2012年11月3、4日 秩父 浦山川 大久保谷

メンバー:SACHさん、ひろた
装備:ザイル8mm×30m、カム 靴:フェルト
地形図:秩父、武蔵日原
遡行図、概念図はこちら

奥秩父の沢は、笛吹川流域、滝川流域、入川流域・・・と遡行を通じてある程度イメージは掴めているのだが、唯一全く足を踏み入れていない流域が浦山川流域だった。
地形図を見ると、どの沢筋にも林道が伸び開発が進んでいるようで、『奥秩父・両神の谷100ルート』でも冠岩沢、細久保谷といった短い沢が紹介されているのみ。
しかし、なぜだか一番開発が進んでいない様に見える大久保谷が紹介されていない。他のガイド本を見ても、この沢を取り上げている記録は無く。ボサ沢なのかと思いきや、
WEBで検索すると、2006年に鎌倉滝まで遡行された1件が掲載されていた。おそらく1998年に完成した浦山ダムの影響かと思うが、他に遡行記録を見ないのか不思議だ。
地形図を見ると終了点となる天目山林道と大久保谷左岸林道をどう繋いで下山するかがポイントのよう。11月という事もあり1泊2日で計画し調査してみた


アプローチ:フィット
18:00自宅発→(R4,R50)19:10佐野藤岡IC通過→19:45太田→20:38花園IC通過→21:11西武秩父→22:00おおくぼ橋横駐車スペース(基点)
初日: 7:25基点発→7:47大久保谷入渓→9:00障子岩ノ滝下→10:12近場ノ谷出合(私道横断点)→14:52カマクラ沢出合→15:16赤岩沢出合
     →15:20中ノ沢/大クビレ沢出合(幕営)
二日目: 7:25出発→9:05 1190m二俣(右俣へ入る)→10:05天目山林道着→11:35天目山林道終点→12:20大久保谷左岸林地形図道終了点
     →13:40基点P


大久保谷の基点となる”ネイチャーランド浦山” を目指す。道はさくら湖を一周できるようになっているが、右岸道路から入ると夜間ゲートが
しまっており、ネイチャーランドに近づけず一旦引返して左岸道路に入る。こちらも”土砂流出の為進入禁止”の看板があり簡易ゲートが設置
されていたが、車が通れるスペースが空いているので、そのまま侵入すると、確かに土砂流出は数か所あったが問題なく通れた。
ただ、”おおくぼ橋”から先、ネイチャーランド入り口はしっかりしたゲートで閉鎖。”おおくぼ橋”を対岸に渡った所に5台くらいの駐車スペースが
あるのでここに車を停める。携帯はsoftbankでも通話可能。
朝、起きると、数台の車が入っており、なんと橋の上から釣り糸を垂らしている。話を聞くとワカサギが釣れるらしい。ちなみにネイチャーランド浦山は既に
閉鎖されている様だった。 

大久保谷へは左岸に登山道が中流部まで伸びているが、入渓はネイチャーランドを回り込んで、一つ目の堰堤上から入る。ここまで踏跡あり
おおくぼ橋右岸側の駐車スペース
既に閉鎖?のネイチャーランド浦山
苦無く大久保谷に入渓(カーソルあてて)

今年は、紅葉が遅い事もあるが、11月に入ってもこの辺りはまだ色づいていない。平凡な様相から滝の無いゴルジュに入り、右岸大ガレを過ぎると、
淵がところどころ出てくる。さすがに寒いので腰すら浸かりたくない気分。
最初のミニゴルジュ
こういった淵が多いです
2条6mを左の水流から登る

淵を左右にかわしながら進むと、地形図には無い側壁が大きく切り立った悪いゴルジュに入る。ここにも深い淵があり、経つりながら進むものの、
泳がないと正面から見れない位置に滝が隠れているのが解る。右壁を登るが、滝に近づくトラバースも渋い。するとここに残置ハーケンが打って
あった。一応、長いシュリンゲを掛け、SACHさんを待機させてトラバース。さらに頭がつかえそうなバンドを空荷で這い上がると、ようやく隠れた滝が
見えた。おそらくこれが障子岩ノ滝だろう。高さは9m程。水流沿いの直登は全く持って不可能。滝の見える位置から左岸壁に出口が垂直の切れ込みが
伸びており、このまま抜けるとしたらこのルートしかない。辺りを見回すと足元にさらに1か所残置ハーケンを発見。ここを登るとしたら空荷だが、岩も
脆そう。少し戻れば巻けそうなので、慎重に引き返す。
障子岩ゴルジュ(カーソルあてて)
右壁の悪いトラバースで滝が見れる(カーソルあてて)
こも垂直壁を登らないと抜けられない。

高巻きは滝から30m程手前の左岸。30m強程上がると遡行中見えていた壁の上に出れ、落ち口に向かってトラバースを掛けるが、さらに上に壁が立ち
はだかっており進めない。先ほど見た垂直の切れ込みを登ったとしても、結局はその先で高巻きになってしまうようだ。引き返してさらに高巻くも壁は結局
3段になっており、これをすべて巻く形になった。

極力小さく巻くが、障子岩ノ滝上に出ても切り立ったゴルジュは続き、30mザイルでは下まで届かない。少し降りてはトラバース、少し降りてはトラバース
続け、結局このゴルジュ全体を巻くことになってしまった。。。振り返ってゴルジュを見ると側壁高さは20m近く、下部はハングしていた。障子岩ノ滝上は悪い
滝は無さそうなので、長いザイルで懸垂すればゴルジュを抜けれるかもしれない。
断念して引返す
垂壁ですぐには降りれない(カーソルあてて)
障子岩ゴルジュ全体を巻く(クリックして)

ここから少し進むと大釜を持つ6m滝。どっぷり水に浸からないと取り付く事も出来ず。仮に取り付けても登るのは一苦労。右岸を大きく高巻く。

ここを高巻くと、癒し系の様相に変化。左岸から近場ノ谷が入る。ここには今でも使われている作業小屋がある。さらに地形図には無い作業道(私道?)
がこの小屋まで伸びており、小さい橋が本流に掛かっていた。ここからは、概ね平凡な様相が続く。右岸からマツマラ沢が入り、2段4m超え、2条4m滝
を左岸から巻く所に炭焼き窯や石垣が残っていた。地形図に書かれている左岸の道はこの辺りまで伸びている様だ。
大釜を持つ6m滝(カーソルあてて)
私道が横断する(カーソルあてて)
マラマツ沢出合

この先、右岸からフキアゲ沢が合流。誰も遡行しない沢だから、この先何も無いのかな? と思っていると突如トイ状の10m滝が現れる。直登はムリで、
右のルンゼから高巻くがCSを乗り越えられず、そこから右の悪い斜面を8m程上がってからザイルを出し、このルンゼ左岸を1ピッチトラバースした。
高巻いた直後に5m滝があり、これまた深い大釜を持っており、今度は右岸を小さく巻く。
10m滝(カーソルあてて)
悪い高巻きになってしまった(カーソルあてて)
5m滝、これも釜が深い・・・(カーソルあてて)

沢は概ね平凡なのだが、小滝で沢も釜が深く、濡れないように進むのはちょっと手間がかかる。そうこうしていると、ゴルジュになり、6mCS滝
水流右壁も行けそうかもしれないが、あまり突っ込む気になれず右岸泥ルンゼを上がるが、これも結構悪い。上からザイルを投げSACHさんにあがって
来てもらった。30m近く登って高巻けたが、下降途中で見える次の2m滝も釜が深く取りつけないので、このままトラバースを続けて一緒に巻いてしまう。
この程度の小滝は無数にある
ゴルジュ奥に6mCS滝(カーソルあてて)
高巻途中から次の2m小滝を見る。これも巻いた

この先も6m前後の滝がいくつか現れる。どの滝も水流際は壁がノッペリしており直登が難しい。幸い小さく巻けるので助かる。それにしても小滝ですら釜が
深いのが多いのはこの沢の特徴か・・・
6m滝(カーソルあてて)
2条7m
6m倒木有

左岸から、顕著なカマクラ沢が入ると、大久保谷最大の鎌倉ノ滝15mが現れる。これも登れず左岸を巻くが、上手く巻けば落ち口ジャストに降りることが
できる。ここを過ぎると、幕営予定としていた大クビレ沢/中ノ沢/赤岩沢の合流点も近い。
カマクラ沢出合(カーソルあてて)
鎌倉ノ滝15m(カーソルあてて)
3段小滝

3m程度の小滝を超えるとまず(3:1)で左岸から赤岩沢が入り、この100m先で(1:1)で大クビレ沢と中ノ沢が出合う。当初、帰り道が近い赤岩沢に入る予定
だったが、水量が思った以上に少ないので、明日は中ノ沢に入ることにする。大クビレ沢/中ノ沢の出合で行動終了。軽く整地をしてテン場作成。
薪は大量。寒かった体も一気に温まる。
赤岩沢出合
大クビレ沢、中ノ沢出合
行動終了です


二日目
朝の気温は2.7℃。0℃用シュラフ+シュラフカバーなので暖かく寝れた。 ここから中ノ沢に入る。あとは歩いて詰めるだけかと思ったらまだ滝は出てくる。
2条4m滝を超えると7m滝。。。昨日と違って今日は直登できる物ばかりだ。ただ、水が冷たいので手が悴んでくる。
2条4m
7m滝
3m滝(カーソルあてて)

小滝を突破していくと、中ノ沢に入って最大の10m滝が現れる。水流右から直登可能。この先ゴルジュ内2段6mを超えると三俣を思わせる分岐に出る。
一応(1:1)二俣だが、左俣の先で右岸から細流が8m滝となって水を落としている。さらに左俣本流にも2段8m滝が掛かっており、近くまで行ってみたが
直登は出来そうだ。ここは、帰り道が近い右俣を選択。
10m滝(カーソルあてて)
2段6m(カーソルあてて)
三俣を思わせる(1:1)二俣。 (右に入りました)

しばらく進むと、沢は左直角に折れ、そこに7m滝が掛かる。頭からシャワーを浴びれば斜上バンドで上がって行けるが、左岸を小さく巻いた。
この上、4m滝を超えると、堰堤が現れた。天目山林道も近いと思って左岸を見上げると100m程上に林道のガードレールが見える。堰堤を超えるつもり
で左岸を上がると上にも堰堤があったので、このまま林道まで詰めあがった。
7m滝
最後の4m滝(カーソルあてて)
終了点の堰堤(カーソルあてて)


さて下山だが、荒れた天目山林道を北上していくと、地形図に書かれた所までこの林道は伸びており、1448mピークから東に伸びる尾根でピタリと
行き止まりになる。この尾根はちょうど植林帯の境界になっており、この尾根に踏跡が付けられていた。この尾根を外さずに降りて行けば良い様だ。
途中から植林帯の中に入るが、赤テープも見受けられるし藪漕ぎも全くない。790m付近まで下降すると明瞭な踏跡にぶつかり、ここに看板が立っていた。
これが大久保谷左岸に付けられた道の様だ。あとは、この道を進むだけ。明瞭な道で崩壊も無い。1時間くらいでネイチャーランドが見えてくる。
ただ、トンネル出口にスズメバチの巣があり、カッパを着こんで猛ダッシュで走り抜けての終了となる。
荒れた天目山林道を終点まで進む
この植林帯の尾根まで林道が伸びる(カーソルあてて)
尾根を忠実に。大久保谷左岸道に出ます(カーソルあてて)

P.S:大久保谷は直登不可能な滝が多いですが、水量も多く水も綺麗で、決して退屈な沢ではなく奥秩父(正確には奥武蔵)の代表的な沢として取り上げて良いと思います。
   アプローチも非常に良いのに、なぜ遡行記録が無いのか不思議なくらいでした。日が長ければ日帰り遡行も可能。ザイルは30mあれば足りるでしょう
   フェルトよりアクアステルスの方が良いかも・・・テン場はゴルジュ以外ならどこでも見つかると思います。魚影は・・・

遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)



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