2007年10月14日 谷川 オジカ沢

メンバー:現場監督さん、ひろた
装備:ザイル8.5mm×50m、8mm×30m、カム、靴:フェルト
遡行図はこちら、概要写真はこちら


谷川山系の主な沢を遡行してきたが、日帰りの沢なのに最後まで頭の隅に引っかかっていた沢が"オジカ沢"である。
遡行するのに届出が必要なので億劫な一面もあるのだが、隣のヒツゴー沢に比べると圧倒的に遡行記録が少なく、
『結構悪い』という風評を耳にしている。現場監督さんは28年前に単独入渓し大敗退したとの事。
"ミニオツルミズ"との評した記録もあったが、オツルミズ以上の不安を抱きながら当日を迎えた。

前夜アプローチ(CR-X)
18:04自宅発→20:58赤城IC通過(一般道)→21:35上毛高原駅前→21:52谷川温泉着

5:23基点駐車場発→6:25オジカ沢入渓→10:19左岸枝沢出合テン場→10:33 2段80m大滝下→
11:27二俣→13:25オジカ沢ノ頭、13:40下山開始(中ゴー尾根経由)→16:58基点駐車場着

今回は"湯テルメ谷川"を過ぎた谷川岳登山口が集合場所。行動時間が長いと予想した為朝5時出発として
いたが、携帯目覚ましが作動せず、朝4:50過ぎに目が覚める。
現場監督さんが丁度私の車の窓を叩いてくれた(^^)ヾ

天気予報をチェックしたら概ね晴れに予報が変わっていてラッキー。予定より20分遅れで出発。遅れを取り
戻そうと必死に歩き1時間で二俣に到着し、オジカ沢に入る。しばらくは平凡な様相を進むとまず最初に
9mナメ滝が現れる。いきなり悪い!水流右端に取り付くが逆層気味の岩に手も足も出ず。左から巻く。
上に上がると、水流左に古いリングボルトが3発埋め込まれていた"えっ!ここ左を登るの!?ウッソー!"
オジカ沢最初の9mナメ
右に取りつくが・・・
巻いてあがっちゃいました(^^)ゞ

 9mナメ滝すぐ上には大岩で構成された4m滝。これを越えると間髪いれずに5mナメ
この滝も水流右/左とも同じようにツルツルでかなり厳しい。巻きはさらに左の草付になるが、カムを持ってきた
ので、水流右に取り付く。フリクションゼロの1.5m壁をショルダーで現場監督さんを持ち上げ、カムを差し込み
1段上がる。ここから水流にトラバースするのだが、最初の一歩が嫌らしく。ハーケンを打ち込んでA0で成功させる。
あとは3級+で直上。セカンドの私は有無を言わさずザイルを出してもらい。ザイルを掴んでトラバースを決め
クリアーした。この滝上にもリングボルトが3発打ち込まれていた。。。
それにしても最初の3つの滝だけで50分経過してしまった。この3つの滝は纏めて左草付を巻くのが賢明でしょう。
奥に見えるのが5mナメ
5mナメアップ
ここを登る
5m滝上から

最初っからこんなんで、この先どーなっちゃうんだろう?と思ったが、滝上はナメ床で4mナメ滝で癒し系。
この上も磨かれたナメ床でいい感じ。ただ両岸が割と立っているのでちょっと威圧感がある。ナメの小滝を
通過し、4mナメは釜も深く左から、次の4mは水流右を通過。7m逆「く」字滝は傾斜が緩いので問題なし。
沢を塞ぐかのように大岩が立ちはだかるの所を左から回り込むとまたナメ床が続く。3m2条ナメは釜が深く
右壁を慎重に経つって突破。 
4mナメ
釜を持つ4mナメは左から
3m2条は右を経つる
下流部の様相

この辺りは両岸がスラブ状になり見事な景観だ!ここに3m,6mと続く多段のジグザグ滝がある。

岩が磨かれているのでこんな小滝もチョット渋め。ここもカムで支点を取ってシュリンゲを伸ばし現場監督さんに
A0してもらう。ジグザグ滝上部の6mは水流右壁を経つっても良いが、安易に右壁の上に登り直上する。
すると間髪入れずに7m滝。全体がノッペリしているため直登不可能。左の草付き壁を登る
滝上に出るとすぐ上に4mナメ滝があったので一緒に巻く。次の8m滝は右を経つる感じで進む。

見事なスラブと多段ジグザグ滝
ジグザグ滝上部の6m
8m滝

すると両岸は開け、ナメ床と両岸スラブと上部潅木の紅葉・・・実に良い感じ♪
前方に7m滝があり、ここからオジカ沢の核心部が始まる。7m滝は水流すぐ右を登る。靴が新品なのが悪いのか?
とにかくオジカ沢の濡れた岩はよく滑るので注意。すぐ上の6m容易。その上の6mナメは滑りやすくカナリ渋い。
右岸を小さく巻いた監督さんが「ザイルだそうか?」と声を掛けてくれたが、なんとか突破できた。
両岸が開ける。ここからが核心部
7m滝
7m滝は右から
6m滝(これは容易)
しぶかった6mナメ滝!

これを越えると奥に悪そうな大滝が見えてくる。この大滝は前衛7m滝を従えた40m大滝。
前衛7mを右から超え。大滝基部に到着。最初水流左を見て「ザイル出さないとダメだなぁー」と思ったが、
奥まで進んで水流右を見たらこちらの方が簡単。

「これだったらフリーで行けるんじゃない?!」

と早速取り付いてみた。
序盤10m程度は濡れた岩を登るがスタンス/ホールドは充分で3級を超えない。ここから上はある程度乾いた岩
に足を置けるので安心して登っていける。
前衛7m滝と40m大滝
40m滝(カーソルを当てて!)
40m滝の直登


すると間髪入れずに深い切れ込みの中に水を落とす2段30mトイ状。下からは下部しか見えない。
一見「これ、どないすんねん!」という悪さだが、よく見れば右壁から登れそう♪ 一方水流左のクラックを持った
斜上バンドが妙に"こっちに取り付けよ!"と囁いてくる感じだ。

「俺、右壁から行くので、監督さんカム付け替えでこのバンド上がってください!(笑)」
「やだよーこんなの!」

という事で、斜上バンドはmoto.p/ナンチャンのハイレベルペアにいづれ登ってもらう事にして、我々は右壁に取り付く。
岩は乾いて安定しているのでルート取りを間違わなければ3級レベル。残置支点は数箇所あり。導かれるように
下段20mの上に出る。ここから見る水流左斜上バンドはバンドを上がり切ったところから先が難しそう。
取り付かないでよかった(笑)
2段30m滝(カーソル当てて)
右壁に取りつく
落ち口下段落ち口に向かって
下段を上から覗く

上段は左壁が被さる悪い様相だが水流右から登れる。ちょっと濡れているので若干渋め。
監督さん:「どーぉ?」
hiro:「う〜ん、V+からW-って感じかなぁー」
でもホールドがしっかりしてたので、怖い思いをせずに突破。V+ですな。
「ザイル出しましょうか?」
「大丈夫!」
と監督さんも難なく上がってきた。
上段を越えると大岩がCS状に被さっているが、逃げずに突破!とこの大岩の上に上がり滝上に出た。
2段30m滝上段の10m
上段の登攀
最上部CSの隙間を突破

滝上で左岸から1本枝沢が入る。本流はトイ状のナメ小滝。2段12m「く」字滝は水流右の乾いた岩を直上。
すぐ上の10mは左右どちらも登れそうなので別れて登る。
次の3m滝は右の乾いた岩を上がるが、沢床には1m強のジャンプで降りる。癒し系の3段12mナメを越えると
左に見事な岩峰が見える。ここで右から枝沢が入るが出合にテン場を発見。割と新しい焚き火の跡もあり。
2段12m「く」字滝
ジャンプ一発!
癒し系の3段12mナメ

ここから少し進むと遠くに2段80m大滝が見える。5,6m程度の小滝を超えると大滝が眼前に。前衛6m滝
一見右岸草付の高巻きかと思ったが、水流左を直登出来る。
2段80m大滝の下段は水流のすぐ左をフリーで直登。快適!上段40mも水流左をフリーであがるが、草付を
避けようと、水流沿いに近づいていくと、最上部で行き詰まり、仕方なく草付を上がって大滝を終了した。
2段80m大滝全景
前衛6mを登る
80m大滝下段は水流左を登る
80m大滝下段登攀
80m大滝上段
上段も水流左を直登

大滝上の8m滝は直登不可能で右岸を小さく高巻くが、沢には2m程飛び降りないと、次の7m滝の上まで草付を
高巻くことになる。7m滝が登れるのか判らないが、「ちょっと偵察に!」と言って、空荷で2mジャンプ!
7m滝も登れることを確認すると、監督さんも覚悟を決め飛びおりる!

7m滝上は(2:3)の顕著な二俣。左の本流の方が水が少ない。テン場も整地したりすれば何とかなるかもしれないが、
薪はここにはないので、80m滝下の方がよいでしょう。
8m滝は左を巻く
この7m滝を登りたくて
飛び降りる
そんで7m滝を登る

稜線も見え、源頭の様相・・・と思っていたら、また谷が深く切れ込み始め、12mの直瀑が現れる。
「ザイル出しますから瀑心突破して下さい!僕は巻きますけど(笑)」
と監督さんに振るが、あっさり断られ右岸高巻きに入ろうとした。。。
・・・と右壁を見ると、落ち口に繋がる一筋のラインを発見!
「ちょっと行ってみます!」といって取り付いてみる。滝の高さまでガレを登って、落ち口に向ってトラバース。
ちょっと脆い印象を受けたが、意外と岩は安定していて落ち口上に出た。(ザイル出した方が良いでしょう)
現場監督さんは左から巻いて滝上に出た。12m滝上の5m滝を超えると沢は三俣になる。
右が12mの直瀑
右を登る(カーソル当てて)
三俣

すると現場監督さんが
「あそこに人が居る!!!」
と右岸の小尾根を指差す! 
なんと沢から40mくらい上がった草付小尾根に二人組みが・・・
「ヤッホー!」と声を掛けたらこちらを振り向いたようだ。沢筋は明確なので間違う事も考えられない・・・

「なんで、あんな所にいるんだ?」
「オジカ沢遡行じゃないのかなぁ???そんな事ないよねぇ」
「俺ら朝5時過ぎに出たのに、いつ入渓したんだろう?」
                       と話題は尽きない。。。

我に返り、三俣をどちらに進むか協議する。水量比は左から1:2:4と右が一番多いが、監督さんが持って来た
遡行図は真ん中を進むと書かれていた。
「うーん・・・水量の一番多い右にはいってみますか!」と右を選択。
右俣に入って7mトイ状を登る。落ち口に岩が邪魔しており、突破しようとムリな体勢を取ったら、足を滑らせ
滑落・・・ゲッ!止まらん!と3m滑り。右肘を打った・・・
指先に痺れがはしるが、腕はちゃんと可動するのでラッキー。
「大丈夫かぁー!」
「大丈夫、大丈夫!」といって慎重に登ったらヤッパリ登れた。
この先小滝が2,3現れたが、急にヤブ沢に変貌・・・
「だめだこりゃ」
といって草付をトラバースして真ん中の沢筋に戻る。
右俣7mトイ ここで落ちる
中俣に戻る
苦戦を強いられてたお二人(左下)

爼グラ尾根を見ると、二人組みパーティーはザイルを出して草付尾根に苦戦しているようだ。
「何処の山岳会でしょうかね?」
「後日WEBで検索したら見つかると面白いですね!」
なーんて話していたのだが、実はこのパーティ、私のHPと相互リンクさせていただいている山人さんとモコモコ
さんペアだと翌日判明!(ゲゲッ!大変失礼しました)

オジカ沢の詰めは草付でヤブコギは無い。オジカ沢ノ頭にある非難小屋から200mくらい離れた爼グラ尾根に
出る。爼グラ尾根に踏み跡は無いが腰までの笹藪なので特に問題なし。1時半前にオジカ沢ノ頭に到着♪
オジカ沢最後の詰め
お疲れ様でした!
オジカ沢全景

オジカ沢ノ頭でも、お二人のホイッスルの音が聴こえてきた。。。
「大丈夫かな、あの二人・・・」と色づき始めた中ゴー尾根をノンビリ下りオジカ沢を終了した。

P.S:両岸の様相、2段80大滝など "ミニオツルミズ"というのもうなずける。滝の登攀グレードもオツルミズとほぼ同じ。
   雪渓は皆無だが、雪渓の有無で遡行内容は大きく変わるはず。泳ぎは無いので秋がお勧めです。
   下りはノンビリだがザイルは1回しか出さないで全行程11時間半。多人数でいくなら
   日帰りの計画はやめたほうが良い。テン場所は少なく。見つけたのは遡行記録に書いた1箇所だけ。

現場監督さんの記録にGO!

オジカ沢遡行図(クリックして)




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