2008年10月18,19日 登川 米子沢→上ゴトウジ沢下降→ブサノ裏沢

メンバー:Takahashiさん、ひろた
装備:ザイル8mm×30m、靴:フェルト
遡行図、概念図はこちら

先週行った南面のコウガイ沢の紅葉に気を良くし、今回も南面の沢ということで、
奈良沢川本流に位置するブサノ裏沢を選択。アプローチとしては米子沢→上ゴトウジ沢下降が一般的だが、
これだけだとブサノ裏沢の下部ゴルジュの遡行が出来ない。下ゴトウジ沢の下降も考えたが、米子頭山周辺の藪コギが非常に
大変ということで、上ゴトウジ沢を下り、さらに下トトンボ沢へ移動。下トトンボ沢とブサノ裏沢出合から遡上する事にした。

アプローチ
18:55自宅発→(一般道)20:01佐野藤岡IC通過→21:30赤城IC通過→22:15矢瀬親水公園(仮眠)

初日
6:40桜坂駐車場発→9:05栂ノ沢出合(1時間休憩)→12:13巻機山/米子頭山稜線着、
12:15上ゴトウジ沢下降開始→14:52ブサノ裏沢出合→15:03下トトトンボ沢へ移動
→15:40下トトンボ沢/ブサノ裏沢出合着(幕営)

月夜野の矢瀬親水公園から高速の通勤割引を利用して、巻機山登山口へ移動。ここの駐車場は1日500円。
秋のハイシーズンという事もあり6時過ぎに到着したときには、ほぼ満車。300mほど戻って道路脇のスペースに
停める。ここなら無料っぽい♪

準備を整え、歩き出すと、正面からダッシュしてくる人が・・・!と思ったら、声を掛けられる。なんと、マイミクの
まっちーさん!米子沢に来る事は事前に知っていたが・・・人がごった返すこの状況でよく判りましたねー♪
いやぁーお会い出来て何よりです。まっちーさんの師匠さんともご挨拶。お仕事で内の会社とも繋がりがあるそうで。。。

師匠さんから、米子沢への取り付を教えていただき、お先に入渓する。。。
・・・とはいっても、出だしから大きな堰堤群。そういえば、12年前に来た時、工事していたっけ???
この堰堤群だが、左岸に舗装された道路が沢と平行に通っており、これを利用すると楽。
堰堤を抜けるとゴーロ状の伏流が続く。遡行者でごったがえすかと思ったが、前方には誰もいない。写真を撮り
ながらチンタラ進んでいたら、6人組みに抜かれる。
まっちーさんに遭遇
左岸の道路ここから沢へ
米子沢序盤の様相

水が流れ初め、岩盤を流れる5m2条滝から、"米子沢"がスタートだ! 岩盤を歩き4mナメを越えると右岸からトイ状
で流れる"ナメ沢"が合流。 このすぐ先で。4mトイ状が現れ行く手を阻まれる。通常ここから始まる連瀑帯は右岸に
付けられた巻き道で越えるようだが、遡行図も書きたいので、4mトイ状だけを高巻いて。沢床に降りる。
"ナメ沢"が合流
4mトイ状、ここからゴルジュ

すぐ上の5m2段は水流右を直登。次の10m2段は水流沿いは難しく小さく右から巻く。沢に戻る所に残置ボルトが
あったが利用しなくても滝の落ち口に戻れる。次の5mは水を触りながら左を直登。その上の7mは右から容易に
上がれる。連瀑帯最後の5m2条は水流右から直登・・・12年前に遡行した時は、ここに30m級の大滝が垂直に水を
落としていたように記憶していたが、人間の記憶なんて当てにならないものだ。
5m2段と10m2段(カーソルあてて)
5m滝に挑む
5m滝の直登(クリックしてください)

連瀑帯上で一旦平凡になるがすぐにナメ床が復活。10mナメ、8m、多段15mナメも、難しい所は無く快適に越えると
右から顕著な沢筋"栂ノ沢"が入る。ここの出合右岸には岩小屋有。地図を広げると、距離で既に半分くらい歩いて
いる。時間はまだ9時。日の当った米子沢を遡行したい。ということで、ここで大休止。大量の薪に目が行き着火

「火に当たりたいんでしょ!?」

とTakahashiさんに笑われてしまう。
メーター級の火柱を上げると、飲みたくなってしまいそうだ。。。しばらくすると、まっちーさんパーティが合流
巻機山避難小屋付近でテントを張るとの事なので、「そこで泊まるなら沢で泊まった方が、焚き火は出来るし、水は飲み放題
ですよ!」と伝えたが、さてどうしたのかは不明。

火をつけるとあっという間に時間が経過、1時間の大休止の後、焚き火をまっちーさんパーティにあずけ、お先に
行かせて頂く。。。
8m滝手前で
栂ノ沢出合
まっちーさんパーティと合流

ここから先も岩盤で構成された快適な滝が続く。沢に日が差し込むと美しさ倍増!。
右岸から顕著に水を落とす滝が遠くに見えると思ったら、本流で、"横向き12mナメ滝"と勝手に名づける。
滝上に出ると、右岸寄りにナメ床が伸び、そこから水を落とす自然の造形美にしばし感嘆。
横向き12mナメ滝
横向き12mナメ滝上から
横向き12mナメ滝上を進む

ゴーロ状の様相から沢が左に屈曲すると10mトイ状。秋でも水流中央突破可能♪ここから再びゴルジュになる。
6m2条は右から、5m2条は左から。8m2段は水流右が登れる。クロモリハーケンが2つ残置されていたので回収。
その他残置シュリンゲも散見され、「後で沢の下降で使おーっと!」と言って回収。ここから上は両岸の壁が切り立ってくる。

「米子沢ってこんな悪い所あったっけ?」と顔を見合わせる。

2mCSは登れず小さく右から巻く。V+。するとドーム状のゴルジュの中に2段7m。一瞬ヤバイと思ったが、右から
容易に登れた。
10mトイ状
8m2段(カーソルを当てて)
ドーム状2段7m

その上は激狭ゴルジュとなり6mトイ状。「マジ?!全く記憶に無―い!!!」とりあえず両足突っ張りで3m上がり、左に
移動できればOK。ゴルジュは続き4m滝を左から。ゴルジュ出口となる10m滝は、右壁が乾いた階段状で救われる。
ゴルジュ内の滝はどれも3級レベルだが、『癒し系』前提で来たこともあってか、割と手ごたえを感じる。
ツッパリで超える6mトイ状
4m滝上に10m滝
10m滝は右から簡単に登れてホッとする。

もうひとつ上にある2段10m滝は水流左に残置シュリンゲがありこれに足を掛けて登る事が出来る。12年前は確かに
そうしたが、今回はさらに左から小さく巻く。

ここから米子沢ハイライトの全長数百mの大ナメ帯がはじまる。途中に多段10mナメ滝があるが、先行していた6人
パーティーが右端をザイルを出して登っていたので、我々は左からフリーで越えていく。多段10mナメ滝上はさらに
沢床が開け、「やっぱ米子のナメはすごいなぁー!」としか言いようが無い。
大ナメ帯突入!
どこまでも癒し系です。

長〜いナメは2段5m滝で終了。ここからは沢床は平凡。ただし明るく開けた様相は健在。
ここから4m程度の小滝を2、3超えると右から3m滝で出合う枝沢が入る。地図で確認すると判るが、ここ枝沢を
詰めると、上ゴトウジ沢へは最短距離になるので、米子沢本流遡行はここで終了とし、右の枝沢を詰める。
さすがに笹がちょっとうるさいが、笹の軽い藪コギで、枝沢に入ってから20分弱で稜線に出る。ここには登山道or踏跡
は一切無い。ここで休憩する必要も無いので、すぐに尾根を跨ぎ上ゴトウジ沢の下降に入る。
3m滝で出合う枝沢(ここを右に入る)
稜線に道はなし
上ゴトウジ沢の下降に入る

笹藪から草付に変化し沢形へ少し降りると、厄介な10m滝。さすがにメジャールートなのか残置シュリンゲが細い潅木
につけられていた。クライムダウンも試みたが、ちょっと難しそうなので、左岸から巻き、隣の窪を利用して下降。 
次の5m滝は残置を利用し懸垂下降。次の6m滝はクライムダウン。3段10mナメも下降に問題は無い。この辺りは
木イチゴが多く採れる♪。また、増水しなければ、テン場もあり。

沢が東方に屈曲する所で、Takahashiさんが、今しがた用を済ませたらしい熊の糞を発見!!!我々も食べていた
木イチゴを大量に食べたのが判る。さっき"熊よけ"のつもりで大声を出したのが幸いしたようだ。引き続き、叫び声を
出しながら沢を下る。鈴程度では滝の音にかき消されるのであまり意味が無いかも。
巻いて降りた10m滝
木イチゴ(大量に採れます)
沢が東方に屈曲するところ(右から降りてきました)

この辺りからナメ床が点在。出てくる滝は5m程度の物ばかりで、小さく巻いたりして、容易に下降できる。ちょうど西日
が当たり、紅葉が美しい。。。ただ、獣が縄張りを示す"匂い付け"が数箇所あり(^_^;) 右岸から15m程度の滝で出合
う枝沢を見ると、そろそろブサノ裏沢出合だろうか? しかし、ここで、5m滝、その先で大きさ不明の大滝が現れる。
5m滝上に残置シュリンゲが数本見つかり、まとめて懸垂下降しているようだが、我々は30mザイルしか用意していな
いので、左岸を巻き、枝沢状になった所を下っていくと、先ほどの大滝が見えてくる。大きさは15m。30mザイルでは
ちょっと難しい。ここから先は草付になって下れないので、潅木を支点に懸垂下降。ザイルは下までは届かないが、
残りの部分はフリーで下降可能だ。
容易に下降出来ます。
高巻いた15m滝大滝
15m滝を下から見る(カーソルを当ててください)

ここ先でブサノ裏沢出合となる。広河原を想像していたが、沢床は狭い。先客が居るかと思ったが誰もいなかった。
テン場は2箇所で、出合に1箇所、出合から30m程度下った所に1箇所だ。ちなみに、ここには魚は居ない。

我々は、ブサノ裏沢下部ゴルジュを明日遡行する為、さらに行動を続ける。出合から100m程下ると、たいして登らずに
隣の下トトンボ沢に移動できる。特に藪も無くむしろ獣が良く通っている模様。たった10分で下トトンボ沢の支流に
出る。水はしっかり流れており、
平凡ではあるが藪沢の印象は無い。滝は皆無で本流にぶつかると魚影も出てくる。釜には尺越えも発見! 
下トトンボ沢に移動してから30分程度で再びブサノ裏沢出合にぶつかり行動終了。テン場は探せばいくらでもある。
早速釣りを始めるが、この辺りにはニは釜が無く。釣りのセンスが無い私は小さいのが1匹だけ(>_<) 
もちろんそれでもキノコも採れたし、焚き火でお酒があれば、大満足なのでした。
上ゴトウジ沢/ブサノ裏沢出合
下トトンボ沢へ移動!
ブサノ裏沢/下トトンボ沢出合


2日目
8:02下トトンボ沢/ブサノ裏沢出合発→9:40上ゴトウジ沢出合→12:15 60m滝下
→13:50稜線着→14:13巻機山避難小屋→15:40桜坂駐車場着

朝起きて、早速、釣りに出かける。。。明け方は食いがよく5匹釣上げるが、期待の尺は釣れず普通サイズばかり。
2匹リリースで、3匹を朝のおかずとする。
・・・なんてことをやっていたので、出発は8時。。。
ブサノ裏沢の広河原を進んでゆくと沢床が狭まり、淵や釜が出てくる。すると顕著な魚影が多く走る。

「鯉?!」
 コイなんかここに居るわけ無く、ゆうに尺越えの大岩魚。3匹くらい見たかな。。。こんなでっかいの那珂川水遊園
水族館でしか見たこと無いヨー!  ここに居たのかー!!!って感じ。

淵を持った小滝を進んでいくと、20m2段魚止め滝が現れる。高巻きするなら100m以上戻って右岸か? ここは水流
左が登れそう。残置ハーケンも見える。Takahashiさんは昨日転んで指に鈍痛があるという事で、私がリードする。
取りついてみると、岩は割としっかりしていて上に上がるほど簡単、見た目以上に容易に登れた。V+〜W
2段目は簡単で全く問題無し。滝上に出ると、広いナメ床に癒し系のナメ滝。まさに完璧な景観です。
ただ、魚止め滝より上はお魚は居ないようです。
巨大イワナを写せず・・・(笑)
20m2段魚止め滝
幅広ナメ床に癒し系の滝

上に控える8m滝は右から直登。ナメ床進めば、昨日見た光景となり上ゴトウジ沢の出合いに到着。このままブサノ裏沢
を進むとすぐに嫌らしい4mCS。右から這い上がる。辛ければ空荷で行けば良いでしょう。
このまま5m程度の小滝をいくつか超えて行くと、早くも主稜線が見えてくる。
8m滝
4mCS(右から這い上がります)
早くも主稜線が・・・!

さらに進むと、前方に大滝が見えてくる。近づいて行くと、20m滝。水流左も何となく行けそうな気もするが、ムリせず右の
乾いた岩壁を選択。ここも私がリードする。見た目簡単に見えたのだが、岩は全体的に逆層。リスも少なく、沢靴だと
ちょっといやらしい。水流に向かって登っていけると思ったが、一旦怖くなると、どーもダメで右の草つきへと逃げ気味に
なる。2つハーケンで支点を取り、滝の高さまで上がったところで細い灌木を束ねてビレイ。ここからは容易に落ち口に
向かってトラバースできる。20m滝上には8m滝。これは左右どちらからも超えられる。
20m滝
20m滝拡大(カーソルを当てて)
8m滝

少し進むと、二俣。水量比(2:3)。本流は右。二俣に掛る2段10m滝を小さく巻いてあがると、8m滝が行く手を塞ぐ。
左から巻きか・・・と目をやるとそこにザックが落ちていた!
Takahashiさん曰く 

「そーいえば、ザックが落ちていたと言う記録を見ましたよ!」

周辺に骨や血の跡は無い。「どれどれ」と中身を確認。すると、テン蓋から破損したデジカメが・・・ な・なんと記録
メディアが残っていた。写真が取り出せれば、何時の物か確認できる筈、と持って帰る事にした。さらに大きく変形
したコッヘル、シュラフ、折れた釣竿、柄が傷ついたハンマー・・・
状況から推察すると、単独遡行者が高巻き中に背中から墜落。負傷した為ザックを置いて貴重品だけ持って
上がった感じ。。。途中で死んでいない事を願いつつ、ハンマーをTakahashiさんが持っていく。
(2:3)二俣 右に入ります
8m滝
落ちてたザックを調べる

8m滝は落ちてたザックのところから右岸を小さく巻く。8m滝の上は狭いゴルジュとなっており、7m滝CSがあるので、
一緒に高巻く。ここでなぜか水は濁ってくる。小滝を超え、2段10m滝を快適に登るとこの水の濁りの原因が、壁の崩壊
であることが判明。南面の沢にとって、この時期には信じられない雪渓が大ブリッジとなって残っていた。
そして、そして、その奥にブサノ裏沢ハイライトとなる60m大滝が控えていた。雪渓がなければ滝の全貌がきれいに
見渡せたのに残念。
2段10m滝
雪渓の奥に大滝が!
雪渓は駆け抜ける

60m大滝下部は登れず、右から上がって、水流に向かってトラバース。ここから上はフリーで水流左を快適に越えられる。V-
60m大滝下部
大滝上部
大滝上部

大滝上は、急に源頭部の様相。ナメ床はまだ続く。10m滝は、右岸に踏跡っぽく見える所を利用して小さく巻こうとしたが、
かなりヤバく、先行したTakahashiさんからシュリンゲを多数つなげて、クリヤーした。もっと大きく右岸を巻いた方が
良い。
8m滝は右から回り込んで、そのまま瀑心に突入してクリヤー、3段25mは寝ているので、特に問題はない。
10m滝(カーソルを当てて)
8m滝
3段25m滝

この先、小滝は多少現れるものの、水量は少なくなる。詰めは全く藪こぎすることなく。牛ヶ岳と巻機山の間の稜線に
でた。
巻機山山頂を経由し、避難小屋で休憩。ニセ巻機山からの下山道は非常に歩きやすく。快調に下って桜坂駐車場に
到着した。
登ってきたブサノ裏沢を振り返る
避難小屋近くの風景


P.S:経験者がいれば特に難しい所は無い、快適コースです。ザイルは30mで何とかなりましたが、40m以上あった方が良いかも。
   拾ったザックのデータですが、単独ではなく、3名のパーティである事が判明。もちろん日付もわかりましたし、ザックの持主の
   顔もわかりました。一応管轄の警察署に電話し、遡行日近辺の捜索願いの有無を調査依頼をしましたが、返事がないので、
   無事だったという事と解釈しております。

米子沢遡行図(クリックして)
上ゴトウジ沢/ブサノ裏沢遡行図
概念図(クリックして)



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