一本では、
ピッケル・素手・ピッケル・素手・・・と
ただの”気合”に様変わり・・・。

 一ノ沢ノ頭から二ノ沢ノ頭のルート-1  一ノ沢ノ頭から二ノ沢ノ頭のルート-2  一ノ沢ノ頭から二ノ沢ノ頭のルート-3  一ノ沢ノ頭から二ノ沢ノ頭のルート-4

二ノ沢ノ頭はテントを設営した跡が二つあった。15張りくらいは張れるかな?ここからは東尾根の核心部が広がる。多くの記録では初日はここで幕営
しているが、私が持ってきたガイドは第一岩峰基部で幕営しており、時間はまだ12時を回ったばかり。一応携帯を取り出して見るとしっかりアンテナが
立つ!明日の天気図を読み込むと”完璧に晴れ!” 先行パーティーも無いので安心して第一岩峰基部まで行く事にした。

”天気図も書けないやつは山に登る資格なし!”な〜んて言ってたものだが今もそうか。。。 今では、携帯さえつながれば何でも情報が入る時代。。。
アルプス登山も相当様変わりだろう。
まぁ、火をつけるのも、マッチからライターに代わっているのと同じように考えて、道具の進歩を 抵抗無く受け入れる
のも悪くない。携帯嫌いの監督さんも、さすがに携帯で天気図を見せられると
「俺も携帯買おうかなぁ・・・」と言っていた(笑).
 二ノ沢ノ頭から東尾根核心部(カーソルあてて)


二ノ沢ノ頭からは急斜面のトラバースから始まる。雪はやわらかく一歩滑ったら(崩れたら)そのまま 数百m滑落してしまうので結構恐ろしい。雪山慣れ
していない自分はザイル出した方が良いかも・・・
と思うくらいだったが、監督さんはガシガシ登っていく。
トラバースが終了すると、今度は急斜面の直登だ。トレースも無く雪もやわらかいので非常に疲れ 10歩登っては息が上がって立ち止まる。トップを交代し
ながらなんとか上まで登りきるとやせ尾根で、もうひと頑張りしてようやくザックをおける岩陰のテラスのようなところに出て休憩。 もうへとへと。。。

監督さんも「大学時代の新人合宿並みのキツさだよ!」と言っている。 まあ今日はポカポカ陽気だから、のんびり休んでいられるが、これがちょっとでも天気が
荒れると、
そうも行かないので、天気の良さに感謝する。。

ここから第一岩峰までは、今まで以上の急斜面で、ピッケル一本で大丈夫なのか?という感じだ。 監督さんは「10mも登れば大丈夫でしょう!」とダブルアックスを
することも無くリードする。自分はまたもやピッケル・素手・ピッケル・素手・・・
やっぱ冷てぇ〜・・・

 結局、この急斜面ほとんど傾斜を緩めることなく、肉体的にも精神的にも厳しい登りとなった。 ようやく傾斜が緩んでくると第一岩峰の下に出た!
 二ノ沢ノ頭から岩陰テラスへ向かって登る監督さん  第一岩峰急登を終えてバテバテ  第1岩峰下に到着
 
「到着〜!」と喜んで見たものの、”岳人”のガイドに掲載されてた写真と違って、やせ尾根になってて、テントを安心して張れるところが無い・・・
 まぁ、明日の天気も安定しているので「だいじょうぶでしょー!」と巾4m程度の尾根にテントを設営した。 ここに着いて気がついたが、監督さんの
持って来たガイドによると、ここから赤岩尾根を下るルートで帰る場合、8時間もかかるとの事。ほとんどの記録が二ノ沢ノ頭で幕営しているが、
ここで泊まると二日目が非常に長い行程になるわけだ。


実は、自分がもうひとつ不安に思っていた事があり、それは全く隠れるところが無い雪稜で ”トイレはどーするんだ?”という”都会派育ちのボク”に
は重要な問題だったのだ!
しかしこれまた、運が良い事に今日は入山パーティが少なく、ここまで来たのは我々だけ。
(最終的に他パーティーは2つで二ノ沢ノ頭でテントを張っていた)
「ケツ出したまま滑落したくないよなー」という点で監督さんと意見は一致し、平らな場所にご丁寧なトイレを 作って落ち着いたところで、第一岩峰の下見に行く。


テントの中は暖かかったが、プラスチックブーツだと足が完全に蒸れてしまい靴下がビチョビチョ。。。 これでは足が冷たくて寝れないので、コンロで一生
懸命乾かす。
努力の甲斐あって夜は暖かかったが、「第一岩峰どーやって登ろうかなぁ・・・」なんて考えていたら 寝付けなくなり、しまいに風が出てきてますます眠れなくなり
ほとんど寝ていない状態になってしまった。

 第1岩峰下のテン場  第1岩峰下のテン場-2


2日目(晴れ)
6:25第一岩峰基部出発→7:50第二岩峰基部→8:25第二岩峰上→9:50鹿島槍ガ岳北峰着 10:35南峰北峰間の雪渓から下降開始
→12:50赤岩尾根登山道合流→13:35大谷原着


今日は、若干薄い雲が出ているものの概ね青空が広がっている。放射冷却も無くテントの中は気温3℃。テントを撤収して、アイゼン/ハーネスをつけ、
ここでザイルをつけたまま第一岩峰に取り付く。出だしのルートは
二つあり、正面の岩壁を登るのと、その右にある雪の付いたルンゼを登るものだが、
どちらも3級程度で
上部でひとつになる。今回は核心がこの上の第二岩峰なので、ここは最初私が行く事にさせてもらう。
と、ここで二ノ沢の頭で幕営していた2パーティーが早くも追いついてきた。
自分は正面の岩壁コースを取る。ホールドはガバで階段状なので特に問題も無く5m程登る。 後は”土/岩/ハイマツ”のミックスの登り。途中のハイマツで
ビレイを取り監督さんとトップを交代。2ピッチ目
からは”ハイマツ/雪”のミックスになり、3ピッチで第一岩峰は終了。
 
 第1岩峰のルート(カーソルあてて)  第1岩峰取りつき点から  藪MIXを登ります  監督さんフォロー

ここから、第二岩峰に向かって急斜面をトラバース気味に上がっていく。ここで、”ガイドとお客さん”と思われる 二人組みがペースを上げてきたので、
先に行ってもらった。
第二岩峰基部もやせ尾根になっており、テン場もあると聞いたが、せいぜい一張りしか張れない。
 ガイドとお客さんのパーティが追いついてくる  第2岩峰基部へのトラバース  第2岩峰全景(先行パーティ登攀中)

第二岩峰は、先行パーティーの登攀を参考にする。古い残置シュリンゲがぶら下がる凹角チョック ストーンの登りが核心のようだ。45mザイルであれば、
1ピッチで行ける長さだが、ルートがジグザグになる為
ザイルの流れを考え、途中でピッチを切っていた。核心部分は先行パーティのガイドと思われる
人の登り方を
参考にさせてもらう。。。

  監督さん、弘田:「おぉ!なるほどー!」
  監督さん:「わかったわかった!」
  弘田:「おっ!監督さん目が輝いてますねぇー!」(笑)
  監督さん:「死んでるよ!!!」
  弘田:「またぁー!、じゃ私が先行って、途中でピッチ切りますから!」(笑)

といって無理やり監督さんに核心を押し付ける。 雪はほとんどついていないので、アイゼンをはずして、登っていく。核心までは特に難しいところは無いが
高度感が凄い為、慎重に足を運ぶ、残置ハーケンはしっかり打ってあり問題ない。「ビレイ解除」のコールをして監督さんに登ってきてもらい、そのまま核心
の凹角に入っていく。ビレイポイントから凹角部は見えないが
すぐに、「突破したよー!」のコール。はやっ!
セカンドの私も凹角に入る。凹角をまたぐように足を置いて少しずつ上がっていくと凹角の上と挟まった岩はすべてガバになっている。挟まった岩腕が
外れないよう願いながら腕力勝負で凹角を突破する!
ここからはもう階段状で何の問題も無い。 
 第2岩峰核心部取りつき点  フォロー中  後はロープ引っ張るだけ
 
ここからは緩やかな傾斜で30mほど歩くと、尾根はザックを降ろせる位の広さになるのでここで再びアイゼンをつける。第二岩峰を越えれば終わったも
同然とガイドに書かれていたが、北峰まではまだ距離がある。
歩き始めて2時間くらいしかたっていないのに、眠れなかったせいかヘトヘトだ!
もう一頑張りということで、やせ尾根を上がるとようやく北峰山頂に到着する。 風が強いなか記念撮影・・・。。
 北峰手前ラストの詰め(カーソルあてて)  北峰到着です♪   北峰山頂から南峰


それにしても、南峰は結構大きく見え、「あれ登るのー!」ともう二人ともゲッソリ。しかも、ここから冷池山荘までが2時間半。さらにそこから
赤岩尾根まで
また登り・・・まぁそれしか選択肢はないから仕方ない。

先行パーティーの踏み跡をなぞって南峰に向かう。途中、彼らの踏み跡を見失ったが、まぁ一般道なので 気にせず南峰の登りにさしかかった所で左の
雪渓に目をやると

弘田:「あー!監督さん、あの二人この雪渓降りてるよー!」
監督さん:「えっ!あっそういえば。。。
          実は監督さん、雪の状態がよければこの雪渓から下れる事を聞いた事があるらしい、疲れて忘れてたそうだ!
なんと、踏み跡が急に無くなったと思ったら、北峰と南峰の間の雪渓から先行パーティーは下山していたのだ。でも、ボロボロの我々にはまさに”神から
与えられた一筋の光!”

弘田:「南峰いきます〜?」
監督さん:「どうしよっか?」
弘田:「行った事あるんで、どっちでもいいですけど」(すでに行く気無し)
監督さん:「俺も行った事はあるし。。。いま10時半かぁ。。。」(以下同文?)
監督さん:「午後になると、雪崩の危険が増すからなぁ。。。」
弘田:「じゃぁ、南峰やめましょう!」

という事で、早速この雪渓を下ることにする。ザクザク雪にメチャクチャ急斜面なので後ろ向きになって降りる。途中、”ズボッ”と雪を踏み抜いた。見ると
雪面に大きな亀裂が雪面に入っているではないか!
怖すぎる!

南峰の方からは小さな落石も何回かあり、あんまり生きた心地はしないので、早く下りたいが、急すぎてシリセードは出来ないし、とにかく後ろ向きで折り
続ける。標高差で300〜400mくらい下るとようやくシリセードが
出来るが、暴走しそうでこれまた結構怖い。南峰ダイレクト尾根取り付き点を過ぎると、
ようやく安心して歩ける傾斜になりペースをあげると右手後方で


”ガッ、ドドドドド”  雪崩だ!

いそいで、左手尾根の方に走るが 「違うところだよ」と監督さん。 見ると小さな尾根を挟んだ隣の谷筋から雪が流れ落ちている。あーこわかった・・・
 南峰、北峰の間の雪渓を下降  安全圏まで降りてきました



結局この雪渓を2時間半下ると赤岩尾根との登山道に合流。赤岩尾根ルートで行っていたら今頃尾根の下降を始めたころかなぁなんて考えると、
こっちの雪渓を選んで大正解だった。


温泉は、大町温泉「薬師の湯」に入る。久しぶりに来たが、大幅リニューアルして凄くきれいになっていた。帰り道、雪を完全に沸騰させないで飲んだ為、
下痢がひどかった。反省


P.S:雪稜登山のグラビアルートです。何の練習も無い私が行けるんですから、経験者がいて、天気が良ければ初級者コースと言えるでしょう。(2014年12月追記)
    
    行動中 上:保温シャツ1枚or+カッパ 手袋なしor皮手袋(ビショヌレ)
 下:沢用短パンのみ or+カッパ+スキー用靴下
    就寝中 (夏用寝袋”6℃”+シュラフカバー)  上:保温シャツ+春用薄手シャツ+薄手ウインドブレーカー+スキーウエア
                                下:沢用短パン+カッパ+ロングスパッツ+スキーウエア
   上記服装だったが、晴天で、朝の冷え込みも無かったから寒い思いはしなかったが寝袋は夏用だと問題ありだ!いろいろ良い勉強になった。


山/沢登りトップへ   その空の下で。。。トップへ



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