2011年6月4,5日 南アルプス 大武川一ノ沢右俣→石空川北沢下降
メンバー:現場監督さん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム
地図:鳳凰山
遡行図、概念図はこちら
今回は、現場監督さんとのジョイント。彼は土曜朝一に所要があるということで、●1.5泊 ●雪が無い ●高速道路1000円のうちに・・・
ということで、大武川(おうむがわ)一ノ沢をチョイス。この沢、大滝のアイスクライミングでは非常に有名らしいが、沢登りの記録は『登山大系』以外には
皆無に等しい。稜線に登山道が無いので、尾根の反対側に位置する石空川(いしうとろがわ)北沢を下降し、精進ヶ滝上の林道に抜ける。。。
というルートで計画してみた。
アプローチ:フィット
6:07自宅発→(7:54入間IC通過)→9:33双葉SA、→10:11長坂IC→10:55精進ヶ滝林道デポ地→11:54大武川林道ゲート着
初日 12:00ゲート発→12:33一ノ沢出合→15:00二俣→15:55行動終了。
二日目 5:55出発→7:50 150m大滝下→9:12大滝上→11:35一ノ沢/二ノ沢境界尾根→12:10稜線→12:20下降開始→14:53北沢本流
→17:15北沢/南沢出合→18:48林道→19:20車デポ地
11時双葉SA集合だったが、お互い9:30過ぎに双葉SAに到着。車1台を石空川精進ヶ滝上に抜ける林道入り口へデポ。以前、南沢を
遡行したことがあるので、イメージは掴んでいたが、すぐ近くに林道入り口が二つあり判りづらい。林道入り口の対面のガードレールに
看板があるところが正解。(我々は間違っちゃたけど・・・) 駐車スペースは近くに1台分はあります。私の車にはナビが無いので現場監督さんの
ナビが役に立った。
基点となる大武川沿いの林道は、昨年篠沢を遡行したし、監督さんのナビも威力を発揮。 桑木沢を渡るとすぐにゲート。駐車スペースは
数台分あるので問題ないでしょう。入渓準備を整え出発する。
地形図では林道が大武川右岸につけられているが、現在は橋もなく廃道になっており、新しい林道が左岸につけられている。
林道から対岸に見える最初の大きな切れ込みが一ノ沢。奥に大滝が見える。林道から見る一ノ沢は木々が鬱蒼としており暗そうな雰囲気。
大武川本流に降り立ち一ノ沢出合に到着。対岸の大岩に赤ペンキで”1”と書かれてあるのは目印だろうか?出合はちょっと貧相な感じ・・・?
膝上程度の渡渉で一ノ沢に入るとすぐに旧林道跡。昔の記録では”一ノ沢橋という橋が架かっているので間違うことは無い”などと記されているが、
現在は橋は完全に消失している。
堰堤を二つ超えると岩を潜って取りつく2m滝。右から巻いてしまえばそれまでだが、あえてここは水流通しで突破。4つ目の堰堤は堰堤右に
残置ロープがあり、これを利用。 林道から見た一ノ沢は鬱蒼と木が茂る暗い沢という印象だったが、暗い沢ということもなく、甲斐駒ケ岳周辺の
特徴である白く砕けた花崗岩の砂もあり、遡行感度は非常に良い。”登山大系”の遡行図では二俣までほぼ平凡であるように記されているが、
結構、登れる滝が多く飽きさせない。
5m前後の滝を極力水流通しで超え、7m滝を二つ超えると(1:3)二俣。最初ここが左俣/右俣を分ける二俣と思ったが、時間もあるし、
「もう少し先まで行ってみよう」と進むと本当の二俣に到着した。
この辺りはテン場は至る所にあるが、ここでも「もう少し先まで行ってみよう」ということになる。
少し進むとゴルジュになり直登不能な10mCS滝が行く手を阻む。右のルンゼに突破口を求めるが、簡単に落ち口には降りれず、
仮に下りれたとしても次の8m滝が突破できるか判らず不安。。。ここは現場監督さんがルンゼを長いシュリンゲを出して
クライムダウンで何とか滝上に出て、8m滝を確認してもらった。 『OK』サインが出たため私も後に続いてクライムダウンした。
ここはザイル出た方が良いでしょう。
確かに次の8m滝は3級レベルで快適。直後の2条4mナメを超え、先に進み17m3段滝が現れたところで右岸の大岩上にタープを張り
今日の行動を終了する。
二日目
今日は行動時間がが長い為、6時に出発。初っ端の3段17m滝は1段目の1ポイントを上がれば抜けれそうだったので、水流左に取り付く、
脆い岩を剥がしながら慎重にホールドスタンスを求め1段目をクリヤーV+。現場監督さんにはザイルを出す。
3段目は無理せず右から小さく巻いて落ち口上に出た。
少し進むと1200mに位置する二俣。左には50m滝が奥に見え、そちらが本流ということはすぐに判るが、右の水量も多くほぼ(1:1)。
50m滝は全く取り付けず右岸の水の流れるルンゼから上がる。凹角を通過し小さく巻けば落ち口ジャストに出れる。落ち口には岩小屋有り。
続く8mナメは飛沫を浴び水流左の凹角に取り付けば問題無い。現場監督さんは水流をまともに受けながら横断してきた!
その先の7m滝は上部がトヨ状で一見登れなさそうに見えるが、下部の階段状を上がれば左の岩溝から上がれる。
この先のナメ滝群を快適にクリヤーしていくとハイライトの150m大滝が視界に入ってくる。さらに小滝をいくつか越えてようやく大滝が全貌を現した。
本流左にはV字に切れ込む枝沢を擁し、威圧感が凄い。アイスでは登れるらしいが、凍っていなければ全く手が付けられない。
さて、高巻きルートだが、周りは絶壁と右岸左岸に1本づつあるルンゼ。左岸ルンゼは巨大CSが行く手を遮りNGで高巻きは右岸ルンゼのみ。
ガレを100m程上がって最狭部5mを登るとルンゼの傾斜は多少緩むが壁が延々続いており何処までも巻き上げられそうな感じ。
1箇所5m程頑張れば壁を登れそうな所があり、細かいスタンスを拾って潅木まで直登 W+。ここから大滝方向にトラバースを掛けるが、
大滝下でみたV字枝沢がこの位置でも深い谷を形成しており、懸垂で降りても対岸の壁が登れそうも無い。仕方なく枝沢右岸尾根を、
枝沢を横断出来るところまでさらに50m程上がって行くとザレが現れた。"さらに大高巻きかぁー"と思ったが、ザレを横断して枝沢に向かって
バンドが伸びていた♪
枝沢に到着するとここからは明瞭な獣道が本流に向かって伸びており、落ち口近くに出れた。登山大系には、『この高巻きは1時間半見たほうが良い』と
あるが確かにそれくらい時間を見た方が良い。
滝上は幕営可能な場所で、北沢下降で戻る場合は、初日ここまでは進んでおくと翌日楽でしょう。
大滝を超えるとすぐに正面にさらなる大滝が待ち構える。この滝は”中滝”と呼ばれるそうで60mはある。ただ右俣本流はここで右に折れており、
中滝は枝沢に掛る滝だった。。。登山大系によると”この先は一変して穏やかな流れ”とあるが滝はまだまだ続く・・・
沢が左にカーブすると3段20m滝。2段目3段目段は直登不可能だが、ここだけ小さく右から巻けそうだったので1段目まで直登してみると、うまい具合に
巻け滝上に出れる。すぐ上の2段7mナメは水線通し。その先の2段8mは脆い岩に注意しながらシャワー突破。
この先で、沢は源頭の様相になって来たと思ったら左壁からしっかりとした水量で5m滝が入る。どうも本流はこちらのようだ。 この滝は
直登できず、右から小さく巻くと両岸ザレた様相の中にまだ滝が控えていた・・・ 最後の7m滝はフリーで登ったが結構スタンスも細かいので
現場監督さんにはザイルを出す。ここから階段状のナメが続き、急に水流が消える。
右の子尾根を詰めると赤テープのある尾根に出た。これが1ノ沢と2ノ沢を分ける尾根と思われる。下降ルートは北沢なので、赤テープに
導かれながら、この尾根を登って行った。途中岩小屋があり、ブランデーの瓶が落ちていた。
後日判った事だが、1ノ沢と二ノ沢の分岐尾根に踏跡があるらしく大滝アイスでは使われるらしい。赤テープに沿って降りていれば一ノ沢出合に簡単に
戻れるかも知れない。
当初の計画では1914ピークの東側のコルから北沢に下降する予定だったが、高度計はすでに2000mを越えていた・・・変だなと感じてはいたが
"天気も下り坂で気圧が下がっている"と思って居た事と
"稜線を多少東に移動すれば良いか" と考えながら稜線に12:10に到着。高度計は2100m付近を指していた。時間的には予定通りだったが、
やはり予定より西よりに出てしまったようだ。稜線を東に少し進むと残念ながらキレットになっており、仕方なく小尾根を利用して北沢に下降を開始した。
しかし、この小尾根が急傾斜で落ちていく。"50mザイルがあれば" と懸垂で20m程下降。すると小尾根ではなく岩峰であることが判った。
潅木の本数も少なくあと2回は懸垂が必要で次は懸垂トラバースとなりそう・・・それでも何とかなると判断して現場監督さんに降りてきてもらった。
彼がロープを回収しようとしたら、なんとロープ落下直後にピクリとも動かなくなってしまった!!! 結び目も無いのに何で???
どうにもこうにもビクともしない・・・監督さんの責任では無いのに責任を感じたのか「見てくる」とのこと。。。フリーではあまりに危険なので、
手元に手繰り寄せた分のザイルビレイを取り、スタンスホールドの少ない垂直に近い3m凹角を「もうゴボウしかない」といって突破してくれた!!!
10mほど登った所でロープが落下した際、下の枝に巻きついていたとの事。
ホッとしたのはつかの間、2回目のトラバース懸垂をかける。目標目指して左にジリジリ移動、最後は振り子でヤブを掴みなんとか成功。
この高さなら下には降りれそうだ♪ロープも回収でき、3回目の懸垂で岩峰から降りることが出来た。時間は13時55分。
ガレを下り、さらにもう1回懸垂を加え、さらにさらに大きなクマに遭遇してようやく北沢本流に出た。高度計は1825mを指している。
これが本当ならかなり上流だ・・・時間は14時55分。。。
"精進ヶ滝上の林道に出る為の踏跡が暗くなると判らなくなる可能性が高い"という状況を考えると、ちょっとタイムアウト的な感じになってくる。
懸垂するような滝が出てこない事を祈って下降するが2段10m滝が降りれず懸垂。その先でとどめの50m大滝が現れてしまった!
やはり大滝上だったか・・・
時間は15時52分・・・ここで監督さんに「ごめんなさい」宣言をする。
土曜に見た天気予報では月曜は雨・・・仮に今日戻れなくても下れるだけ下っておかないと翌日も帰れない羽目になってしまう。
50m滝は落ち口から15m程度はなれた右岸側から中段テラスに向け1回目の懸垂。テラスを右岸側にさらに20m程トラバースを掛け
2回目の懸垂で意外に簡単に降りることが出来た。
さらに、そこから右岸に釣師が利用?と思われるかなり明瞭な踏跡を発見♪、この踏跡は残念ながら南沢出合まで続いてはいなかったが、
大幅な時間短縮となった事は間違いない。16時55分に見覚えのある北沢/南沢出合にかかる5m滝に到着♪
ハーケン1枚打ち懸垂で滝を降りるがバックアップシュリンゲを下に落としたとき水中の木の根に引っかかった様で、
現場監督さんがズブ濡れになりながら回収。さらに南沢出合の釜で一泳ぎ。ここで高度計を修正すると誤差数十メートル程度だった・・・
北沢/南沢出合から精進ヶ滝間はザイル無で下降していける。最後の不安要素。右岸林道に上がる踏跡が見つかるかだが、右岸に20m滝で
出合う枝沢から50m程下った右岸の子尾根。おそらく此処しかないだろう。と思ったところに木に透明テープが巻きつけられていた。このポイントから
上を見上げるとさらに上方に緑色のテープが巻きつけられており、明らかに此れが林道へつながる踏跡と確信できた。時間は17時42分。。。
テープは見辛いが適当な間隔を置いて付けられている。150m近く上がって谷筋を横断。この辺りからトラバースに掛るが途中で道を見失う。
標高は1450mを超えている。藪はないのでとりあえず東に東にトラバースをかけ、1350mに位置する林道めがけ下降をしていくと、
その通り1350m付近で林道にぶつかった。時間は18時48分。。。ぎりぎりヘッデン付けずに車に戻ることができた。。。
今シーズン沢一発目の現場監督さん、スミマセンでした(^^)ゞ
P.S:一ノ沢はハイライトの150m大滝以外にも登れる滝も多く飽きさせないお勧めの沢。今回のルートの場合、初日150m大滝上のテン場まで行かないと
翌日が苦しくなる。沢慣れした少人数パーティ以外では2泊した方が良いだろう。最後の詰めはなるべく東寄りに詰めると北沢への下降が楽になると思う。
滝の直登もさることながら、高巻きのルートファインディングや、懸垂下降に技が必要になってくる場面が多かった。
計画通りに詰めるには右岸枝沢の”中滝”側を詰めるのが正解だったのか・・・?
テン場は大滝上までは至る所で見つかる。北沢もいたる所でテン場は見つかる。北沢へ下る場合はザイルは45m以上must。
アイスの記録を見ると一ノ沢左岸尾根には踏跡があるらしい。確かに赤テープのある尾根に出たのでそれかもしれない。これを利用して下れるなら
車1台でもアプローチ可能だし容易に下れるので圧倒的にお勧めかも・・・
。。。まぁ北沢の大滝も見れたし、これはこれで無事終了したんでこんなルート取りもありますよ!・・・ということで。。。(^^)ゞ
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