2007年10月6,7日 只見川大白沢シロウ沢ワカゴイ沢

メンバー:きむひろさん、ひろた
装備:ザイル8mm×30m、靴:フェルト
遡行図はこちら

大白沢流域はかなり以前から行きたかった流域。ようやく今回実現。通常は下山ルートは鷹ノ巣に下りるのだが。
車2台だと雨池橋に1台デポしておくと。"たまご岩"から延びるルートで中ノ岐川林道にでて4時間かからず下山できるとのこと。
今回はこのルートであわよくば1泊2日で抜ける計画で遡行する。


前夜アプローチ(CR-X)
18:28自宅発→21:25桧枝岐→21:57鷹ノ巣→22:12恋ノ岐橋→22:22雨池橋

きむひろさんとの集合場所は雨池橋。栃木県側から雨池橋に向かう場合。コンビニは塩原に1軒、
塩原をすぎてR121に1軒あるだけ。ガソリンスタンドは夜間は全くないので注意。携帯はソフトバンクだと、
圏外がほとんどだが桧枝岐村に入るとしっかりアンテナが立つ。もちろんここから先は全く通じない。
 駐車スペースは鷹ノ巣に10台以上。恋ノ岐川出合に3台、雨池橋に4台と行った所。

初日 
6:58砂子平発→9:30クロウ沢/シロウ沢出合→10:25大ハゲ沢出合→13:30"80mゴルジュ"入口
(事故発生)→17:30幕営適地にて行動終了。

朝起きるときむひろさんの車が横付けされていた。15分前に到着したとのこと。雨池橋に車をデポし、
砂子平に移動。
R352の只見川に掛かる橋から福島県側に約1kmくらい進むと右手に薄緑の屋根&白い壁の家が見える。
この家の裏側から"籠の渡し"への踏み跡が付いている。車は道路沿いに4台程の駐車スペースが近くにある。
 
"籠の渡し"は現在でも問題無く使用可能。結構腕力が要る。もちろん平水なら沢を歩いて渡る事も全く問題無い。
"籠の渡し"からはそのまま大白沢右岸の踏跡を利用。沢に近づいた所で入渓する。しばらくは平凡な様相。
40cm級の魚を2匹きむひろさんが見つけた!(魚影発見はこの時だけ)
この家の裏から踏み跡が続いている
籠の渡し
大白沢の様相

沢は一旦ゴルジュになり、左壁をヘツルのだが、いきなり滑ってドボンしてしまう。
5m滝をそのまま左から越えると、また平凡な様相。再びゴルジュっぽくなるが、突破に問題無し。右岸から顕著
な水量の2段10m滝で池ノ沢が出合う。その先大釜を持った3段4m滝を越えるとクロウ沢/シロウ沢の二俣になる。
シロウ沢にある鏡餅の形をした岩が目印。ここまで2時間半。
最初のミニゴルジュ
2度目のゴルジュ内
池ノ沢出合
クロウ沢/シロウ沢出合 この岩が目印

シロウ沢に入って最初の4m滝は左から、つぎの2条2mの寝た滝等特に問題になる所はない。倒木で隠れた4m滝
を越すと波状にうねったナメ床が広がる。この先顕著な二俣が大ハゲ沢/ワカゴイ沢の二俣。
大ハゲ沢側は5m3条滝がかかる。ワカゴイ沢側は側壁は高くないがミニゴルジュ地形がここから延々と続く・・・
最初のミニゴルジュを抜けると右岸に砂地があり良いテン場になるが、増水には耐えられない。
波状ナメ
大ハゲ沢(左)出合
ワカゴイ沢最初のミニゴルジュ

3〜4m程度の小滝を幾つか超えると、見事な12m3段滝。右から取り付いて、最上部は左から潅木を掴んで小さく
巻いて越える。滝上は相変わらずミニゴルジュ地形が続く。
右岸壁から水が滴り落ちる滝が入り、ミニゴルジュを進むと8m滝。直登はムリで右から小さく巻いた。
左岸から入る立派な15mナメ滝を見ると、長い淵を持った4m滝。延々泳ぐ気にはなれないので、右岸潅木帯に
入り始めて高幕きらしい高巻き。とは言っても10mくらいしか上がらないが・・・
12m3段滝
8m滝
左岸枝沢15mナメ滝

左岸から10m滝で落ちる細流を過ぎると、いよいよ通称"80mゴルジュ"と呼ばれる所に到達。
 "80mゴルジュ"内には3つの滝が有り、一つ目はどの遡行記録にも載っている残置シュリンゲが多数ぶら下がって
いる3m滝。ここは確かに残置が豊富。たしかにシュリンゲに身を預ける形にはなるが、スタンスもしっかりしいて
全く問題はない。
80mゴルジュ入り口
最初の3mは残置豊富
スタンスも十分

問題は2つ目の巨岩で構成された5m滝で、釜も深く泳いでも滝には取り付けないためルートは右壁のみ。
だが壁全体がのっぺりしている。胸まで浸かって右壁に取り付く。ここから5m上がり落ち口へ向ってのトラバース
が始まるのだが、残置シュリンゲは2本で間隔も遠く、さらに奥の残置は3mmシュリンゲ・・・。
"ここは、きむひろさんには厳しいかも"
と思い、トラバースを開始する前に(左下写真にカーソルを当てると出てくるA地点)ザイルを出す。細かいスタンスを拾い
ながら3mmスリングに手が届いた。
太いシュリンゲに架け替え様としたが、古い切れたテープがハーケン穴を小さくしており不可能。3mmスリングを
掴みながらトラバースを続け、落ち口近くで最後はジャンプしてクリヤーする。(飛ばなくてもクリヤーできる)

きむひろさんは、右壁に取り付くところで既に2回落ちてゴボウで右壁に取り付く。そのままトラバース地点まで
ザイルを掴んであがってきた。
ここで、落ち口から3mmシュリンゲまで手が届くので3mmシュリンゲにもカラビナを掛けザイルを通してトラバース
を開始してもらう。きむひろさんは最初の残置をつかみ、トラバースを開始するも。3mmシュリンゲに手が届く前に
断念(?)し、「ゴボウであがる」と言って、自ら落ちてしまう。。。
落ちたといっても、ちゃんと大岩上に立てるようで、問題無しの様だった。
80mゴルジュ内2つ目の5m滝(カーソルを当てて)
左図A地点にて(カーソル当てて)
彼はここでトラバース断念

 しかし、ここでゴボウで上がろうとしたが、上がれないとの事で、落ち口上にハーケンを打ち、シュリンゲを
伸ばして(ハーネスにも繋げた)あがってもらおうと試みたが、これもダメ。ちょっと間を置いて再び3mmシュリンゲ
に向ってゴボウするも1m上がった所で足を滑らせ落下!
「大丈夫かぁー!」
「・・・」
ザイルを固定し、様子を見に行くと瀑心のなかで仰向で横たわっているではないか
とにかく助けないと!と降りれる所を探したら、大岩の右側に

"なんだあるじゃないか!"

急いで降りて救助に向う。降りたところは安定していたので、ザックをつけた状態なので重かったが渾身の力で
引き上げ、とりあえず顔を瀑心から離す。
「大丈夫か!しっかりしろ!!!」
「・・・」
でも口は動き、手も動いている事を確認。
「足折ったのか」
「・・・大丈夫・・・」
「とにかくザックを外せ」といってベルトを緩めなんとか外して&ザックを置く場所も偶々あった。
彼はシュリンゲとザイルで繋がれた状態で、ザイルのテンションが掛かっているため、
身動きが取れない。ただ、仰向けの状態から4つんばいでうつ伏せの状態になれたので、直接顔に水が当らない
ようにして、

「今ザイルを緩めてくるからまってろ!」

とザイルを50cm程緩めて戻ってくる。ザイルは外れ、シュリンゲも外れる。
きむひろさんは立ち上がれたので、一段上がってもらい。先に彼の荷物を上に上げた。そして私が降りた所から
彼を引き上げる事に成功!

きむひろさんに幸い怪我はなく、水を大量に飲んだとの事。長時間水を浴びていたので、お互い全身の震えが
止まらない。(きむひろさんは恐怖でも震えていたようだ)
でも、ここはまだ80mゴルジュの中でじッとして居ても体が温まるはずがない。そして"80mゴルジュ内"3つ目の
10m滝がまだ控えている。15分くらいその場で震えながら自分はロープとシュリンゲの回収を済ませ。
次の滝の様子を見に行く。落ち口で濡れるが3級レベルだ
「きむひろさん、とりあえずここは脱出しないと」
「・・・・」
普段から、あまり声を出さないきむひろさん、意識はちゃんと有り、2本足で立っているのだが、どうしたいのか、
どうして欲しいのかが私に全く伝わらない。彼が言ったのは脱出直後に「水を飲んだ」「ちょっと休憩させて」の二言だけ。
もちろん15分以上は休んでいる。とりあえず、ここから右壁を経ツって10m滝の下へ彼の荷物を移動、おくれて、
キムヒロさんも移動してきた。10m滝は取り付いてみると容易。滝上で支点をとり、懸垂。彼の荷物を持ち上げ、
キムヒロさんはプルージックで上がってきてもらった。ここで、後続パーティ(5人組)が2つ目の滝に取り付いてきた。
トップがフリーで登り。メンバーのザックを持ち上げ、メンバー全員がフリーでクリアーしていた。
 いまさらながら、それを見た時点で、荷物を先に持ち上げる方法もあったんだ!と自分の選択肢の乏しさを
感じた。 
80mゴルジュ最後の10mを登る
空荷でフリーで突破の別パーティ

(帰りの車で気付いたのだが、先にザックをあげておく方法もあるが、そうすると、きむひろさんにはフリーでトラバースを強いる
事になる。どちらが良かったのだろう???
しかし、そもそも彼がトラバースを断念し落ちた後で、ザックだけ引き上げておけば、シュリンゲを出した時に上がれたかも
しれないし、自分が救助に向かう為に降りたルートを事前に気が付けばこんな事に成らなかったはずだ)

80mゴルジュは終了したが、残念ながら天場はなかった。時間は16時10分。きむひろさんの体の震えが止まら
ないので、僅かな撒きを集めて焚き火をする。
ここで5人組パーティーと挨拶を交わし。先に行ってもらった。
ここで30分ほど暖をとって私は完全回復したのだが、彼の震えは止まらない。
「さむいのか?」
「・・・・」
「ほかに着るものは?」
「フリースが1枚」
「それ着たほうが良いんじゃないか?」
「・・・・」
「手かじかんでいるの?」
「・・・・」
黙っていては、俺には何もわからない。フリースを出そうとしない所を見ると寒くて震えているのではないのか?
とにかくここでは幕営出来ないので、彼の荷物を軽くして、火を消し先に進む。彼が火を消すのを手伝う所をみると、
ある程度精神的には余裕があるのだろうか?
 ここからも沢は淵になっているので右壁をへつるが、きむひろさんのペースは牛歩の歩み。
危険ではないので、「先行って、テン場さがしてくる」といって先に進む。
するとすぐ先に8m滝が行く手を阻む。右岸に砂地は有るが、落石の危険がありここ幕営することは出来ない。
右岸土手にあがると、先にい行った5人パーティーが8m滝上で幕営しているのが見えた。
"とりあえずこの滝を越えなければ・・・"
しかし、この滝は直登不可能で左岸の高巻きがmust。。きむひろさんに登ってもらうしかない。
 きむひろさんもここで一頑張りして、何とか滝上に出た。先行パーティが1箇所テン場を空けてくれていた。感謝!
実際テントを張った場所はその1段下に張ったが、焚き火も充分出来た。。。
きむひろさん、焚き火にあたっても、ブルブル振るえていたが、寒さで震えているわけでは無い様だ。ビールも
2缶飲んでいたから大丈夫だろう。明日の奮起に期待する・・・
最後の8m滝。これを超えるとテン場有り

二日目
6:50行動開始→6:58 18m2段滝下→7:41赤芝沢出合→12:50稜線(平ヶ岳山頂)到着→
13:55たまご岩→15:05中ノ岐川林道→17:30雨池橋

食事中の5人組パーティに挨拶をし、お先に失礼させていただく。きむひろさんの体調は一晩寝て完全復活した
ようだ・・・

遡行開始してすぐ、ガイドにも掲載されている2段18m滝に出くわす。1段目もチョット嫌らしくきむひろさんには
シュリンゲを出す。ザイルを出して2段目に挑む。残置ハーケンは1箇所。フリクション勝負と聞いていたが、
確かに残置ハーケンから上はスタンスが無い。最低3歩はフリクションのみで勝負する事になる。荷物を背負った
まま、度胸一発でなんとかクリヤー。4級レベル所では無い。きむひろさんにはムリだったようで、ゴボウで
上がってきてもらった。 以前聞いた話によと右のルンゼから簡単に行けるということだったが、見る限りでは
やはり厳しいフリクション勝負だ。ただ右岸潅木帯に入ってたか巻く事は可能なので安心して良い。
5人組パーティのテン場
2段18m滝(カーソル当てて)
2段18m滝上から

2段18m滝上の小滝を越えると砂の混じる平凡な様相になるがこの辺りにテン場は無い。
2段7m滝は上段がハングしており左から小さく巻いて登る。赤芝沢出合は顕著。ここも大岩がゴロゴロしており
テン場所は無い。山人さんの記録によると赤芝沢に少し入って幕営したとか・・・

ワカゴイ沢の様相は変わらず狭い沢幅に水を流している。滝がどれも小さいのが救いだ。
淵も幾つか現れるが泳がないで突破できる。しばらく進むと狭い岩溝に水を落とす3段15m滝が行く手を阻む。
これは直登は不可能で左岸潅木帯に入り高巻く。特に踏跡は無かったが、丁度残置支点が有る所に出て、
8mの懸垂下降で滝上に出る。
2段7m滝
赤芝沢出合
3段15m滝

平凡な様相→小滝を幾つか越え、右岸から15m滝で落ちる枝沢を見ると、本流は幅狭ゴルジュに突入。両岸の
傾斜は非常に立っているので、ここは水線通しで突破するしかない。
最初の3mCSは左壁に取り付く残置シュリンゲとクロモリハーケンが打ってあるので利用させていただいた後に
根こそぎ頂く。
 次の5mCSは釜が深く腹まで水に浸かって右壁に取り付き、濡れた岩を草を掴んで突破する。最後の4mCS
は両足ツッパリで落ち口に近づき、落ち口から伸びている潅木を掴んで突破、幅狭ゴルジュを終了する。
このゴルジュの上も狭い沢幅だが特に問題は無し。
幅狭ゴルジュ最初の3mCS
2つ目の5mCS
3つ目の4mCSはツッパリで超える


2段10mは左壁を登るが最後一歩がホールドが無く嫌らしいのでザイルを出した方が賢明かも。二人ともなんとか
フリーで突破。
沢に日が当たりはじめ、高度を稼いでいくと2段20m(下からは8mくらいしか見えない)。これは特に問題無く直登可能。
次の8mは水流左。両岸が垂直に立ってくると奥に10m滝。一見難しそうに見えるが、取り付いてみると3級レベル。
2段10m滝。左壁を登る。
2段20m(上部は見えない)
10m滝の直登

6mナメ、3mと越えると再び10m滝。これも行けるかなぁーと思いフリーで取り付いてみたが、危険を感じ、微妙な
クライムダウンで何とか降りる。キムヒロさんは左岸手前の草付から高巻く。自分は右のリッジ利用で登ったが
こちらも悪るかった。

2段8mを快適に越えると(2:1)二俣。ここを水量の多い左に入る。ここからは水量の多い方を全て選択し、
出てくる小滝をドンドン越えていくと、4段18mナメ滝。癒し系のいい滝だ!
登れなかった10m滝
2段8m
4段18mナメ

 沢の上に被さる大岩を右から越え、10m2段滝を快適に越えると源頭の様相。振り返れば燧ケ岳、会津駒ケ岳
等の山々が見える。
最後の草付を上がるとちょうど平ヶ岳山頂に出た!
ワカゴイ沢源頭部から振り返る
山頂付近から振り返る
到着♪

さて、下りであるが、一般登山道で"たまご岩"を目指す。道標が立っているので、間違う事は無い。途中平ヶ岳沢
源頭に幕営指定地がある。
 たまご岩に向う途中でこれより先進入禁止の道標を発見!
「moto.pさん、きっとココを入ったんだろうな・・・」ときむひろさんが言う。
moto.pさんは先日恋ノ岐日帰りで、下降ルートを誤り相当苦労したらしい。
 本当の下降ルートは"たまご岩"手前200mのところで分岐する。出だし30mは木道あり。完全な登山道で
下降に全く問題なし。早ければ1時間で中ノ岐川林道まで出られる。
林道終点には水場があり、テント設営にも良いだろう。(ただし薪は無い)
たまご岩
たまご岩手前200mの分岐を入る
平ヶ岳沢横断。林道はすぐ先

ここからやたら長い林道歩き。まぁ上高地から横尾山荘まで歩くイメージと思えばよいだろう。いいエクササイズだ!
何とか、真っ暗になる前に雨池橋到着。キムヒロさんも無事到着、終了となる。

P.S:今回"80mゴルジュ"で事故はあったものの、そんなに危険な箇所はない。
   ただ雪渓が残っていると大きく遡行内容が変わるだろう。テン場所はシロウ沢に入ると少ない。
   下山は鷹ノ巣に下りるより雨池橋に降りる方が1時間以上早く、真っ暗でもヘッデンで安心して進めるし、
   林道終点でも幕営可能なので。車2台でアプローチ可能なら、雨池橋に降りるのがお勧めです。

ワカゴイ沢遡行図(クリックして)




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