2014年5月3〜5日 南ア 大間川 青ナギ沢左俣→上西出大窪沢下降

メンバー:SACHさん、ひろた
装備、ザイル8mm×40m 靴:アクアステルス
地形図:寸又峡温泉、蕎麦粒山
遡行図・概念図はこちら

GWの4連休。この時期に継続遡行以外で2泊3日程度の沢を探すと南アルプス南部が狙い目。そのなかで、大井川流域の大間川に的を絞る。この大間川流域だと寸又温泉先の
飛竜橋を基点に青ナギ沢にかかる釜滝を見学している記録が多く、流域中の遡行記録としては青ナギ沢右俣の遡行を沢組合という方々がアップしているのみ。。。
そこで、青ナギ沢本流と思われる左俣を狙ってみる。ただ2泊の日程が取れるため、飛竜橋基点で、奥湯沢を下降する案を当初考えていたが、奥湯沢は地形図を見る限り、滝も多そう
で、下降するより日帰りで遡行した方が面白そう。さらに山犬段が車で入れる事を確認したため、山犬段を起点にして、大間川本流筋である最奥の上西出を下降ルートとしたコースに
変更して実行することにしてみた。

16:55自宅発→18:25久喜IC通過→19:40新狭山駅→20:17高尾山IC→21:09相模原愛川IC→22:42新静岡SA、4:45同発→5:00島田金谷→5:35南赤石林道入口
→6:15山犬段着
初日
6:58基点発→10:10大間川本流横断橋跡→11:15青ナギ沢軌道横断点(釜滝下)→14:33西沢分岐(965m)→1070m付近幕営地(行動終了)

二日目
5:40出発→5:46左俣/右俣分岐(1090m)→7:13 1290m(1:1)二俣→9:18稜線着→9:40前黒法師岳→11:02ヘリポート(1690m)
→11:40 1810mピーク→11:48上西出下降開始→13:23上西平沢本流合流→16:11行動終了(958m)
三日目
6:55出発→7:56 889m地点→9:37-10:07上西出/下西出出合→11:00林道→11:43山犬段

今回、基点となる山犬段(1404m)までのルートは険しい山岳林道であるため、管理している”川根本町役場 建設課”で事前に通行可能か確認を取って
おくことを強く勧める。林道は大礼山登山口を過ぎて、939mポイント付近からダートになるが、路面もさることながらに側壁からの落石の方が恐ろしい
印象。このご時世、よく一般車侵入可としたものだ・・・。。。まぁ2WDフィットでもゆっくり走れば、下を擦ることなく何とか山犬段に到着できた。。。

山犬段は3月に榛原川を遡行した時のゴール地点だった事を考えると、ここが基点になるのだから不思議だ・・・。山犬段の避難小屋はとても綺麗で、
定期的に清掃も行われている。駐車スペースは30台以上は可能。この日も、数台の車が停まっていた。

さて、目指すは、青ナギ沢出合。。。地形図を見ると青ナギ沢出合より少し上流で、大間川右岸から左岸に登山道が横断するポイントがあるため、
まずはここを目指して南赤石林道のゲートを超え、山犬段北面の蕎麦粒林道を東方向に入っていく。。。下西出/上西出の分岐の真南辺りを過ぎて、
林道脇の倒壊した小屋がある所に大間川に下降するであろう踏跡を見つけこれを利用。 赤ペンキが丁寧につけられており、下降はしやすい。途中
標高900m付近で、SACHさんが大間川に平行に伸びる地形図には無い踏跡を見つけるが、大間川沿いに登山道が通っていると告げて、大間川本流
まで下降を続けた。。。が、地形図に書かれた登山道は全く無い。。。このまま、沢通しで青ナギ沢まで下降するかとも考えたが、結構水量があり、
渡渉もままならない箇所も現れるのでは・・・と思うと、、先ほどSACHさんが見つけた踏跡を進んだ方が早いと判断し、降りてきた踏跡を100m程登り返す。
基点の山犬段と崩壊した蕎麦粒林道(カーソルあてて)
ここで下降したが、もっと林道奥から下降した方が良い。
下西出/上西出より下流部の大間川。右岸に道は無い

しかし、SACHさんが見つけた大間川と平行に走る踏跡はすぐに不明瞭になり、小さな谷筋が現れては、道が消失し、獣道化したところを慎重に進む
始末・・・。しまいに大きな沢筋で行先を阻まれる格好になり、そこから、とりあえず大間川に降りることに。この沢筋は大きな滝も出てきて、我々も尾根を
懸垂交えて下降。大間川本流に降りたが、激流ポイントで対岸にすら渡れず、本流右岸をさらに川と平行に進んでようやく、大間川本流に降り立つ。
時間はすでに基点から3時間近く経ち9:55。予定より早出できてよかった・・・
900mに位置する踏跡を進む
変な所で降りると対岸に渡れない。
やっと、大間川本流を歩ける所に下降。

ここからは川通しで下降。幸い腰下程度の深さで、渡渉も無難にこなせた。。。地形図の通りの位置で、吊り橋があったが、完全崩壊しており、ワイヤーが
残っているのみ。この先で、左岸に上がってみると、トロッコ軌道跡を発見。これを利用して進むが、朽ちた鉄地形図にあるトンネルは出口が塞がれる
寸前で、掘って這い出る始末で、(トンネルは埋もれても迂回可能)すでにバリエーション化しているといってよい。当初、大間川と青ナギ沢の出合からの完全
遡行を考えていたが、時間も押していたので断念。軌道が青ナギ沢を横断するほんの少し手前から入渓した。ただ、青ナギ沢出合からはゴルジュに
なっており、結構内容が有りそうなので、後続される方は、ぜひ出合から入渓してみてほしい。
吊り橋は完全崩壊(カーソルあてて)
大間川右岸軌道のトンネルも埋まる(カーソルあてて)
青ナギ沢を横断する軌道橋

入渓して鉄橋を潜ると、すぐにハイライトの釜滝となる。2段25m程度で、下段は”これでもか!”というくらい水を飛ばしており、確かに見ごたえのある滝だ。
この滝は直登はムリで、軌道に再び上がって、左岸を大きく巻くが、ここで作業小屋集落跡を発見。自宅に戻って解ったことだが、どうも大間川造林宿舎
がここにあった様だ。複数の釜戸や風呂も、さらに電気も通っていた様だ。地形図ではこの集落から奥の青薙造林宿舎まで登山道が通っていた
ようだが。ほぼ消え去っている。小さく巻いて釜滝のすぐ上に出た。
釜滝2段25m(クリックして)
大間川造林宿舎跡(カーソルあてて)
釜滝上の様相

少し進むと10m滝、水量が多く、右岸枝沢を利用して小さく巻こうとしたらシイタケを発見。2泊分の荷物がさらに重くなる。10m滝上はゴルジュになって
おり、懸垂すれば降りれるが、深い釜なども点在していたため右岸の急斜面をトラバースする。このトラバースは結構悪いので、夏場は沢通しで進んだ
ほうが良いかも。傾斜が緩んだところでノーザイルで沢床に降りる。ここからは沢通し。この先も両岸は急斜面になるので、巻きは悪く、沢通しを勧める。
10m滝右岸巻きでシイタケ発見(カーソルあてて)
10m滝上の様相(カーソルあてて)
巻きは悪いので沢通しで進む(カーソルあてて)

左岸枝沢を見て、さらに進んでいくと6m滝。これを小さく右から巻くと巨岩帯に入る。ここを縫うように進んでいくと、前方に怒涛のごとく水を落とす滝が
ゴルジュ奥に見えてくる。かなり手前から左岸高巻きを覚悟しながら、「せっかくだから見に行こう!」と大岩の間を縫うように進むと30m大滝。幸い右壁が
登れそうなので、ザイルを出して取り付く。岩も安定しておりグレード的にはV。上部では二通りルートを見出せそうだが、直線的に上がり、ラストは木の
根を利用して直上。ビレイヤーが見える所の潅木でピッチを切る。2ピッチ目はザイルを出すまでも無く5mあがって巻き道に出て終了。
6m滝を超えると巨岩帯(カーソルあてて)
巨岩帯奥に大滝が見える
30m大滝を登る(カーソルあてて)

滝上は平凡な様相で、大きく左に曲がると、965mに位置する(1:1)二俣。左は"西沢"というらしい。地形図には西沢を少し入ったところに滝マークがある
ので二俣に荷物を置いて見に行ったのだが、5分ほど進んでも現れないので引き返した。二俣は幕営適地だが、明日の行動を考えるともう少し
進んでおきたい所・・・右俣の本流を少し進むと直登不能な15m滝が掛かっている。ここを左岸から巻いたが、沢床へは10m強の懸垂下降となる。
右岸には地形図に小屋マークのある、青薙造林宿舎の小屋跡が見える。通常15m滝は右岸巻きか?
(1:1)西沢出合
15m滝は左岸を巻いた(カーソルあてて)
青薙造林宿舎跡

15m滝を越えると広河原状。まさか、さっきの15m滝が魚止めじゃないだろうなぁ・・・と竿をだすと、すぐにアマゴが釣れて一安心。この辺りは両岸の崩壊が
顕著だが、右岸に安全なポイントを見つけて、今日の行動を終了する。早速、釣りに出かけるが、今ひとつ釣果は上がらなかったが、9寸近いイワナが1匹
釣れ一安心。
15m滝上は広河原状
1080m付近で幕営
今期初の刺身


二日目
今日は行程が長いので早出する。ちょっと進むと左俣/右俣を分ける二俣となる。水量比は(2:1)で左俣の方が多い。ここを左に入る。3m滝を越えると
8m滝。大巻きになるかと思ったが小さく左岸を巻けた。この先は、小滝が散見。左岸から顕著な枝沢が2本入るが、出合を含め、この辺りに良いテン場は
無いので、1泊2日で青ナギ沢のみを遡行する場合も、我々が幕営した左俣/右俣の出合手前までに、行動を終了するのが良いだろう。
左俣/右俣出合
8m滝へ
小滝と顕著な左岸枝沢(カーソルあてて)

簡単な5m前後の滝をいくつか越えていくと、ミニゴルジュになり4mトイ状滝が行く手を阻むが、幸い左壁を利用して突破できた。まぁ、ミニゴルジュなので、
高巻くことも可能だろう。この先、少し行くと1280m付近でようやく幕営適地が現れた。昨日もそうだったが、ここまで魚影は1度も見ていない。どこに魚止め
があるのかは、結局最後まで解らなかった。。。
小滝を超えていく(カーソルあてて)
4mトイ状滝(カーソルあてて)
これを抜けると1280m付近のテン場(カーソルあてて)

1290mに位置する(1:1)二俣を右に入ると、両岸がザレて来て、正面にいつ落石が落ちてもおかしくない様な危険箇所が出てくる。沢はここで左直角に
曲がる。両岸は切り立って連瀑帯に入る、3m滝は左バンド状を、5m斜瀑は容易。6m滝はヌメる水流右を直登して超えた。
1290m(1:1)二俣
今にも崩壊しそうな壁(カーソルあてて)
5m斜瀑と6m滝(カーソルあてて)

ここを過ぎると平凡な様相になり、1350m付近で幕営適地を発見する。平凡な様相はこの先も続き、1400m付近で右岸枝沢が入る。ここはエスケープ
ルートとして使えるだろう。さらに本流遡行を続けると再びザレになり、二俣になる滝が現れる。逆光でよく見えなかったが、右に入ると前黒法師岳山頂
直下の大ガレに入ってしまうようだ。ここも結構な危険箇所。左に入りすばやく抜けた。水量は少なくなり、雪渓も現れる。適当なところで、右岸小尾根に
上がり、やぶこぎ無しで15分弱登ると稜線に出た。
1350m二俣と1400m右岸枝沢(カーソルあてて)
ザレ場に入っていく(カーソルあてて)
雪渓が埋め、子尾根に上がる(カーソルあてて)

荷物をデポして前黒法師岳を往復。15分の登りで山頂に到着。山頂からは展望は望めないが、まぁ良いでしょう。。。ここから、上西出の下降点へ移動。
翌日は午前中から雨予報のため、上西出の最源流となる上西平沢の源頭に位置する黒法師岳まで行く気は毛頭無く、イワナもつりたいので、1810m
ピークを超えたところから下降することにした。

稜線上の登山道は赤テープ等は無いに等しいが、林道に出るまでは迷うことは無いでしょう。林道を利用して1706mピークを巻いたところにヘリポート
ある。するとその先で林道上にテントが5張あるではないか!。すると、その方向から若い女性二人と、50前後の男性1名が歩いてきた。昨日、飛竜橋
から上がって、蕎麦粒山を回って一周する予定だったが断念し、今日は男性二人は黒法師岳往復、この3人前黒法師岳を今から往復しに行くとの事。
水は林道脇で得られるポイントがあるらしい。3人が去った後、SACHさんに「5人でテント5張りってどういうこと?」と聞くと、「そういうのショップとかでの体験会
みたいのがあるんだよ・・・、”自分でテント担いでみよう!”みたいな・・・」とのこと。へぇ〜〜〜!?!?
前黒法師岳山頂
林道合流点、前黒法師岳(カーソルあてて)
ヘリポートと林道上のテント(カーソルあてて)

ヘリポートから林道を離れ再び稜線に上がり1810mピークを目指す。このピークを下ったところで、先ほど聞いた黒法師岳に向かった男性二人とすれ
違う。 1810mピークから下った一つ目の鞍部で上西出に向かって下降開始する。この沢筋は地形図に沢名が記載されていないが、鈴野藤夫氏著
「中部山岳の渓流」によると大窪沢と名付けられている。
1490m地点で林道が横断するが、それまでは歩きやすいザレがメインで水流は無い。林道を横断し、50m位下った所から急に水が流れ出した。
1810mピークから大窪沢下降点へ(カーソルあてて)
大窪沢下降開始、林道横断点(カーソルあてて)
林道下から水が流れ出す(カーソルあてて)

しばらくは平凡な様相。両岸が立ってくると、8m滝で始まるミニゴルジュになるが、すべてノーザイルで降りれる。 左岸から枝沢を入れてもう一つ8m滝
降りると、本流筋の上西平沢と合流する。水量比(4:1)で圧倒的に上西平沢の方が多い。この出合付近は左岸に良いテン場がある。竿を出してみるが、
どうもこちらの姿が魚から丸見えな様で釣れず、いったん竿をしまって下降を続ける。
大窪沢8m滝から続く小滝郡(カーソルあてて)
大窪沢最後の8m滝
上西平沢出合と絶好のテン場(カーソルあてて)

上西出は幸い滝は無いものの水量は多いので、ひとたびゴルジュっぽくなると、”泳ぎか・・・大高巻きか?”と不安は募る。。。・・・が、泳ぎも、大高巻き
もなく、最悪腰上まで水につかって下っていけた。ただ、雨で増水するとかなりヤバくなるのは間違いなく、雨予報の場合は常に右岸の南赤石林道に逃げ
る心構えを持った方が良いだろう。1100mに位置する上西平沢と大窪沢出合から、1045m右岸枝沢まではいくつかテン場も散見されるが、両岸とも脆く
随所に崩壊しているので注意。
上西出の1045mまでの下降-1
上西出の1045mまでの下降-2(カーソルあてて)
腰上が1か所で1045m右岸枝沢へ(カーソルあてて)

1045m右岸枝沢から1015mで右岸から入るヒシガネ沢までも難所は無いが、1箇所、右岸の小さな巻きで足を滑らせ危う数mほど落ちそうになった。
この辺りから、釣り師の物と思われるトラロープが現れる。また吊橋跡もあり、かつてはこんな山奥まで人が頻繁に入っていたと思うと、昔の人の逞しさに
圧倒されるばかりだ。

この先でいい釜を見つけたので、竿を出してみると、ここだけで2匹釣れた。この先もゴルジュっぽくなるところはあったが難所は無く、16時過ぎに幕営予定
地としていた958m下西平沢出合に到着。
右岸を幕くが滑るので注意(カーソルあてて)
1015mヒシガネ沢出合
テン場は探せば見つかります
まだ悪いところも・・・
958m下西平沢出合
下西平沢出合で行動終了


三日目
昨日あれだけ晴れていたのに天気予報通り雲が広がっている。 下西平沢出合から下流部も両岸のガレが多いがテン場は点在。難所もなく889m左岸
枝沢出合に到着。ちなみに、他のWEB記録では、ここから林道に上がって山犬段に向かうと4時間ほどかかるらしい。雨はまだ降ってこないので沢通しで
下降を続ける。 途中左岸から見事な滝で出合う枝沢が入る。
下西平沢から下流部の様相(カーソルあてて)
889m左岸枝沢
左岸から見事な滝で出合う枝沢

この先も一見悪そうな淵は数か所見受けられたが大方埋まっており、SACHさんが一回流されそうになるも食い止めセーフ。ミスが無ければすべて腰を
濡らす寸前レベルで下降できる。大岩が無くなり河原状になると下西出との出合も近い。小雨が降り始める中、2時間45分程度で上西出/下西出の出合
に到着。水量比は(2:1)で上西出の方が多かった。
淵は大方埋まって泳がずに済んだ(カーソルあてて)
淵の渡渉を続け広河原へ
上西出/下西出出合到着

この出合には地形図には無い吊橋跡がある。右岸に上がるがやはり本流右岸に渓谷道らしきものは無かった。ここから林道に向け急登をあがる。途中
踏跡みたいな物を見つけるが獣道程度、夏場はかなり暑くなると思うので水は十分汲んでおいた方が良いだろう。50分の登りで林道に到着した。ここで
本降りの雨。歩いてきた道を戻り山犬段に到着する。雨の中小屋を利用して着替えができるのは助かるが、本降りの雨となると、ここで一安心という
わけではなく、山犬段からの林道通過がこれまた核心の一つになる。いつ崩れてもおかしくない壁の横をヒーヒー言いながら車で下って、なんとか国道に
でれた。
林道に向けて急登を登る(カーソルあてて)
林道で山犬段へ
山犬段へ到着。

P.S:青ナギ沢は1泊2日で遡行可能なので、青ナギ沢だけを狙うなら寸又峡の飛竜橋からアプローチした方が良いでしょう。上西出はひとたび増水すると
   危険なので、天気予報の確認をお忘れなく。ザイルは30m1本でも遡行可能ですが、万一の高巻きを考えると40m1本持って行った方が良いかも。

遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)


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