2009年5月2、3日 南ア 濁川本谷(神宮川)→笹ノ沢下降

メンバー:shunrinさん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム、靴:フェルト
地図:長坂上条、甲斐駒ケ岳
遡行図はこちら

関東圏からアプローチしやすい南アルプスの濁川本谷は以前から狙っていた。WEBで検索してみると
支流の鞍掛沢の100m大滝や、アイスクライミングの記録が多い中、夏場は犬が日帰り遡行している一件のみ。
遡行図も登山大系くらいしか見た事無い。今回は笹ノ沢を下る1泊2日の日程でshunrinさんとジョイントで調査遡行する事にした。

初日
アプローチ:CR-X
2:30自宅発→(R4、R50)3:16佐野藤岡IC→3:37太田桐生IC→4:47佐久IC→5:40清里→6:10道の駅白州

8:20神宮川林道ゲート発→8:45林道終点(濁沢/笹ノ沢出合の巨大堰堤前)→10:25鞍掛沢出合→
13:00 50mナメ滝上→14:10 15m滝下にて行動終了(濁沢最後の幕営適地)

高速道路、休日1000円という事で、未明に栃木から出発。北関東自動車道が昨年から太田桐生ICまで伸びた
事により、アプローチが便利になったとは言え、GWの帰省ラッシュで、朝4時でもかなり車の量は多かった。
佐久から南下した、私は渋滞には巻き込まれなったが、中央高速を利用したshunrinさんは渋滞にハマり、
1時間遅れで、集合場所の”道の駅はくしゅう”に到着。

ここから、神宮川左岸を通る林道に移動。林道が右岸に移動したところでゲートあり。駐車スペースは6、7台、
携帯アンテナはsoftbankで1本立つ程度。

(この谷は1974年に”神宮川”と改名されたそうですが、登山大系が濁川と呼んでいるので、それに合わせてます。)

ゲートから歩きだすこと、25分で1/25000地図にも書かれてある巨大堰堤が出現。。。ここで濁川本谷と笹ノ沢の
出合となっている。
登山大系の遡行図を見比べると、この堰堤の建設によって、5,6m級の滝が3,4つ埋まってしまったようだ。
この巨大堰堤を階段を利用して右岸から巻くと250m程先にもうひとつ巨大堰堤があり、その手前に右岸から
日向沢が15mのナメ滝で入り込んでくる。
ゲート手前駐車スペース
巨大堰堤と笹ノ沢出合
日向沢出合

日向沢出合い上の巨大堰堤は階段が付いているので、容易に越えられる。
河原状で沢が左に曲がると3段7m滝。水流左にカムを差し込んで取り付いてみたが、二人とも直登出来ず、
敢え無く、左岸を小さく巻いた。このすぐ上にある7m滝は水流左を直登するが、岩が脆いので注意が必要。
スタンスホールド細かく水流沿いは難しかった。

ここで沢は左に曲がりミニゴルジュになるが6m滝を濡れるのを嫌って右から小さく巻いてしまったのをきっかけに、
次の4mトイもそのまま巻いて、あっけなくミニゴルジュは通過。
登れなった3段7m滝(カーソルを当てて)
2つ目の7m滝(カーソルを当てて)
6m滝(濡れるので巻いた)

再び、広河原の様相、正面に風化した花崗岩の白ガレが、素晴らしい景観を魅せてくれる。。すると正面に
2段35m滝が見えていた白ガレの横に現れる。
濁川の特徴である風化した花崗岩の大ガレ
2段35m滝。

この2段35m滝、見た目は簡単なのだが、この滝も風化が進み、水流左に取りついたが、下段はかなり脆い。
岩を落としながら登って行く。V-
下段終了した所で、カムが利くところがあったので、ここで上からザイルを投げてshunrinさんに確保してもらう。
上段は左側がのっぺりとした1枚岩で足幅より若干狭いの凹角がまっすぐ上に伸びている。W-
ここを直上する手もあるが滑って落ちて、カム1か所のランニングビレイでは怖いので、水流右に移動。3級ーレベル
の登りで滝上に出た。滝上の大岩に支点を求めるとザイルは50mでギリギリだった。shunrinさんは、水流右に
移動せず、上段もまっすぐ登ってきたが、「下段は問題無かったけど、上段はすごい怖かった・・・」との事。
ところで、この滝、本当に ”犬” が登ったのだろうか・・・?
下を見たら、単独遡行者を発見。手を振って先に進む。
2段35m(カーソルを当てて)
下段を登る
下段を登る その2
上段の様相と、単独遡行者

沢は左に曲がって10m滝を超えると、鞍掛沢との出合。右の本谷は10m巨大CS滝となっている。多くの人は、ここを
左の鞍掛沢に入り、100m大滝を見に行くらしい。我々は右の本谷に入る。10m巨大CS滝は水流右から容易に突破。
左岸に巨岩を2,3見ると、ここから狭いゴルジュになり12m滝が現れる。これも岩は脆く、慎重にクリヤー。
ここから沢は急激に高度を上げて行く。2段2条7mもいろんなルートから登れ楽しい。さらに8m、5mCS、6mと
滝が続いて行く。
鞍掛沢/濁川本谷出合
12m滝で始まるゴルジュ
2段2条7m

この辺りの両岸は花崗岩の風化が激しく、最近崩れたと思わせる巨岩もゴロゴロ転がっており、ここで地震にあったら
ひとたまりもない。。。

沢が左に曲がると、右岸は樹木が生えてくるが、左岸は大崩壊しており、相変わらず巨岩がごろごろしている。
白くて綺麗なのだが、それは崩れてこなければ・・・という条件が付く。。。
4mCSが登れず右から岩と岩の間に出来た穴から超えると、後から

ガッ! 

っと、一瞬音が聞こえ、振り返ると

ド、ドーン・・・・

150m程度後ろで右岸から直径5mを裕に超える巨岩が落ちてきた・・・!!!

「い、今の見た!?」
「俺、今の衝撃音で大崩壊している左岸からも岩が落ちてきたらどーしようって思ったよ。。。」
自分はカメラを手にしていながら、呆然としていた5分遅かったら、死んでたと思うとぞっとする・・・

「さっき単独で来ていた人、後ろに見えてなかったから大丈夫だよな?」
「ひろたさん、変な事言わないでくださいよー!」
「せめて、”わぁー”とか言う悲鳴くらい聞こえるかな?」
「いやぁー声も出ないんじゃないですか、あんあのが落ちてきたら・・・」
両岸が風化した連瀑帯上の様相
沢が左に曲がると左岸が大崩壊
焚き火じゃないよ落石だよ!

4mCSを超えて少し進むと、左岸の大崩壊が無くなる、6mCS滝は右から落ちる水流から超える。まだ所々崩壊箇所は
見られるが。この辺りでようやく一息付けた。
3段トイ状の小滝を超えると、嘘のようにナメ床が続く。 さらに進んで行くと再び左岸の壁が立って来て、正面に
大岩がゴロゴロ転がっているのが目に入る。。。 ”まいったなぁ・・・”と思ったら左から50mナメ滝で水を落としていた!
6mCS滝
癒し系の様相になります
正面ガレかと思いきや左から50mナメ滝が現れる

50mナメ滝は全体的に逆層で岩も滑るので水線沿いの直登は困難。。。とりあえずザイルを出してリードする。
右から取り付きバンド状を水流に向かって進み行き詰った所から直上。カムで支点を取って1段上がったところから
細かいスタンスを広い3mザイルを伸ばしてハーケンで支点を取る。ここから水流沿いは、やはり無理と判断
打ったハーケンに足を乗っけて乾いたところに1段上がったが、ここも割と渋い。慎重に上がってshunrinが見える
ところでハーケン3枚でピッチを切る。W,AO
shunrinさんが、2ピッチ目をそのままザイルを伸ばして50m滝を終了する。
50mナメ滝(カーソルを当てて)
ここから水流沿いは不可能。右に逃げる
2ピッチ目

この滝の上で、残雪出現。 2段8mナメ滝を超えると、右岸にテン場あり。時間は13時。まだ上流に良いテン場が
有ることを期待して先に進む。笹ノ沢を下るなら初日はここまで来ないと二日目が辛い。

ナメ床を進み正面に、ガレ筋が見えてくると、先ほどの50mナメ滝同様左から9m滝が水を落としていた。岩は
相変わらず脆いので、一人づつ取り付く。9m滝上にも1張りなら何とかなりそうな場所有り。。。ここから先は
両岸が立って来て左岸は切り立った壁となり風化した花崗岩の大岩が崩れ落ちている。正面のガレを見ると、
また左から水を落とす15m滝。似たようなパターンを繰り返す。この15m滝は傾斜が緩く、直登になんら問題無い。
2段8mナメ滝
左から入る本流の9m滝
同じく左から入る本流の15m滝

15m滝上に期待したテン場は無く、さらに進むと、氷が覆う8m滝がまた左から入る。かろうじて水流沿いを直登出来た。
その上の12m滝は、ほぼ氷に覆われており、仕方なく右の子尾根で巻く。子尾根から見たものは、完全氷結した
10m滝(?)で、テン場も無い。
”これは、稜線まで出て笹ノ沢を下るしかないかなぁ・・・”と思いこの滝を右の子尾根で超えると。
絶好のテン場があった。氷の割れ目から水も得られ、
「もう、ここしか無いでしょう♪」
と今日の行動を終了する。 正面には両岸切り立ったルンゼが伸びており、左の本流筋には右から凍りついた
15m滝が、氷の隙間から水を落としている結構な絶景ポイントだ。ここが本谷最後のテン場です。
蒔きも多く、焚き火はもちろんやるが、残雪で冷やされた風で焚き火からちょっとでも離れると寒い・・・
酒もやたらに冷えてるし(笑) ちなみに、ここではAU携帯が使えます♪

12m滝
10m滝?(右から巻きます)
絶好のテン場が広がる♪



二日目
6:15出発→7:15日向八丁尾根→9:00東鬼ノ窓(笹ノ沢下降開始)→10:30アレ沢出合→10:45黒津沢出合
→11:40左岸枝沢50m大滝→14:30濁沢/笹ノ沢出合巨大堰堤→14:50基点ゲート着

朝の冷え込みは思ってたより無く助かる。稜線までどれくらい時間がかかるか判らない不安もあり、6時15分にテン場を
後にする。しかし、ここから沢床は完全に雪で埋もれており、アイゼンを持ってきていないため、沢床を横目に見ながら
樹林帯を登る。薮こぎがなく歩きやすいのが救いだ。おそらくテン場から見えた15m滝の沢筋が本流と思われるが、
その沢筋横を歩く事が出来ず、もう一本隣の沢筋横を沢と並行に進む。
今回の下降は笹ノ沢にルートを取る計画なので、1/25000地図の2144mピークと日向八丁尾根をつなぐ尾根に
出れると時間的に短縮できるのだが、この辺りの左岸は絶壁になっており、日向八丁尾根まで出ないと、2144m
ピークには移動できない。
それでもテン場から1時間で日向八丁尾根に到着。この尾根は赤テープ等は無かったが、
非常に歩きやすくなっている。鞍掛山&日向山方面への移動は他の記録にもあるように問題無い。
テン場から
沢筋と平行に登る
日向八丁尾根到着

ここから2144mピークを経由して、"東鬼ノ窓"と呼ばれる笹ノ沢への下降点を目指す。

日向八丁尾根から2144mピークへの尾根は一部コメツガが邪魔をする事もあるが、歩きやすい。おそらくこの辺り
だろうと言うところでshunrinさんの高度計がピッタリ2144mを表示。

迷いやすいのはココからで、一本尾根筋を間違えると西に位置する黒川(黒津沢)へ降りてしまう。 しかも、黒川は
笹ノ沢と同じ方向に沢筋が伸びている為(概念図参照)、下に見える沢が黒川なのか笹ノ沢なのか、判断がむずかしい。
晴れていれば、黒川方向の尾根に入ってしまうと左に大岩山(2319m)が見えるので、誤りである事が判るのだが、
見通しが利かないと、GPSを持っていないと判断材料が無くなるので、この場合は"東鬼ノ窓"への下降を断念して、
2144mピークから北東方向への進み、出てきた沢筋を降りていくのを薦めます。

2144mピークから"東鬼ノ窓"への尾根は細尾根だったが、ザイル無しで下降可能。無事"東鬼ノ窓"に9時に到着。
概念図(クリックしてください)
2144mピークから東鬼ノ窓への尾根
東鬼ノ窓に到着♪

早速下降を開始。
少し降りると、濁川本谷で見たような風化した花崗岩の崩壊地となる。すると右岸から2段100mナメ滝が入る。
水流はほとんど無いのだが、この滝の出合から水流が現れる。ここからは両岸の崩壊は無くなり、4〜5mの小滝
を小さく巻きながら、快調に下って行く。テン場適地も至る所に見いだせるでしょう。左岸から顕著な沢筋で入るのがアレ沢
水量比は(3:2)。
笹ノ沢下降してすぐの崩壊地
右岸の2段100mナメ滝
アレ沢出合(左から降りてきました)

アレ沢出合付近もテン場は多い。少し下ると、ゴルジュになるがその手前で左岸から黒津沢が出合う。ゴルジュ内の
トイ状6m滝は水線を降りれず、右岸側から小さく巻く。そのすぐ下には見事な2段12m滝。クライムダウンは不可能で
左岸から小さく巻いて降りる。
黒津沢
トイ状6m滝
2段12m滝

2段12m滝下で平凡な様相になると13m直瀑。落ち口の右岸側のバンドをトラバースして懸垂下降。この滝を直登する
場合。右のルンゼから突破できなければ、かなりの大高巻きになりそうだ。

下降を続けると左岸から50m大滝で出合う枝沢が入る。再びゴルジュになった所の6m巨大CS滝は大岩の下から
水が流れ落ちる変則滝で、大岩上に引っかかった木にshunrinさんの20mザイルをかけて手で掴みながら降りる。
13m直瀑(右岸から懸垂)
左岸枝沢の50m大滝
6m巨大CS滝


ここからは、5m前後の小滝とナメ床を交えながら、しばらく快適に下降する事が出来る。

2条8mは上から見て左の水流沿いをクライムダウン。7m滝を左岸から小さく巻いて降り、4m2条、4m滝とクリヤーすると、
笹ノ沢の核心部に突入。40m滝は右岸を巻く。右岸は歩きやすく。笹ノ沢の核心部の大滝をすべて巻く事が可能だ。
面白い事に、40m滝下に上手い具合に降りられるバンドがあるので、下から記念撮影。ちなみに、この40m滝は水流
右から取り付き直登可能だ!
40m滝下に6mCS滝があるが、これもクライムダウンできないので、右岸から小さく巻く。
奥に見えるのが7m滝
40m滝(カーソルを当てて)
40m滝下の6mCS

このすぐ下の35m滝も右岸を巻くが、沢床に降りたい一心で、10mの懸垂下降を交え、沢床に降りる。
この35m滝はかなり立っていて直登り不可能。越えるには我々が懸垂で降りてきた所から右岸高巻きになるでしょう。
35m滝(カーソルを当てて)
35m滝遠景

右岸岩壁はハング状に被さっている感じなので、早々に下降する。5m滝を降りると。快適にクライムダウン可能な
15m滝。この滝を降りると濁川本谷の巨大堰堤横に出れる。堰堤の横断はステップが付いているので問題ない。
後は林道ゲートまで20分の道のりだ。。。
15m滝のクライムダウン
15m滝
濁川本流出合に到着♪

温泉は"尾白の湯"に入るが、せっかく甲斐駒ケ岳の麓にあるのに露天から内湯が邪魔して全く見えないって
いうのが残念。

P.S:思った以上に内容充実の沢でした。ただ、濁川本谷の岩は脆いので注意してください。
   崩壊地の通過は手を合わせてから進むと良いでしょう(笑)。ザイルは40m以上必要。笹ノ沢を遡行する場合は
   序盤の大滝突破がカギになります。
   テン場は濁川本谷は崩壊地を越えてから点在。笹ノ沢は、源頭付近まで随所に見つかると思います。
   魚影はどちらの沢も全く無いです。

濁川本谷→笹ノ沢下降 遡行図

沢登りトップへ    その空の下で。。。トップへ




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