2012年10月13,14日 妙高 真川 鍋倉谷

メンバー:SACHさん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム 靴:フェルト
地形図:妙高山、湯川内
遡行図はこちら

上信越国境の沢を計画していたが、天気の都合で急遽、妙高の沢に転身。この山域、登山大系には『遅くまで雪渓が残り、明るい花崗岩のスラブ状滝は皆無で・・・陰鬱な沢が多い』
と評判が悪い。そんななか、真川鍋倉谷は割と人気のある沢らしく、WEBでも記録が散見。そのなかでも相互リンクさせていただいている"すうじい"さんの記録に詳しく書かれており、
1984年時点の遡行図を利用させていただく。彼らは沢中2泊で抜けた様だが日帰りで抜けた記録も多く、今回残雪無しの10月という事もあり1泊2日で、下山ルートを笹ヶ峰登山口にするか
火打山を越えてヌルイ沢下降で杉ノ沢橋に戻るか2案を考慮した計画で企画する。なお、自宅に買い置きしていたと思っていたアクアステルスの靴がなく、今期初のフェルトソール遡行となった。

アプローチ:フィット
20:30小金井発→21:07栃木IC→23:05松代SA、6:50同発→7:20妙高高原IC→7:53杉ノ沢橋
初日: 8:20杉ノ沢橋発→8:50ヒコサの滝下→11:02ヒコサの滝上→11:42第1ゴルジュ終了→(スローペース遡行)13:43惣兵衛落谷出合
    →15:30サクラ谷出合(行動終了)
二日目: 7:00サクラ谷出合発→8:18第2ゴルジュ終了→9:35第3ゴルジュ入口→11:25第3ゴルジュ終了→11:35-12:35 1880m広河原
     →14:00登山道着→14:
22高谷池小屋→15:45笹ゲ峰登山口着→16:08杉ノ沢橋(3.3km走った)

鍋倉谷の基点は県道39号線を進んだ杉ノ沢橋になる。笹ヶ峰登山口に下山する場合、笹ヶ峰登山口→杉ノ沢橋間は3.3kmの緩い下り坂になるので、
登山口に自転車をデポしておくと帰りはかなり楽になる。(今回バタバタで、そこまで頭が回らず、結局この区間は走って車を取りに行った・・・)
笹ヶ峰登山口を含め携帯はdocomoでも繋がらない。杉ノ沢橋脇に5,6台の駐車スペース有。

杉ノ沢橋から遊歩道を使ってヒコサの滝観瀑台経由で入渓する記録もあるが、1泊2日なので沢通しで進む。真川左岸につられた工事車道を進むと
すぐに鍋倉谷に出る。一つ目の堰堤があり、この先で左岸の護岸工事が行われていた。最初の4m滝は左壁を登るが、フェルトソールのフリクション
レベルの低さに愕然。。。こんなんだったけ??? ナメ床な様相を進み、沢が左に屈曲すると鍋倉谷最大の"ヒコサの滝" 2段30mが見えてくる。
杉ノ沢橋横の駐車スペース(カーソルあてて)
入渓付近の工事現場と最初の4m滝(カーソルあてて)
ナメ床から左に屈曲すると・・・(カーソルあてて)

ヒコサの滝は、深い釜を持ち、泳がないと直接取り付けず、仮に泳いだとしても水流左は直登不可能。水流右側に弱点があるのかは、左岸側にリッジが
邪魔をしており手前からでは確認できない。ラバーソールではきわどいヘツリで覗き込むことも可能かもしれないがフェルトソールだと不可能。。。
時間もあるし、水流右に弱点があるかを確認したくもあり、リッジ右側のスラブをザイルを伸ばして登る。見た目易しそうだが、岩が結構脆くフェルトソール
のグリップ力も無く、リッジまで登るのも一苦労。リッジ上部の細い灌木の根まで支点も取れなかった。なんとかリッジまで登ったが、脆いナイフリッジに、
立ち上がることも恐怖を覚える。水流右側もなんとか見たが、ボルト連打しないと、とてもじゃないけど登れないレベルだった。。。
このままナイフリッジを詰める事もかなり危険。。。仕方なく懸垂下降して仕切り直す。
ヒコサの滝(クリックして)
水流右のナイフリッジ
スラブからナイフリッジに向けて登ってみる
ナイフリッジから見た水流右壁

巻くとなると、スラブ右の草付きになるだろうが、途中灌木がない模様。スラブと草付きの境界ラインで登ってみる。5m上がった所にある灌木以降、
安心できる支点は得られない。ラバーソールなら簡単だろうが、乾いた岩でも滑るフェルトには苦労させられる。1箇所岩にハーケンを打ち、
そのままスラブを上がって行こうとしたが、やはり脆いので30m程上がったところから、やばいトラバースで草付きに逃げ込む。ここから支点となりえる
灌木までは50mザイルでも届かないが、SACHさんが5m程登ってくれてギリギリ届いた。

2ピッチ目はこのまま大きく高巻いてしまえば良いのだが、"ネマガリタケの笹薮が凄い"とか書いてあった記録を思い出し、ショートカットルートを見出す。
灌木を掴みながら進むと、スラブの最上部に到着。脆い岩壁のところに最細部20cm程度の脆そうなバンドが伸びていた。手前でハーケンを打ち、
恐る恐る横断、なんとか足元が崩れず成功。横断直後頭上の灌木に支点をとってコールする。ここからはヒコサの滝上からはじまる第1ゴルジュが見える。
懸垂1回でヒコサの滝上20m程上流に降り立った。
ヒコサの滝1ピッチ目(カーソルあてて)
2ピッチ目の激怖バンド(カーソルあてて)
第1ゴルジュが見える(カーソルあてて)

第1ゴルジュ内、2段5m滝は左から、4m幅広滝は右から超える。アクアステルスなら何の問題も無いが、"フェルトだとこうも違うのか"と言った感じ。
他に厄介な滝は無く、第1ゴルジュを終了。沢は急に平凡な様相になる。周りの紅葉が美しい。
ヒコサの滝上から
2段5m滝と4m幅広滝(カーソルあてて)
あとは癒し系ゴルジュです(カーソルあてて)


日帰りで抜けた記録もあり、標高の高い所で幕営すると寒いかも・・・ということで、今日の終了点を鍋倉谷/サクラ沢出合とし、スローペースで進む。

惣兵衛落谷出合はY字状で、インゼルと思わせるような出合。その後も問題になる滝は無く、左直角に3m滝で出合う(1:1)の二俣が鍋倉谷/サクラ沢
出合になる。
第1ゴルジュから様相が大きく変わる
惣兵衛落谷出合
鍋倉谷/サクラ沢出合

100m程手前の右岸に薪の多い良いテン場があったので、今日はここで行動終了とした。0℃用シュラフとシュラフカバー、保温シャツ+カッパで寒い思いを
せず寝る事ができた。
二俣手前テン場
薪は豊富です♪



二日目
朝、気温を測ってみると1.9℃!!! (1:1)二俣を左に入るとすぐに第2ゴルジュになる。2m滝を左から超え右に屈曲したところに5m滝。乾いた右壁が
ルートだが、フェルトだとフリクションが足らず登れない。ここはアクアを履いてるSACHさんが空身でリード。上がってみるとハーケンがべた打ち &
きれいなテープシュリンゲが足されていた様だ。乾いた岩の少し右側から上がれば、小さなスタンスがあり、フェルトでも登れるかも・・・
鍋倉谷本流に入ります(カーソルあてて)
第2ゴルジュ最初の2m滝
5m滝(カーソルあてて)

5m滝上は間髪入れずに2段4mCS。釜は深く、ルートはのっぺりした左壁。よく見ると真新しいリングボルトが1か所打ってある。「これムリなんじゃない!?」
って感じだが、SACHさんに言わせるとこれがフリーでいう5.8〜5.9っていうレベルらしい。まぁ岩は脆い部分もあるけど・・・。。。これを登れないと、先ほどの
5m滝も含め、戻って高巻かなければならない。。。ここはザイルを付けてリードするもフェルトだとギリギリ立ち込めると言った状況。いつ落ちても
おかしくない。やっとの思いでリングボルトに手が届き、もちろんA0。浅打ちボルトだがどうやってボルト打ったんだろう?
これで安心という事も無く、ここからも細かいスタンスとホールドしかない。"ダメかもー"と思いつつ、一番まともなスタンスに足を乗せ、上に良いホールドが
あることを期待したが全くない。この姿勢では1分も持たないので、そのまま体全体のフリクションでなんとか這い上がった。。。 ここだけで、完全に息が
上がってしまう。アクアソール慣れした自分のひ弱さをまざまざと感じた。SACHさんはゴボウでクリヤー。

第2ゴルジュの核心はこれで終了。しばらくゴルジュが続くが突破に問題は無い。ゴルジュを抜けるとマズマズのテン場もある。
苦労した2段4mCS(カーソルあてて)
2段4mCSを超えると難所無し
第2ゴルジュ終了です。

第2ゴルジュから第3ゴルジュの間は概ね平凡な様相だが、あばら骨の様な文様をした岩盤も見受けられる。左岸、荒れたスラブ状を見上げるとオベリスク
を発見。岩穴を潜る滝もあり、紅葉も素晴らしく飽きさせない。7月下旬くらいの記録を見るとこの辺りも雪渓に埋まっているようだ。
第2ゴルジュを過ぎてのナメ
火山特有の様相か?
左岸オベリスク

暫く進むと7m滝が現れる。ここから第3ゴルジュとなるようだ。この滝は水流左を簡単に登れる。この上に控える9mCS滝は釜が小さいながらも深く、
ちょっと厄介そう。巻きは左岸だが、右壁から取り付いてみる。水流を横断するところでバランスを要求されるが、失敗し釜に落ちてしまった。。。
足が届かず、あたふたしながら戻る。10月で釜にドボンは致命的だが、幸い陽射しが強く、思ったほど寒くは無い。高巻きしようか悩んだが、空身で
もう一度取り付いてみる。水流を横断するところで右壁にアンダーホールドがあり、体を引きつけ、水流横断に成功。水流左を直上し、大岩下でピッチを
切る。ここも幸いに陽が差してそんなに寒くは無い。残置支点もありハーケンを打ち足して荷揚げ。SACHさんにも上がってきてもらう。ここから大岩上に
上がるのだが、水流側かそれとも右岸側の狭い凹角か悩むところ。残地を掴んで水流側を覗いてみると、スタンスが少なく悪そうなので右岸凹角に
取り付く。凹角内に乗り上がるのが核心だが、どうやって打ち付けたのか、壁に古い軟鉄ハーケンがあり、これにシュリンゲを掛け、空身で足を乗っけて
這い上がる。ハーケンを打ち足し、バック&フットで凹角内をずり上がって滝上に出れた。
第3ゴルジュ入り口の7m滝
9mCS滝
空荷でリベンジ(カーソルあてて)
凹角内をずり上がる

第3ゴルジュはこの先も続くが難所はここだけ。ゴルジュ内で左岸から2本の枝沢の滝を見た先にテン場もあるが、第3ゴルジュを抜けた先に極上の
広河原があるので、ここはパスした方が良い。両岸切り立った壁の中の3m程度の小滝を超えていけば、第3ゴルジュが終了。
第3ゴルジュ内小滝
両岸が切り立つ
問題なしです
第3ゴルジュ最後の4mヒョングリ滝

ここにも幕営適地があるが、その先の3m滝を超えた1880m地点で広河原となる。風が強くなければ、ここで幕営するのがBESTでしょう。

ここで、濡れた体を乾かすためたき火休憩したのだが、火の勢いが強く、短パンを焦がすは、髪の毛を焦がすは・・・昼間の焚火は炎が見えないので
要注意(笑)
3m滝を超えると・・・
1880m地点広河原

ここから沢は右に大きく屈曲。地形図では火打山に詰めあがる沢筋も確認できるがガレ沢だった。"天狗の庭"に詰めあがる沢筋が本流筋になる。
石積みの小滝を超えていくと、両岸の灌木が若干うるさい感じになるが、藪漕ぎにはならず、"天狗の庭"に出た。 湿原でフィナーレを迎える沢は結構
多いが、ここは特に美しい。湿原からみる火打山が"やたら絵になる"とおもったら、百名山だったと知るのは下山した時だった。(^^)ゞ
広河原から東に向けて進みます(カーソルあてて)
源頭の様相です
終了点の”天狗の庭”

ここから高谷池まで20分程度。ここも湿原がひろがり美しい。季節限定の高谷池ヒュッテの前には多くのハイカーが休憩していた。
笹ヶ峰登山口まで駆け下り、SACHさんと荷物をおいて、杉ノ沢橋まで走って車を取りに行って終了となる。
高谷池
高谷池ヒュッテ
笹ヶ峰登山口到着


P.S:"天狗の庭"で感動フィナーレとなるのは中アの中御所谷と同じ感覚。雪渓が無くなり紅葉が美しい9月下旬から10月がお勧め。靴はフェルトソールだと第2ゴルジュで
   苦労します。ザイルは、ヒコサの滝を大高巻き(観瀑台から入る?)すれば30m1本で足ります。雪渓の状態で遡行タイムを大きく変わると思いますが、足の揃った小人数
   パーティなら早出すれば日帰りでも抜けられると思いますし、1泊2日で火打山を越えてヌルイ沢を下降して杉ノ沢橋に戻るのも良いかと思われます。

遡行図(クリックして)



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