2007年9月22,23日 越後水無川オツルミズ沢

メンバー:現場監督さん、ひろた
装備:ザイル8.5mm×50m、カム、靴:フェルト
遡行図はこちら、概要写真はこちら

現場監督さんと"オツルミズに行こう"と立案してから2〜3年。なかなか日程や天気の都合が合わず、
今回ようやく実現することになった。"オツルミズ"と言えば"困難さ"、"登り甲斐"共に第一級のルートと紹介され、
自分にとっては、いつかはチャレンジしなければいけないと思っていた沢。現場監督さんという強力なパートナーもあり、
比較的不安も少なく当日を迎える事ができた。

初日
6:57オツルミズ沢入渓→7:35カグラ滝下→8:00カグラ滝上→10:42サナギ滝下→
12:23サナギ滝上→13:55 80m大滝下→14:50大滝上→15:15行動終了

現場監督さんとは前夜上毛高原駅で待ち合わせ。駅近くの道の駅で仮眠。

水無川沿いの林道は整備され、十二平まで車で入れるようになった。ただ、越後三山森林公園駐車場から
オツルミズ沢出合までの道が荒れており、CR-Xだと下をする箇所も有り。オツルミズ沢出合を過ぎて100m進むと
車5台は置ける駐車スペースが有る。我々が到着すると同時に3人パーティがオツルミズに入っていった。
 我々が入渓準備をしていると現地のオジサンが近づいてきて、カグラ滝下に出る巻き道を教えてくれた。このオジサン
が草を刈ったらしい。テープがぶら下がっているとの事。さらに、カグラ滝の上に出る道もあるそうだ。
いったいこのオジサンは何者なのだろう・・・?

いざ出発♪ 林道を少し歩くと確かにテープがあり、巻き道が付けられている。一応せっかくなので、この道を利用せずに
出合から入渓する。
最初の10m滝はどの記録を見ても"難しい"と書いてあったが、今日は水量が少ないので左から難なく登る事が
出来た。まぁ確かに滑りやすいが・・・
しかし、次の3mは釜が深く左から小さく巻くが、かなりの腕力勝負。なんとか突破すると深い淵になっており10m
以上泳がないと次の滝に取り付けそうも無い。。。結局左岸を高巻くと、オジサンが付けたという巻き道に出る。
結局この巻き道を利用したのだが、ボルトにクサリが掛けられていたりして結構良く出来ている。オジサン凄い!
最初の10m滝
3m滝左から巻く
うーん泳ぐ気になれない
オジサンが作った巻き道

この巻き道を利用するとカグラ滝2段80mの上段に出る。最初のゴルジュを巻いただけなのにもうヘロヘロ。
先行した3人パーティも滝の上部に取り付いているのでチョット休憩。

カグラ滝の直登はセオリー通り水流右。思った以上に斜度は緩いのでフリーで行ける所まで行く。最上部で潅木帯
が水流側に伸びている所があり、通常はここに逃げ込むらしいが、欲をだして水流側に近づくと確かにスタンス/ホールド
共に細かくなりかなり渋い。もちろん水流側に近づく人は誰も居ないので残置も無い(笑)

「どーお?」
「う〜ん・・・やっぱこっちは渋いっすねぇ」

と状況は完全 "リポD登攀" で、こんな所を他のパーティに見られたら、"アホかあいつら!"と言われそう。。。
細かいスタンスに足を置きファイト一発でフリーで突破した。セオリー通りに行けばV級+。水流に近づくとW級。
カグラ滝80m。近くで見ると寝てた。カーソルを当てて♪
この辺は3級+。ここから先、水流寄りが4級になる。
あら!結構高いわねぇ〜!

カグラ滝を終了すると5m、4mと小滝が続くが、釜が深いので水流右や左を小さく巻いて進む。泳げば取り付ける
滝も少なからずある。小滝を幾つか越えると巨岩帯。両岸は高くそびえ、水無川特有の深い谷を形成。威圧感は凄い。
遠くにはサナギ滝が見える。雪渓が多い時にはここらあたりも雪渓が残る事がある模様。ただここにグズった雪渓があると
高巻きは大変困難になるだろう。
カグラ滝上の小滝。釜が深い
ここで雪渓が多いと通過困難
ゴルジュを通過する
巨岩帯。サナギ滝が見えた!

しばらく進むと沢筋はクランク状に曲がり、激狭ゴルジュの中を多段40mの滝を落としている。あまりにも狭いので
ゴルジュというよりはルンゼと言った方が良いかもしれない。
ここは水流沿いを突破できるのかは下からでは判り辛い。仕方なく右岸を高巻く。。。高巻き途中から見る沢の様相は
やはり悪く、ドーム状にえぐれた所に15m直瀑がかかり、沢沿いに行っていたら脱出不可能になっていたかも・・・
この右岸高巻きだが、15m直瀑右岸に広がるスラブに出たかったのだが、良い下降ポイントが見つからず、潅木帯の中へ
と巻き上げられる。
3人パーティは潅木帯の中を延々高巻いていったが、我々は途中で15m強の懸垂下降で降り、スラブ上部の
草付リッジを水流に向けて慎重にトラバース&下降していく。沢に戻った所は15m直瀑から80m程度上流だろうか。
ここには25m4段ナメがかかっていたが水流右を直登出来ると判断、現場監督さんに合図を送り。
監督さんにも降りてきてもらった。
多段40m。ここから右岸高巻き
15m直瀑これは登れないだろう
この辺りへ目掛けて降りる
草付きリッジの下降

25m4段滝は最後の4段目は左岸を小さく高巻く感じ。その先も釜を持ったナメ滝が見えるのだが、沢床には
降りられないのでそのまま左岸を小さく高巻く。途中、残置シュリンゲも発見したがザイル2本無いとこの位置から
下降できないので、もう30m程左岸を進んだ所からノーザイルで沢床に降りた。右岸をひたすら高巻いていた
3人パーティは、ここから見える30mナメ滝の下に丁度出て来た所だった。

30mナメ滝は水流左をフリーで直登。だんだん傾斜が立って来るので、怖かったら左の潅木帯に逃げると良いだろう。
完全直登ならW級―といった所だ。
25m4段滝
釜を持ったナメ滝
沢床に降りる。奥がサナギ滝
沢床に降りる現場監督さん。
30mナメ滝 奥はサナギ滝

ここくクリヤーして、小滝を二つほど超えると、ハイライトのサナギ滝の下に出る。
水量が少ないからだろうか?他のどの記録を読んでも"物凄い"と書いてあるので、『極悪非道の滝』と思って
いたのだが、思ってた印象より大した事無い感じ。現場監督さんも同様の印象だったみたい。。。
他の記録で、サナギ滝の下にサナギ滝に似た滝があると読んだ事があり

監督さん:「これはニセサナギ滝なんじゃないの!?」
HIRO:「いや、いくらなんでも本物かと・・・?」

先行していた3人パーティにも聞いちゃったりして(笑)
持ってきたトポの写真をみたらやっぱりサナギ滝だった!!!

このサナギ滝、最初最下段のドーム状からはやはり取り付けない様で(近づいて見た訳ではない)、右岸手前の
潅木帯から取り付く。皆ココを登っているのか、なんとなくだが踏跡っぽくなっていた。この踏跡2手に別れ、
右の水流の方に向ってトラバースすると草付に変わりドームの上に出る。
サナギ滝200m カーソルを当てると登攀ラインが出ます
サナギ滝ドーム上にて。カーソルを当てて!

ここから水流左(瀑心から15mくらい離れた所)の乾いた草付をフリーで直登V+。登り易いところを選んで直上して
いくと奥行き2mはあるテラスに導かれる。
草付きをガンガン登る わ・た・し
とにかくイケイケです♪
テラス到着!

100m以上登っただろうか・・・ ココから水流に向ってバンドが伸びており、暑いので荷物を降ろして水の補給と
ついでに釜もあるので半身浴(笑)。上を見ると何段目に当るのだろうか、ここから見上げる10m程の区間は水流沿いを
登れそう!

「監督さん!ここ直登出来そうなんだけど♪」

折角なので、他の記録とは違うルートで登ってみる。最初はシャワーを逃れ水流右に取り付いてみたが、
滑っていてホールドも少ないので、現場監督さんに瀑心シャワー突破にTRYしてもらう!

「ウッヒャぁぁー!」

という現場監督さんの声にテラスに上がってきた3人パーティも呆れて見ているようだ。
ココはやはり瀑心から取り付く方がホールドがあり安全。そのまま水流右に抜け、0mくらいの滝を突破する。
ここで滝の水流は二手に分かれており右の水流はやはり厳しく左の水流横断で本来のルートに戻る。
浮いた感じに見える大岩に足を乗せるのだが意外と安定していて無事本来の水流左のルートに戻れた。
ここからさらに直上するとノッペリした大岩に残置シュリンゲがぶら下がっているのを現場監督さんが発見!
どー見ても沢靴では登れそうも無い垂壁。。。
そういえば複数の遡行記録で"サナギの落ち口に懸垂下降で降り立つ"と書いてあったが、ココを登っていくのだろうか?
まさに謎の岩壁だ。
10m滝。カーソルを当てて!
サナギ滝でシャワー
カーソルを当てて
監督さんも突破!

二人とも「これは無いよね!」と、ここから水流に向って斜上、細い潅木を掴みながら水流に向ってトラバースすると
最上段の滝を残すのみ。この最上段の滝の3m程左に、多くの記録に書かれてある"凹角"があった!
 凹角基部まで5mの草付きを登るが、結構ここも微妙なので注意(残置有り)。凹角が始まるところででザイルを出す。

ここはやはり現場監督さんにお願いする(笑)
凹角は縦に6mほど伸びており、残置ハーケンが支点含め3個。凹角を上まで登り切るのではなく3m程登った
所から左に移動するのがポイント。"監督さん良くそのスタンスを見つけました"
左に移動できたら後は3級レベル。上がり切った所でサナギ滝が終了する。
200mの大滝の上からの眺めはさすがに凄い。六日町の方まで見渡せる。サナギ滝突破は順調だったが
さすがに1時間40分くらいかかった。
他の記録ではココにテラスがありビバークした記録を多数見るが、あまり良い所は無さそう。
最上段の滝へトラバース
クリックして下さい!
最上段の滝と凹角
カーソルを当てて下さい!
凹角拡大図
カーソルを当てて下さい!
現場監督さん突破!
サナギ滝上から

時間は12時半前。先に進む。サナギ滝のすぐ上は小滝が2、3出てくるが釜が深く、泳いで取り付く。へツって突破
できる所もあるが、必ず1箇所は泳ぐ羽目になるので覚悟を決めた方が良い。両岸とも高巻きは草付で悪い。
次第にゴルジュの幅は狭くなり両岸の壁も立ってくる。誰もが不安に思う所で右岸の高巻きを考えたくなるが、
行ける所までゴルジュ内を通過した方が早い。後で判ったが3人パーティはここを右岸大高巻きしたようで、かなり
時間が掛かった模様。 狭いゴルジュを進んでいくと左岸の岩壁が滝上まで被さる6m滝で行く手を阻まれる。
ここで右岸の高巻きを開始。高巻き開始地点に残置シュリンゲあり。
この高巻きは小さく巻く。ゴルジュ内を見下ろすと淵&釜の先に1つ二つの小滝と奥に12mの滝が見えた。
この12m滝の上まで右岸を高巻く。
サナギ滝上はゴルジュ
かなり悪い様相
岩壁が滝上まで被さる6m滝
奥の12m滝まで右岸を巻く

降りた所は河原状だがすぐ先にまた泳いでとりつく2m滝。取り付いてからも突っ張りで登らないと上にあがれない。
高巻きでかなり腕の力を使ってきたので、あまり腕にちからが入らず。両足とザックで突っ張って突破した。
この辺りから遠くに80m大滝が見えてくる。
次の3mハングは左を小さく巻く。その先にも登れそうも無い5m滝があるのでこれも右岸草付を小さく巻く。

ようやく80m大滝下に出た。 両岸のスラブが凄い!!!ここから見る大滝はサナギ滝以上にオツルミズの
ハイライトといっても良いだろう。
さて、この大滝の直登だが、右壁を見ると下段落ち口に上がっているバンドがあるのでそこに出るようにルートを
見出す。登攀レベルはVを越えない。容易に下段をクリヤー。
80m大滝全景 カーソルを当てるとルートが出ます!
下段の登攀

このまま上段も水流右をフリーで直登するが、ちょっと渋めになってくるV+〜W
右壁が少しせり出してくる所を軽いジャンプで水流を跨たいだが、このまま右壁を行ければそちらの方が簡単。
ここから数m上がって再度水流の右に横断するところが先週のオタキノ沢13mナメの斜上バンドの突破を彷彿
させるような渋さがあった。なんとか突破でき、監督さんにはザイルを出そうとするが、近くにリスが無く少し上に
登って

「ザイル投げますけど、受け取れそうも無かったらそのまま水流左行ってもらえます?」
「あっ!じゃOK,OK!このまま水流左行くわ!」

と監督さんは水流左を直上。
私の位置から水流右はもう3級レベルで何の問題も無いのだが、ここから見る水流左は全体的にのっぺりした
印象で1ランク上の印象。

HIRO:「大丈夫ですかー!ザイル出しますよー」
監督さん「大丈夫!、残置も結構あるわー!」

と水流を挟んで右、左と別れて直上。上部20m残す所は水流右の方が簡単かつ水流の横断も可能で二人とも
右を直上して大滝の上に立った。振り返ると、3人パーティが大滝手前のゴルジュを右岸潅木帯の中を大高巻き
しており苦労しているようだ。
 ここで監督さんがAU携帯を取り出すとアンテナがしっかり立つようで、天気どうなるかなーと安藤さんに電話を
入れるが残念ながら留守電。。。
上段を登る
再度水流の右に横断するところ カーソルを当てて!
水流右を最後まで行く

時間は15時前。 ここで急に雲行きが悪くなり先を急ぐ。大滝の先、深い釜を持つ小滝を2つ経つると左岸に良いテラス
を発見♪ 今日はここで行動終了。

タープはテラスの壁を使って一段下に張った方が張りやすいって事で水流すぐ横の一段下に張ったが、雨がポツリと
振り出してくる。 それでもメタで一発着火!
結構なファイヤリングまで行ったが、服を乾かす間も無く怒濤の夕立・・・

「監督さん、焚き火が鎮火しました!」
「いやぁの滝凄いねー」
「荷物まとめますかぁ」
「この焚き火が流されたら撤退ですなぁ」
「明るいうちに撤退しておきますか」
「そうですね(^^)ゞ」

と結局1段上のテラスに移動(避難)。タープを張りなおす。30分もすると雨は止んでホッとする。
3人パーティは大丈夫だったのだろうか?夜中幸いにも雨は降らなかったが、あまり寝付けなかった・・・
最初はここに張って
たき火も着火
通常はこんな水量
30分の夕立ちで・・・



二日目
6:45遡行開始→11:45駒の小屋→12:08駒ケ岳山頂、12:15下山開始→15:00十二平→
15:25オツルミズ沢出合駐車スペース着

5時起床、核心は全て越えたが、トポを見るとまだここから稜線まで6時間はかかるらしい。冷えた体を焚き火で
温めて遡行開始する。昨日の大増水が嘘の様に穏やかな流れになっており安心。
 最初の12m滝は左岸草付を高巻く。結構傾斜が強く朝から緊張させられる。次の10mナメ滝も登れないと判断
して一緒に巻いてしまう。次の10mナメ滝は水流左を直登。この先は10m級の滝も現れるが、簡単に小さく巻く事
が出来る。
朝一の高巻き(下は10mナメ)
10mナメ。水流左を直登
このくらいの滝はポツポツ出てくる

ちょっとした広河原風になったところで雪渓が現れた。ここは良いテン場になるだろう。
ただその先は再び両岸が立って来て、崩れた雪渓が沢を埋めていた。ちょっと雪渓の上を歩いて見るが
やはり困難と判断。右岸の小尾根を高巻く。高巻き途中で眼下に直登不可能な15m滝と今にも崩れそうな
巨大雪渓が見える。
この15m滝はこのまま右岸を巻くしか手立ては無いが、樹林帯の中を大高巻きすると時間がかかるので、
少し降りて草付きをどんどんトラバースしながら巻いて行った。
15m滝の先も10m滝が有り一緒に巻いてしまう。今日の核心はこの草付きのトラバースだったかも?
川幅広がる。オツルミズでは珍しい景観
雪渓を進んで見るが突破断念
15m滝。右岸草付きで高巻く

沢に下りて、2段6m、8mトイは左を小さく巻く感じ2段8mは水流左を直登。2段15mは右から。とにかく前に現れる
小滝を次々突破していくと沢は右に折れ、右岸の尾根はすぐ近くになる。25mナメは今までの苦労を癒してくれる
感じ。振り返れば雲海の上に越後の山々が顔を出していた。
 沢もゴーロ状になりここから長かったが、ようやく遠くに稜線を歩く人の姿を発見。水場の看板が現れた所で
遡行終了。20mも上がれば駒ノ小屋だ!

一般登山者がごった返しているのでそのまま100名山の越後駒ケ岳に登っていく。
25mナメ
振り返ると絶景♪
100名山 越後駒ヶ岳

下りはクシガハナ経由。急こう配の登山道は結構滑りやすく危険だ。オツルミズを成功させてここで怪我はしたく
ない。駒ケ岳山頂から十二平まで2時間45分。途中モチガハナ沢で焼けつく体を冷やしすっきりしたところで
駐車場に到着した。

p.s:オツルミズ沢はカグラ滝、サナギ滝、80m大滝の突破が注目され、確かに3級レベルをノーザイルで登れる実力を
   要求されるが、それ以上に高巻きのルートファインディングが遡行時間/内容共に大きく左右する。
   高巻き中、草付きのトラバースを難なくこなせれば1泊2日で抜けられる事が出来るがこれを嫌うと相当の大高巻きになり、
   沢に下りるのも容易ではない。今回雪渓は皆無に近かったがサナギ滝より下に雪渓が残っていると両岸が切り立っている
   だけにかなりの苦労を強いられるはずだ。
   また雨の増水も急激なので、天気予報で雨マークがついたら計画を延期した方が無難でしょう。
   テン場は総じて良い場所が無く、遡行中我々が幕営したポイントが一番BESTだと思います。

現場監督さんの遡行記録にGO!

オツルミズ沢遡行図

山/沢登りトップへ   その空の下で。。。トップへ



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