2009年9月20〜23日 飯豊連峰 玉川 大又沢本流 御秘所沢

メンバー:やますきーおさん
装備:ザイル8mm×30m、8mm×25m、カム、靴:フェルト
概念図、遡行図はこちら

シルバーウィークの5連休。当初、5日フルに使っての柳又谷の計画があったが、前回の川棚沢の記録アップ、
オケの練習、さらに健康診断結果の不調?もあり、心の準備が全くできず、柳又はキャンセルさせていただき、
飯豊の大又沢を選択。この沢は飯豊らしい長大な沢であるが、アプローチ/下山も含め割と入渓しやすいとの事。
虫に刺されると腫れ上がってしまう私にとって、この山域はアブが大発生する8月は遡行できないので、今回
チャンスとばかりに入渓する事となった。

アプローチ
16:28自宅発→17:35矢板→(那須塩原IC)21:08荒川胎内IC→22:09飯豊山荘

初日
6:02飯豊山荘発→6:42大又沢入渓→9:10休場ノ沢出合→11:02アシナ沢出合→15:21出トミズキ沢出合

磐越自動車道経由で飯豊山荘に入る。このルートだと福島飯坂IC経由より80km程遠回りになるが、
高速道路の渋滞状況を見極めて判断してもらいたい。softbank携帯はR113から県道260号に入ってからも長者原
辺りまでは繋がるが飯豊山荘まで入ると繋がらない。駐車スペースはゲート手前に多数あるが、シルバーウィーク
という事もあり、多数の車が既に駐車してあった。ゲート手前の駐車スペースにテントを張り仮眠。翌朝6時に出発。
ダイクラ尾根への一般道を進み、吊橋手前から入渓する。
ゲート手前に駐車
ダイクラ尾根吊り橋手前、大又沢/檜又沢出合

ここからしばらくは平凡な様相。いくつか淵が現れるが胸まで水に浸かれるくらいで突破できる。。。豊富な水量、
削られた岩壁・・・様相は非常に良いのだが、なぜか全く魚影が無い・・・
「そんなわけないいでしょー!」
「大水で流されちゃったのかなぁ・・・???」
「まさかぁ・・・」
「水質の酸性や、アルカリ性が強いと魚がいないんだよね」
という寂しい会話が続く。。。この後本当に最後まで魚影は見ることは無かった(涙)
概ね平凡な様相
さすがに胸までは浸かります
泳がなければ中央突破です。

右岸に6m滝で出合う枝沢を見ると、渋そうな淵が現れる。ここが登山大系で書かれている”人返しの淵”という所
だろうか。釜の深さは2mくらいある。幸い、右壁にトラロープがぶら下がっているので、これを利用し右壁から小さく
巻いて超える。再び平凡な様相になり、しばらく進むと左岸から休場ノ沢が入る。入渓してからおよそ2時間半。
人返しの淵
右から超える(カーソル当てて)
休場ノ沢出合

本流をしばらく進むと、10m石柱が現れ、ここから第1ゴルジュが始まる。石柱横の釜の深さも2mくらいあり、
やますきーおさんが右壁を腰上まで濡らして経つって突破。私も後を続くが落ちてしまい泳ぎになる。沢すぐに右に
屈曲したところに再び深い淵。ここは右壁づたいに泳いで突破する。沢は少し開けるが、すぐに狭いゴルジュとなり
小滝を左壁を経つって進む。ゴルジュ出口の6m滝は絶望的だったが、右から小さく巻く事が可能。第1ゴルジュを
抜けると左岸からゴーロ状のアシナ沢出合う。
10m石柱(クリックしてください)
石柱を過ぎてすぐの深い淵を泳ぐ
第1ゴルジュ出口の6m滝(左岸を巻く)

アシナ沢出合〜千本峰沢出合までの区間は淵を伴ったゴルジュが現れるが、腰まで濡らす程度で、突破に問題は
無い。千本峰沢出合を過ぎると大釜を持った6m滝で始まる第2ゴルジュが現れる。大釜を左から回り込み、3m程泳いで
水流左に取りつき、空身で突破。やますきーおさんにはザイルを出す。この6m滝上で淵になっており、両岸が
切り立っているが、幸い左壁がバンド状になっており怖い思いをせずに経つって行ける。20m先に3m滝があるが
経つった先でクライムダウンし、水流左から突破可能。この先、釜を持った幅2m程度の淵が伸びるが、ここも左壁
を経つって進んで行く。こちらの経つりの方が難しいが、慎重にホールドスタンスを拾えば問題無いだろう。
落ちても濡れるだけなので恐怖感は少ない。
第2ゴルジュ6m滝(カーソル当てて)
6m滝を過ぎて3m滝へ(カーソル当てて)
3m滝手前から先の様相(カーソル当てて)

ここを突破すると右に直角に曲り2m滝。たかだか2mだが淵が深く、全く取りつけそうもない。左の岩壁上に上がり
小さく巻く。さらにこの上の5m滝を左岸から高巻いて第2ゴルジュを終了する。
2m滝
2m滝を超えて
第2ゴルジュ出口の5m滝

ここを過ぎると整地済の完璧なテン場を発見。時間はまだ早いので、先に進む。少し行くと、1m弱の滝に長い淵
現れる第3ゴルジュに突入。両岸はのっぺりとした岩で壁伝いに泳いで行くのも難しそう。とりあえず、ザイルを出し
泳いで行くが、流れに戻され、すぐに断念。空身で泳ぐという手もあるが、右岸高巻きを選択。50mほど戻り左岸
灌木帯間であがり高間巻く。良い、下降ポイントが見つからずトラバースを続けるが、巨大凹角が行く手をさえぎり
ここで、懸垂下降を試みる。ザイルは30mでは届かず、途中で25mザイルをつなぎ、懸垂。その先の滝を右の凹角
から突破できる事を確認して、やますきーおさんに懸垂で降りてきてもらう。
第3ゴルジュ入口の1m弱の滝と淵
巨大凹角手前で懸垂
懸垂後の小滝を凹角から突破

この先の小滝も釜が大きく超えられないため、左岸を少し戻って小さく巻く。ここを超えると第3ゴルジュは終了。
大岩が転がる広河原の左岸側に良いテン場がある。すぐ先で大きな二俣がある様なのでそこまで進むと、出トミズ
キ沢出合。時間も15時過ぎなので、今日の行動はここで終了とする。薪は豊富。魚が居ない事だけが残念・・・
出トミズキ沢出合(中央奥がテン場)
ビッグファイヤーです


2日目
6:50出トミズキ沢出合発→8:30入リミズキ沢出合→11:20大岩沢出合→14:05本社ノ沢出合

今日もまずまずの天気。出トミズキ沢から先はしばらく平凡な様相で、テン場もいくつか散見される。両岸が切り立
ってくると3m程度の小滝。またまた釜が深く、右岸から高巻くと滝上は深い”箱淵”となっていた。右岸は丁度バンド状に、
なっており、箱淵を覗きながら進むことができる。沢は左に直角に曲がった所になぜか、絶好のテン場あり。薪は無いが・・・
”箱淵”を過ぎると広河原。この辺りから熊の足跡を多数発見。声を出しながら進む。テン場も散見される。
”箱淵”入口の3m滝
”箱淵”(カーソル当てて)
”箱淵”過ぎると概ね平凡になります。

特に難なく、入りミズキ沢出合に到着。大又沢を2泊3日で抜けたい場合は、ここまで来ておいた方が良いでしょう。
この先も概ね平凡な様相を進むと、初日見た10m石柱に似た様相の、7m石柱が現れる。ここの石柱横は深い釜
になっており、石柱の左側にルートを見出すが、最初の一歩が上がれないので、ショルダーであがり、ハーケン2個
打って上に上がる。
入リミズキ沢
7m石柱
石柱左(カーソル当てて)

沢は再び平凡な様相。7m滝は右から経つって、2m程度の泳ぎで水流右に取りつき直登可能。次の5mヒョングリ滝
右から小さく巻くが、ドングリが大量落ちている熊穴を横切ることになる。声を出しながら遡行していたから良かったが、
流石に長居はしたくないので、早々に先に移動する。20m滝で出合う左岸枝沢を見、少し進むと5mCS滝
左岸に30m滝で出合う枝沢が奥に見え、ビューポイントとなっている。
7m滝
5mヒョングリ(カーソル当てて)
5mCS滝(クリックして)

ここから、また概ね平凡な様相を30分ほど進めば大岩沢出合。顕著な沢筋で入るので間違う事は無い。登山大系には
落合から17時間とあるが、淵が埋まって進みやすくなったのか、そこまでは時間はかからない。
大岩沢から本社ノ沢までは特筆すべき難所は無く、快適な沢歩きが楽しめる。テン場も散見。本社ノ沢出合に14時
に到着。本社ノ沢にちょっと入ってみるとすぐに10m滝があり、これを見て引き返す。今日はちょっと早いがキリが
よいのでここで今日の行動を終了する。今日も”これでもか!”というほどの薪を集め、のんびり過ごす。
大岩沢出合手前
本社ノ沢出合(左が本流です)
本社ノ沢出合手前にて


3日目
5:55本社ノ沢出合発→9:55御秘所沢出合 (大休止、御秘所沢遡行)→12:55 標高1590mにて幕営

「ここから、御秘所沢出合いに朝9時までに到着すれば、2泊で下山できるかも!」と昨晩話し合い、今朝は4時過ぎに起きて
早出。 本流ミニゴルジュは、淵は深いが、うまくスタンスを見つれば、あまり濡れずに進め、5m滝をひとつ越えれば
ゴルジュ終了。25分ほど進めば、テン場も見つかった。「このまま平凡な様相で・・・」と思ったのだが、左岸側壁が
立って来て深い釜を持つ4mナメ滝が行く手を阻む。左から小さく巻くとすぐ上に5mナメ滝があり、これも一緒に
高巻くとミニ淵が伸びる。
左岸が立ち4mナメへ(カーソル当てて)
4m滝上の5mナメ
ミニ淵が続く

このミニ淵は釜をもった3m滝で終了するが、この滝は簡単には登れずショルダーでやますきーおさんが突破。
この上もゴルジュになっているが左の岩壁が登れれば、そのままバンド状の岩を進み、濡れずに突破できる。
ここを超えると河原状。良いテンバもある。2条ナメ滝を超え、左岸から2本の枝沢を見ると8m滝が現れる。
これは右から取りつき水流を”4つんばい”で潜り水流左に移動し超える。
ショルダーで突破した3m滝
3m滝上のゴルジュを超える
8m滝(カーソルを当てて)

この滝上は、再び平凡な様相。良いテンバも見つかる。大釜を持った2m滝は微妙な経つりで左から突破できる。
やますきーおさんは泳いで取り付き突破。この先で、この長い遡行で初めてのナメ床が現れる。短いけど・・・
このまま癒し系の様相が続くのかと思いきや、2段6m滝が行く手を塞ぐ。
2m滝を微妙な経つりで超える
癒し系
2段6m滝に気を取られて・・・

この滝は、水流沿いは直登出来無い。高巻くなら右岸だが、150m以上戻っての高巻きになる。弱点を見出すと、
水流左に位置する凹角にルートを見出す。何とここに古い残置ハーケン有り。さらに1枚打ち足し、長いシュリンゲで
セルフを取り、ワンポイントをクリヤー、大又沢で唯一岩登りと言った感じ。W
やますきーおさんにザイルを出し、ハーケンを回収して上がってきてもらった。ここを超えるとやっと稜線が見えるが
まだまだ遠かった。一瞬広河原になるが、再びゴルジュの様相になって行く。入口の7m滝は中央の乾いた大岩で超えた。
7m滝上はすぐに淵になり2条3mCS滝。ここは左壁を経つって突破できる。
6m滝の突破(カーソルを当てて)
ゴルジュ隊へ突入。入口の7m滝
3m2条CSを左壁から突破する。

ゴルジュはまだ続き、2段5mは左壁を5m登ってトラバース。次の2条3mも釜が深く取りつけず右岸を高巻いたが、
やますきーおさんは右壁をへつって突破。このゴルジュの高巻きは草付きなのでまり良くなく、15m以上巻き上げられ
トラバースは結構渋くなる。下を見ると2条3mの次に2mCSがあり、これも直登は難しいようで、やますきーおさんも
ここから右岸高巻き。沢が左直角に曲がった先の3m滝も一緒に高巻いて沢床に降りる。ゴルジュ出口の5m滝は
左から容易に小さく巻いて終了。
2段5m
2条3m
2mCS

そうすると間髪いれずにドーム状の中に10mCS滝赤石沢の"門ノ滝"を小さくしたような滝だ。直登は不可能で
左岸の小尾根に取り付き高巻きを開始。下降点は良い場所がみつからず。12mの懸垂下降で沢床に降りた。
降りたところはまだゴルジュで、5m滝を水流右に取り付き直登して、ゴルジュを終了した。
10mCS滝
右から巻きます
懸垂下降で降ります

このすぐ先で御秘所沢出合となる。計画ではここに朝9時に付けば今日中に下山できると、思っていたが、時計は10時。。。
長いダイクラ尾根をヘッドライトで下降する気は起きず、予定通り、もう一泊する事に。。。もちろん今日中に稜線に
上がって本山小屋に泊まることは可能だが、人がごった返す山小屋で泊まるのは嫌なので、御秘所沢出合で1時間
の焚き火休憩の後、「薪が拾えるギリギリの所まで詰めて、幕営しましょう」と御秘所沢に入る。
御秘所沢は概ねゴーロ状だが、岩盤の発達したトイ状ナメもある。早い時期だと全部雪渓の下なのだろうか・・・?

しばらく進むと三俣となる。ここにかかる10m滝は見た目簡単そうなのだが、最上部が水流沿いは滑っていて取り付けず。
右の乾いた岩は段差が大きく渋い。ハーケンも良い位置に打てず。ショルダーで這い上がった。やますきーおさんも
ゴボウで何とかクリヤー。。。
御秘所沢出合(カーソル当てて)
トイ状ナメ
三俣に掛る10m滝(カーソル当てて)

この先、左岸30mのスラブ滝の枝沢を見ると(1:4)の二俣。右岸に平らな草地があり
「今日のテン場はここですかねぇ・・・」
と雰囲気だったが、空荷でこの先の様相を確認しに行くと、夏場は雪渓で埋まっているだろう場所に増水には
耐えられないものの、良いテン場を見つけたのでここまで上がって今日の宿とする。標高は1590m付近。結局ここが
最上部テン場だった。。。

時間はまだたっぷり。。。薪を大量にかき集め昼間っから着火。
さすがに3泊目となるとお腹が空いてつまみ以外の非常食にも手を出すが、持って来た非常食が少なく悲しい思い・・・、
しかし、やますきーおさんのザックから、ラーメン、レトルトの肉団子、ハンバーグ、せんべい、チョコレートと次々と
食べ物が飛び出し大感謝。行動時間と同じくらい焚き火をして寝床に着いた。
1:4二俣
夏なら雪渓が多く残る所
1590m地点で行動終了


4日目
7:07出発→8:25稜線登山道→9:10本山小屋、9:37同発→9:48飯豊山頂→(ダイクラ尾根下降)14:35吊り橋
→15:10飯豊山荘着
明け方、小雨がパラツクが焚き火に火が付き、朝食をすませ、出発。。。20分も進むと源頭部の様相。水はまだ涸れ
ないが、標高1810mまで上がると右岸に沢型が伸びる。地図で確認すると、この辺りで稜線に出るのが一番早そうなので
左の沢型に入る。この沢型、水は無いが、稜線近くまで伸びているので都合が良い。10分〜15分程度の藪漕ぎで、
稜線に出た。ここから100m程を上がると本山小屋に到着。シーズン中は管理人さんが居る。
源頭の様相
標高1810mにある本流最後に見た滝
右岸沢形を詰め上がる
御秘所沢を振り返る
本山小屋

ダイクラ尾根を下り始めると飯豊主稜全貌も見渡せるようになる。大又沢の方を見下ろすと大岩沢はこの時期でも
雪渓が多く、随所に崩壊。かなりヤバイ感じ。隣の檜叉沢の方は、ゴーゴーと滝の音が聞こえ、やはりこちらの方が
1ランク難しい印象。アップダウンのある長い尾根ではあるが、やますきーおさんの楽しい話題で、思った以上に楽に
下山できた。
宝珠山と雪渓が残る大岩沢
入リミズキ沢
吊橋到着


P.S:大又沢はゴルジュ、河原、ゴルジュ、河原が交互に繰り返す長大な沢。初日入りミズキ沢出合付近。二日目、本社ノ沢を
   超えて、2段6m滝を越えておけば、2泊3日で下山できます。増水に耐えられる幕営適地は少ないですが、その心配が
   なければ、河原状のところでは、いたる所でテン場があるので、心配する必要なしxザイルは、上手く高巻けば30m1本で
   足りますが、30m2本持っていけば安心です。
   尚、原因不明ですが、残念ながらこの沢には魚は居ません。檜叉沢も同じかも・・・

大又沢概念図(クリックして) 遡行図(クリックして)

沢登りトップへ    その空の下で。。。トップへ




inserted by FC2 system