2008年10月25,26日 苦土川大沢左俣→加藤谷川ニゴリ沢下降→三倉沢右俣

メンバー:Takahashiさん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム、靴:フェルト
地図:那須岳、甲子山
遡行図、概念図はこちら

男鹿山隗、三倉山、高倉山周辺では井戸沢、大沢が非常にメジャーであるが、ちょうど山の反対側に位置する
加藤谷川三倉沢はこの山域で最も豪快な遡行が出来るとの事で以前から気になっていた沢。。。
ただ、遡行記録は実に少なく三倉沢左俣がWEBで掲載されているのみ、遡行図は"登山大系"のみ。正体不明の沢といってもよいだろう。
三倉沢は右俣、左俣で右俣の方が難しいらしいので、今回右俣狙いで計画。
アプローチだが、栃木県側から入山したい為、苦土川大沢を遡行し、大峠からニゴリ沢を下って加藤谷川へ入る事にした。

4:50自宅発→6:50苦土川ゲート着
7:15苦土川ゲート発→7:25大沢入渓→8:12西沢出合→9:40二俣→(左俣遡行)12:30稜線
→13:28大峠→13:40ニゴリ沢下降開始→16:00加藤谷川出合

矢板でTakahashiさんと待ち合わせ。車1台で深山ダムを目指し、苦土川へ。苦土川左岸沿いの林道に入ると未舗装
になるが、道は綺麗で一般車も問題無い。苦土川を右岸に横断する橋のところで簡易ゲート有り。ただのクサリで、
問題なく先に進めるが、大沢の出合はこの橋の下流に位置する為、ここに車を駐車する。3,4台しか停められないが、
今まで、駐車に困った事は無い。

準備を整え、歩き出す。橋の下流に堰堤があり、ここを横断して、大沢に入渓。大沢は2000年以降に単独で右俣を
遡行しているのだが、記録も無く、記憶はここから始まる堰堤群がカッタルイというくらいだ。
この堰堤群、実に14個!!! 右岸の高い位置に林道が設けられているので、途中から林道を利用。まぁ、一つ一つ
越えてもさしたる問題は無いでしょう。
右岸林道から踏跡が伸び、これを利用すると14個目の堰堤上に出る。平凡な様相をいくとすぐに右岸から西沢
入る。"日本登山大系"には「出合は判りにくい」と書いてあったが、顕著。
橋の手前に駐車スペース有り
こんな堰堤が続く
西沢出合

本流を進むと、前方に7m滝が現る。遡行感度はここから一気に上がっていく。この7m滝は水流右から容易にクリヤー。
滝上は今までの様相が嘘のようにナメ床が広がる。前方に立ちはだかる15m滝は見事。直登は水流左のルンゼから
取り付くか、もう少し水流沿いをアタックするかどちらか。残置ハーケンあり。 我々は容易なルンゼを選択。V。
7m滝(ここからが楽しい)
7m滝上の様相
15m滝
15m滝(カーソルを当てて)

ここからもナメ、&小滝が連続。2段8mナメ6mトイ状6m逆「く」字滝・・・どれも快適に登れる。
5m滝を越えると二俣。左俣には15mの美しい大ナメ滝が掛かる。右はゴルジュっぽい様相になっており、入り口に5m
程度の小滝かかる。水量比は(3:2)で左俣の方が多く、本流筋は左俣。 前回は右俣を遡行し、さしたる記憶が残って
いない事を踏まえると特に顕著な滝は無いのでしょう。もちろん、今回は左俣入る。
2段8mナメ
6mトイ状
6m逆「く」字滝

出合の15mナメ滝はTakahashiさんが水流左。私が水流右に取り付く。水流左はそのまま
真直ぐ登って行けるが、水流右は途中で水流を左に横断する必要有り。幅7cm程度のバンドに足を置き、横断する。V+
二俣
左俣に掛る15mナメ滝(カーソルを当てて)
15mナメ滝横断中!

この上は、2段13m滝。下段は容易だが、上段は難しい、水流左のルンゼに取り付くが一歩が上がれないので、
残置ハーケンにシュリンゲを掛け、それに足を乗せ直上。Takahashiさんにはザイルを出して登ってきてもらう。
すぐ上に5m,3mと続いており4段といっても良いくらいの滝だった。
2段13m滝(カーソルを当てて)
2段13m上段の登攀

この先、4mの小滝を過ぎると、見事な40m大滝が右から入ってくる。明るいスラブ状の滝だ。直登は水流右の凸か
その右。凸部には残置シュリンゲがぶら下がっているが、その右の乾いた岩を登る方が容易。折角なんで、凸部を
直登する。V その上で一旦傾斜寝て、再び傾斜がきつくなる所は岩は完全に乾いており、カムが利用できるクラック
有り。残り5mを残してテラスに出るので、ここで岩に支点を取りピッチを切る。残りの5mはナメ状で容易に上がれる。
40m大滝
40m大滝下部凸部を登る
40m滝上部でピッチを切る

40m大滝上に出ると展望が開け、深山ダムが一望できる。ここから先は急に源頭部の様相。
ナメ床なのだが、沢幅は狭く両側から笹が茂る。8m滝を越えると(1:2)二俣。ここを右に入ると両側の笹は沢に覆い
かぶさるようになる。2段9mは快適に直登。滝以外は笹がうるさい感じ。
8m滝
(1:2)二俣
2段9m

5m2条ナメを越えると、また明るく開け、快適な詰めと思われたが、稜線はさらに奥にあり、笹が密生していた。。。(^_^;)
20分程度の藪コギで大倉山と五葉の泉と呼ばれる池糖の間の稜線に出る。稜線登山道は明瞭。

さて、三倉沢がある加藤谷川への下降だが、流石山と大倉山の間にある沢筋を下るのが一番短いコース。
"登山大系"にも『下降に問題無い』と書かれているが、今回はガスが稜線を境に湧いており、計画通りにニゴリ沢を
下降する事にした。稜線を移動すること1時間で大峠着。
快適な詰めとと思ったがこの先笹藪
稜線着。五葉の泉
登山道が交差する大峠


ここから田島側に伸びる登山道に入って1〜2分。沢筋が見え出した所で、ニゴリ沢の下降を開始する。
水は流れているものの、最初のうちはヤブ沢・・・だが途中でムキタケの群生を発見♪
この時期は、那須連峰でムキタケが大量に採れるのです!

水量がちょっと増えたかと思ったら、すぐに魚影が現れる。しかもかなり濃い。竿を出したくなる所だが、時間が気に
なり、下降を続ける。ニゴリ沢と言いつつ水は綺麗。
ここからニゴリ沢下降開始
ムキタケ群生
概ねこんな様相が続きます。魚影濃い

右岸から数本枝沢が数本入ると傾斜が増し、2段10m滝となる、6m3条8mナメなど、連瀑帯となるが、
特に問題なく下降できる。すると、右から地図にも"沢"として描かれている顕著な沢筋が入る。水量比は(1:1)。
6m3条滝
8mナメ
水量比(1:1)。右から降りてきました

ここからも平凡な様相が続く。幕営適地は至る所にあるが、明日の行動時間が長くなる為、加藤谷川本流出合まで
計画通りに進んでいく。1箇所ゴルジュに深い釜を持った6m滝が落ちていたが、左岸側にトラロープがぶら下がって
いたので利用。釣師が入っている沢なので必ず巻き道があったりする。2段多状10m滝は、右岸から小さく巻いて
下降可能。
少し行くとようやく、加藤谷川本流と出合う。 いたる所にテン場あり。時間は16時。今日の行動はここで終了
夜は、採ったムキタケとワンタンの鍋、ムキタケとウインナーの炒め物等など、ムキタケでお腹がいっぱいになってしまった。
6m滝
2段多状10m滝
加藤谷川本流/ニゴリ沢出合



二日目
6:40加藤谷川/ニゴリ沢出合発→8:17三倉沢 大岩の滝→9:57二俣(右俣遡行)→13:52稜線着→
15:26大峠→16:38林道終点→17:15ゲート着

朝からムキタケラーメン。昨日からたらふく食べてるので、お腹の中の半分以上はムキタケのような気がする(笑)

さて、今日は本命の三倉沢右俣狙い。"登山大系"によると6時間と書かれているが、"登山大系"の遡行図と地図を
照らし合わせると稜線からの標高差たった600mで6時間掛かっている模様。一体どんな沢なのか不安と期待で胸が
膨らむ。

荷物をまとめ出発。"登山大系"の遡行図が描かれてある、大倉山からの支流出合いの所まで、ニゴリ沢の出合から
水平距離にして約2.5km。この区間は難所は一切無し。(1:1)二俣を左に入ると6m幅広ナメなど楽しませてくれる。
さらに右岸から流石山西から流れ込む(1:1)の二俣、さらに大倉山北面から流れ込む(2:3)二俣が出合うと沢幅が
狭くなる。ここまでの加藤谷川本流は至る所にテン場あり。
6m幅広ナメ
流石山西から流れ込む(1:1)の二俣
大倉山北面から流れ込む(2:3)二俣

3m滝を越えると大岩のある滝。ここから三倉沢が始まる事を我々に知らせるように、立ちはだかる。この滝は大岩
の右でも左でも越えられる。我々は左を選択。この上の小滝を越えると10mの直瀑。水流左壁からザイルを出して
直登も可能かもしれないが、ここは左岸を高巻く。この10m直瀑の上に10mナメ滝が掛かっているのが見え、これも
一緒に高巻いた。大高巻きではあるが、沢から離れない位置で高巻きは可能だ。最後は懸垂無しで降りれる。
大岩のある滝(ここから三倉沢が始まります)
10m直瀑(カーソルを当てて)
10m直瀑の上にある10mナメ滝

ここから見る三倉沢は両岸が50m以上そそり立つ極悪の様相。沢床が平凡なのが救い。4m滝、多段CS7m滝は
問題無し。左岸から沢が入り込んで来る様に見え

「これが二俣か!?」

と進んでみる巾狭の深〜く悪いルンゼ。

「こんなのが二俣じゃなくてよかった・・・」
と胸をなでおろす。

すると正面に7m滝。これも直登は難しく右岸を高巻くが、高巻きも ”草付+土” であまり良くない。なんとか登って、
Takahashiさんにはザイルを出す。支点も細い潅木をまとめて支点にする感じ。そのまま落ち口に向ってTakahashiさん
が10m程ザイルを伸ばす。

「ここからは懸垂だなぁー」

との事。そして、この巻いた7m滝上で”二俣”となる。懸垂支点から見える右俣は"登山大系"に書かれている通り
55m3段大滝を掛け、非常ーーに悪い

「ど―見ても登れる滝には見えないんだけど・・・」

これで、左俣も悪かったら・・・と"敗退"の2文字が頭をよぎる。ただ、滝上には稜線が見えており、これさえ越えれば
ゴールは近い印象もあり。
4m滝
越後の難しい沢を思い起こさせる7m滝 (カーソルを当ててください)
高巻き中から見た55m3段大滝


とりあえず。細い潅木とハーケンで支点を取り懸垂で二俣に下りる、支点は今ひとつ安心できる物ではなかったが、
全体重を掛けることも無かったので、怖い思いはしなかった。 この二俣は井戸の底にいるような雰囲気で長居はしたく
ない。 左俣を覗くと3つ滝を掛けていたが、こちらはV+のグレードで登れそうでホッとする・・・

「とりあえず、折角なので、右俣の滝を見てダメだったら左俣行きましょう」

と言う事に・・・

さて、本命の右俣だが、二俣からすぐに3段滝になっており、下段の8mは、頭から水を被らずには直登はまず不可能
なので、左俣最初の6mを上がって右俣に移動する。右俣への下降はクライムダウン可能。
さて問題はこの中段35m・・・。。。(@_@;)
巻きは右だがこれも容易な巻きとは言えず、ザイルは要。60m程度上がった尾根まで出ないと高巻けない。
二俣から見た左俣/右俣(55m3段滝下段) カーソル当てて 左俣を一段上がった所から左俣 右俣55m3段中段(クリックして)


滝をよく見ると、ルートは水流左。20m上がった所に1ポイント難しそうな箇所があるが、そこをクリヤー出来れば
なんとかなりそうと判断。手を合わせてからリードする。
岩は、見た目以上に安定。下から見た難しい1ポイントまでは、飛沫を受けながらの4級の登りとなる。今回私が
ハーケンを持ってくるのを忘れたため、大沢で抜いたクロモリとTakahashiさんが持ってきた4枚の計5枚しかないので、
17、8mあがった核心と思われる下までノービレイ上がり、安定したところでハーケンを打つ。さらに1m上の難所の
すぐ下でさらに1枚打つ。ここからスタンスは小さくなり。安心して足を置ける所は無くなる。ガバホールドを期待したが、
全く無い・・・
小さいスタンスに右足を乗せ、右手に草を持つが頼りない。根元ごと上から押さえ込んで握ると意外に動かなかった。
左手は水平な岩面に指の第2関節までが乗っかる感じ。ここで気合で両手で体を持ち上げ左足を上の段に乗せようと
したが、左足が滑る!!!

幸い両手で体を支えられた。"お願いっ!!!" と心で叫び、左足を曲げ、ひざを押し込む。

上がれた・・・

この1ポイントは完全に4級を越えてます。今から考えると。もう一発ハーケン打って足を掛けて上がれば少し容易になるかも
しれません???

あとは3級レベルでそのまま水流左を登り、中段を終了。上段の6mは登れそうだが、
頭からシャワーとなり。、左から小さく巻けそうだったのと、支点となりうる潅木があったため、左に2m上がってピッチを
切った。
行きます!
核心直下でハーケンを打つ(ここから1.5mが核心)
突破♪写真の所は3級レベル

セカンドのTakahashiさんは、核心部は「全然ムリー!」とゴボウで突破。そのまま上段に突入しようとしたが、
やはりマトモに受けるシャワーを嫌がって、左の草付を2ピッチ目として登る。
55m3段滝の上は間髪入れずに10mCS滝となっており、Takahashiさんが2ピッチ目終了した所から滝に近づき、
滝の上部のみ水流左を直登して越えた。
3段55m最上段
10mCS
10mCS滝から下を見る(カーソルを当てて)

これで沢はぐっと開けるのかと思ったら大間違いで、V字谷の形相。両岸は草付なので変な滝が出てくれば巻きも
苦労しそうだ。案の定、出てきた5m滝は右から”草付+泥”の壁を登って小さく巻いて越えるが、足場が安定しない
ので緊張が走る。高巻いてる途中で、さらに奥に5mトイ状10mトイ状と、嫌〜な滝が続いていた。

5mトイ状は下部が登れず、水流左の壁を潅木を掴み強引に3m直上。ここで瀑心に移動し、クラックに左足を
突っ込んで越えようとしたが、ホールドも乏しく、さらに足が決まらず、2度目のスリップで落ちてしまった。
幸い左ひじを軽く打っただけで大事に至らず一安心。仕方なく次の10mトイ状も含め右岸を巻く。
5m滝(カーソルを当てて!)
高巻きから見た5mトイ10mトイ
5mトイ状アップ
左から強引に取りつくが・・・

さらに両岸草付泥壁のX字谷は続く。。。4mトイ状は両足突っ張りで直登。5m滝も割と容易。5m2段CSは岩の右から
越える。(2:1)二俣は水量の多い左に入る。沢の様相は相変わらずV字形状。4mトイ、5mを越えると小滝をはさんで
4mヒョングリ。これは直登が出来ず、最初右を小さく巻こうとしたが、足場が悪く草付も不安定なので断念。
私は10m程度戻って大きめに左岸を巻く。takahashiさんは左から小さく巻いたが、結構苦労したようだ。
この手の草付泥壁の高巻きはバイルが有ると楽かも。12本爪のアイゼンも欲しいところだ!(笑)
支点が全く取れないので、ザイルは出せず。この様な”草付+土壁”の高巻きが出来る事が、この沢を遡行する必要条件となるでしょう。
4mトイ状
(2:1)二俣
高巻きが渋い4mヒョングリ

4mヒョングリ滝上の7m滝は快適に直登。すると今度は(3:1)二俣。水量の多い左に入るとナメ床になり、沢筋が左に
直角に曲がった所に滑り台のような40mナメが落ちる。今までの極悪の様相を考えると、この滝は笑えた!!!
ただ傾斜は強く、ギリギリ直登可能な感じか・・・一旦落ちると結構痛い思いをすることになりそう。よく見れば細かい
スタンスがあり、Takahashiさんは完全直登。私は途中まで行ったが、怖くなって右に逃げた。
(3:1)二俣
40mナメ
40mナメを登る・・・途中まで・・・(^^ゞ

40mナメを越えるとようやく源頭の様相。最後は背丈ほどの蜜笹藪を10分強漕いで稜線に到着。時間は14時前。。。
日が長ければ、井戸沢の下降で下山するつもりだったが断念。大峠まで進む。

大峠から三斗小屋温泉方面に下降していき、峠沢を横断直後、地図には掲載されていない三斗小屋宿跡への
ショートカットルートの道標があるのでこちらを利用。三斗小屋温泉の陰謀か、この道は草刈が行われておらず。
数箇所戸惑う事があるが、やはりこのルートの方が圧倒的に早い。峠沢や中ノ沢も下降可能であるが、やはり時間が
遅いので登山道をそのまま下る。ちなみに三斗小屋温泉は、日帰り客には本当に冷たく、入浴は不可。
源頭の様相
三倉沢全容(カーソル当てて)
三斗小屋宿跡へのショートカットルート

ショートカットルートは下りきったところで、最後中ノ沢の右岸に移動。井戸沢を横断すればすぐに車道に出る。
車道を40分弱進んで基点のゲートに真っ暗になる前に到着した。

P.S:大沢左俣は沢慣れした人が1人いれば、問題ないでしょう。ちょっと不安な場合は右俣の方が簡単です。
   ただ内容は圧倒的に左俣を奨めます。40m大滝は、途中でピッチが切れるのでザイルは30mで足ります。
   幕営適地はナメ床帯に入るとありません
   一方、三倉沢右俣は滝の直登はおろか、高巻きが渋いので全員が沢慣れしていないと難しいです。40m以上ザイル要。
   唯一のエスケープルートは左俣です。アプローチは今回ニゴリ沢を利用しましたが、"登山大系"によると流石山、
   高倉山北面の沢を下降してもOKのようで、それぞれ加藤谷川出合付近にテン場が見つかると思います。
   三倉沢に入ると幕営適地はありません。

大沢遡行図  ニゴリ沢、三倉沢右俣遡行図  概念図


沢登りトップへ    その空の下で。。。トップへ



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