2012年10月20,21日 三国川 栃ノ木川 丹後沢左俣

メンバー:Σさん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム 靴:アクアステルス
地形図:兎岳
遡行図、概念図はこちら

2011年夏の新潟豪雨で三国川十字峡へ車で入れなくなったと聞いていたが、”12年7月から三国ダム左岸の道が十字峡まで通れる様になった・・・”と知ったのは
9月下旬の事だった。。。10月に入ってから気温が如実に下がっていく中、Σさんと都合が合い、越後の沢を計画。大チョウナも候補に挙がったが、すでにWEB上で
多くの記録がアップされているし、日曜の天気が今一つという事もあり、三国川十字峡を基点に、栃ノ木川丹後沢をチョイス。登山大系によると右俣は滝が少なく、
左俣の方が内容が濃いようだ。比較的アプローチしやすい沢であるが、WEBでは7月入渓して途中敗退した記録1件しか見ない。新潟豪雨後の様相を確認しつつ
調査遡行してみる。

アプローチ:フィット
19:40自宅発→8:10真岡IC→22:00塩沢石打PA、5:40発→6:30十字峡着
初日: 7:00十字峡発→8:40丹後沢出合→9:55 30m大滝下(左リッジ偵察)→10:56 30m大滝上→11:53二俣→13:17ゴルジュ入り口
     →13:45 20m滝下→15:35 20m滝上→奥ノ二俣15:50(行動終了)
二日目: 7:02奥ノ二俣発→9:15稜線登山道(利根川水源碑往復)、9:35下山開始→11:35林道→12:05十字峡着

Σさんは遠くからアプローチなのに越後はいつもオール下道でやってくる。三国峠超え片道6時間を苦も無く来るのは、脱帽です・・・
一方、私は北関東自動車開通でアプローチ3時間掛からず。沢登りを始めた頃に比べると本当に楽になった。

三国ダム右岸の道はまだ工事中だが、左岸道路は問題なし。十字峡トンネルを過ぎたところで通行止めになっていたが、2013シーズンには全線開通する
だろう。駐車スペースは6,7台だが、ここが満杯になったらトンネル手前(下津川橋)に広大なパーキングが有るので、ここまで車が入れれば、大差はない
はずだ。Softbank携帯は三国ダム下までは繋がる。

十字峡からの栃ノ木川左岸林道は問題なく通れる様で、さらに舗装工事(?)まで進められているようだ。栃ノ木橋も流されることは無く健在。さらに
ここから先の栃ノ木川左岸の踏跡も取水堰堤まで崩壊する箇所なく続いていた。立ちはだかる取水堰堤は小さく右から廻り込んで沢床に降り立つ。
十字峡駐車スペース
行く手を阻む栃ノ木川取水堰堤(カーソルあてて)
取水堰堤を右から巻いて超えます

左直角に曲がった最初の淵は、コウガイ沢に行ったときはフェルトソールで、お助け紐を出してもらったが、今回アクアステルスの為、そう難儀する事も無く
左岸をへつれた。2条大岩滝を超えると平凡な様相になり、しばらくすると左岸から顕著な沢が入る。これが丹後沢だ。
栃ノ木川最初のゴルジュを経つる(カーソルあてて)
栃ノ木川2条5m
丹後沢出合(カーソルあてて)

丹後沢に入るとすぐにゴルジュ。4m、3段8m滝を越すと、早くも厄介な5m滝が現れる。左壁から行こうとしたが断念。私は小さく右から巻き、Σさんは
左から巻いた。沢がクランク状に曲がると、またしても直登不能な5m滝。右岸ルンゼで巻こうとしたが、悪く、先ほどΣさんが巻き降りた所まで戻り巻く
事にした。とはいえ10分も掛からない。大高巻きした訳では無いが、5m滝上には3m、4m、2mと小滝が連続しており、降りた所は一連の滝の上になる。
丹後沢最初のゴルジュ
5m滝に挑むも、ここは巻き
次の5mも登れず手前から高巻く

次の傾斜の緩い小滝を超えると、早くも丹後沢最大の30m大滝が現れる。『登山大系』には"50m"とあるが精々30mと言ったところだろう。水流左には
リッジが20m強程伸びており、その上でのっぺりした岩が行く手を塞ぐ格好になっている。一応、調査ということで、リッジを登り、登り切った所でザイルを
出して直登出来るかを探る・・・。
のっぺりした岩は、完全な1枚岩でリス無し、ガバも無し。ここで水流が流れる岩に乗り移る所が核心だが、A0しないと不可能。ハンマーでジェードル部の
土を落すと、カムが決まりそうな溝になっていたが、私が持って行った#.5カムでは若干サイズが小さく決まらない。ここでカムが決まって水流側に乗り
移れたとしても、その先もホールドスタンスは少ないため微妙なフリクション登攀が要求され、さらにボルト1本くらいは打ちたくなるだろう。
ここで、調査を打ち切る。カムが決まればクライマーさんなら登れるかも・・・?
30m大滝(クリックして)
リッジ最上部まで登る(カーソルあてて)
リッジ最上部から見た水流側の岩(クリックして)

大滝が登れないと、巻きになるのだが、『登山大系』によると右岸側の"15m滝から・・・"との記載。そちらに目をやると、こちらも15mは無く7mくらいの細流に
なっている。この滝のさらに左の草付きから巻くのが一般的だが、この滝の水流左から取り付いて、7m滝上に上がり、大滝落ち口を目指す。
時間はそんなに掛からない。これで、ゴルジュは終了。730mで左岸枝沢が入り、本流2mCSを超すと砂地のテン場を発見したが、増水には耐えられない。
高巻ルートの右岸枝沢7m滝(カーソルあてて)
大滝落ち口から覗き込む
河原状からすぐにゴルジュへ(カーソルあてて)

ここから先は両岸草付きの明るいゴルジュ風。雪渓が残っていると厄介だが、さすがに10月だと雪の多いと言われた今年でも皆無。精々5m程度の滝が
散見されるが通過に問題は無い。途中、ナラタケやミズをGETする。ゴルジュが終了し、河原状上部左岸にちょっと整地すればOKのテン場を発見。
ここから10分かからず左俣/右俣を分ける二俣となる。水量比は(1:1)。右俣は滝が少なく、良いとエスケープルートになるだろう。右俣にちょっと入った所
にも整地すれば何とかなりそうなテン場がある。ここまで来ておけば翌日夕方には下山できるだろう。時間はまだ12時前、ここは左俣に進路を取り先に
進む。
6m階段状と2段7m滝(カーソルあてて)
河原状上部左岸のテン場
右俣に少し入った所から二俣を見下ろす

左俣は2段5m滝が掛かり、左から超える。ここから先も小滝が散見。テン場も990m付近で見つけられた。ここから少し進むと滝で出合う三俣が現れる。
登って解ったが、真ん中の水流と右の水流はインゼルとなっており実は二俣。水流の一番多い2段滝を登るが下からは2段に見える上に3段目がナメ滝状
で流れ、3段15m滝となっていた。下段は左壁に取りつき水流を横断して右の水流のさらに右から中段を登り、最後のナメは微妙なフリクションで
突破した。

左俣最初の2段5m滝
2条5m滝と990m付近テン場(カーソルあてて)
三俣を思わせる二俣(カーソルあてて)

ここからはしばらくゴーロ状。1050m付近に良いテン場を見つける。ここが一番BESTかもしれない。4mトイ状をこえさらにゴーロを詰めると再びゴルジュ

なる。ここは地形図にも書かれてあるゴルジュだ。時間は13時20分。明日の天気が今一つとの事なので、今日中に抜けておこうという事になる。最初の
3m滝は簡単だったが、次の4mが私だけちょっと難儀。さらにその上の4m滝を超えると大滝が見えてくる。近づくと15m級の滝だ。
1050m付近。これがBESTなテン場
またまたゴルジュに(カーソルあてて)
15m滝が現れる

幸いな事に右岸草付きから高巻きは可能。ただ水流の左右どちらからも登れそうでもあるので、ザイルを出して見る。私は水流左、Σさんは右が良いと
判断。傾斜が緩い水流左に取り付いたが岩が脆く、1発ハーケンは打てたものの1歩が出ず断念。ハーケンを抜いてクライムダウン。照れ笑いを浮かべ
ながらΣさんを選んだ水流右に移動。10m上がった所にバンドっぽいラインが見え、"ここを水流に向かってトラバース出来るんじゃない?"との事。
"どーかなー???"と思いつつ私がそのままリード。確かにこちらは水流左よりも岩は安定。V級レベルでバンドと見た高さまでノーピンで上がったが、
バンドと見た所はやはりかなり悪くスタンスは滑った外傾で幅も狭くホールドも皆無だった。とりあえずここでハーケン打たないと、どーにもこーにも
ならないのでリスを探すが、打ちたいところにはリスが無い。。。なんとかクロモリを打ち込むが1cm程度しか入らない"超浅打ち"。まぁこれで気休めセルフ
を取り辺りを見回す。あと2m弱上がれれば天国のバンドが落ち口まで伸びているが、スタンスホールドが全て甘く。とてもこの状態で進む気になれない。
さらに右は泥壁で岩も脆そうでムリ。とりあえずこの状態だと懸垂も出来ないのでもう一発ハーケンを打てる場所を探す。リスは今、足を置いている
スタンスにあるので、一段降りてハーケンを打ち込むと、叩いた音は今一つながらも完全に奥まで入る箇所があり一安心。二人立てる広さは有るので、
リード交代のつもりでΣさんにも上がってきてもらう。
15m滝直登ルート(カーソルあてて)
ここからトラバースと思ったが悪かった(カーソルあてて)
Σさんに上がってきてもらう。

Σさんも、バンドを見た瞬間、これはムリとの事・・・。やはり私と同じ判断。
「左から巻けるんだよね?」
「うん楽勝で・・・ただ、もうそこまで上がれれば良いんだけどねぇ」
「ショルダーかな」
とやり取りしながら二人でタワシで周囲の岩のヌメリを落す。1か所スタンスを見つけたのも大きかった。ここから私が右足左足と2歩上がると1っ箇所
ガバではないがホールドを発見。踵をΣさんに抑えてもらい安心感も倍増。ここで、リスを見つけてハーケンを打つ。かなり良い感じで奥まで入ったが、
一瞬岩も動いた様な・・・まぁ静荷重なら十分耐えれれでしょう。シュリンゲを掛けA0で落ち口側に1歩トラバース。もう”天国のバンド”が目の高さに見えて
いるあと2歩上がれればOK。甘いスタンスホールドしかないがもう行くしかない! 足が滑らず"天国のバンド"に上がれた・・・。。。
支点を取りながら落ち口にトラバース2m上がって終了。Σさんは全部ハーケンを回収してくれフォロー。時間は15時半。ここだけで1時間半くらいかかった
かも・・・
この上に天国のバンドが・・・
天国のバンドが目の高さに・・・(クリックして)
Σさん。ハーケンを回収してフォロー(カーソルあてて)

ちょうどいい時間なので、テン場を探しながら進むと奥の二俣に到着。この下で整地すればなんとか・・・という場所を見つける。Σさんを置いて少し右俣に
入りテン場を探すがいい場所が無く、大滝にぶつかって引き返す。まぁ落石の危険が無いといえば嘘になるが、まぁ薪もそこそこあるので、奥の二俣で
行動終了とした。15分ほど整地して、草を敷いて結構極上な感じになった。六日町の街明かりが見えるのでdocomoなら電波が届くかも。
ゴルジュ最後の小滝を超える
奥の二俣
奥の二俣で幕営(カーソルあてて)


二日目
薄曇りのなか、放射冷却も無く、朝気温を測ると7℃だった。。。奥の二俣は右に進路をとる。二俣にかかる6m滝は右から巻く。少し進むと、昨日ちらっと
見た大滝に出る。滝に近づくと30m滝くらいにしか見えないが、4段70mの大滝。水流が少ないので迫力に欠けるがなかなか越後っぽくて良い。。。
左の乾いた所から快適に上がっていける
奥の二俣から右俣に入ります
4段70m大滝と1段目の登攀(カーソルあてて)
2段目から3段目の登攀(カーソルあてて)

この滝を超えた先で伏流になるがすぐに水流が復活。4段15m滝は最後の4段目が渋かったがまぁ問題ないでしょう。この先水流がなぜか増え
最後の二俣となる。右は涸沢だったので迷わず左を選んだが、右の方が沢型が稜線近くまで伸びているようだ。
4段15m滝の3段目、4段目(カーソルあてて)
最後の二俣を左に入る
最後の詰めです

沢型が消え笹薮を15分程度漕ぐと登山道に到着。兎岳方向にに1分も歩くことなく"利根川水源碑"があった。丹後山非難小屋は綺麗だったが、
木の板で扉を覆っていたので、中は見なかった。(板を抜けば利用可)
8合目からの眺めは素晴らしく、足元には丹後沢右俣が見える。紅葉もバッチリ。下りは"利根川水源碑"から3時間見ておけば十分でしょう。
利根川水源碑
丹後山非難小屋
8合目から見た丹後沢右俣の紅葉

P.S:丹後沢は、越後の沢の中では比較的簡単な方だと思いますが、北面の沢という事もあり雪渓の状態で変わりますので、遡行時期は9月以降が良いです。
   ザイルは雪渓が無ければ30m1本でも足りますが、40m以上あった方が安心でしょう。テン場は奥の二俣まで点在しますが多くが多少の整地を必要とする
   ものばかりで、増水に耐えられるところは有りません。早出すればその日のうちに稜線に出れますが、その場合は丹後山非難小屋までが無難でしょう。
   魚影は栃ノ木川含めて一切見ませんでした。


遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)



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