2015年7月25~27日 南アルプス 大井川 信濃俣河内

メンバー:ひろた単独
装備、ザイル8mm×30m、カム#0.4、 靴:アクアステルス
地形図:畑薙湖、光岳、上河内岳、池口岳
遡行図、概念図はこちら    概要ムービーはこちら

南ア 大井川上流域右岸の沢と言えば、赤石沢、聖沢が有名であるが、どちらも東海フォレストのバスを利用しなければならず面倒だ。一方、畑薙湖に直接流れ込む信濃河内谷は
これを頼らないため計画を立てやすいところが魅力。赤石沢、聖沢のグラビア沢に比べると知名度は低いが、光岳から仁田岳までの水域を集めるだけあって規模的には引けを取らない。
今回、会社の3連休に合わせ、単独で遡行してみることにした。


16:45自宅発→17:42五霞IC通過→19:09安行IC→20:15東名入口→21:45清水PA、3:30同発→3:41新静岡IC→5:22畑薙第一ダム着
1日目:5:46沼平ゲート発→6:40信濃俣河内吊橋→6:55入渓→8:35西河内出合(竿だし)→10:50三俣→14:52オリタチ沢出合→14:56行動終了
2日目:6:55 1280m付近テン場発→8:55瀞沢出合(途中竿だし)→11:30西沢出合、13:20同発→14:50 1890m付近行動終了
3日目
:5:52出発→8:40稜線到着→8:55仁田岳→9:25希望峰→10:00茶臼岳→10:25茶臼小屋→13:45沼平ゲート着

その空の下で。。。を立ち上げてから15年・・・高速道路網も拡張してきたが、畑薙ダムは栃木からのアプローチは、いまだ遠く、関東甲信越では一番時間
のかかる所だ。。。井川では繋がるが、いまだに畑薙ダムではsoftbank携帯は圏外。沼平のゲート手前駐車スペースは30~40台くらいだろうか、線が惹か
れている訳ではないので、ハイシーズンだと到着が遅れると、駐車スペースが無いかもしれないので注意。。。入渓準備を整え歩き出す。先週の台風、1昨
日の雨の影響かダムを見る限り、ほぼ満水だ。ダム湖右岸林道にゲートは無く車でも入って行けるが、せいぜい1~2kmくらいしか入れないので、敢えて
車をデポするほどでも無いだろう。。。林道で1名の釣師に追いつく。地元の方でここには良く来るとの事。

さて、入渓点だが、数年前までは崩壊した林道を強引に横断して右岸から沢床に降りる記録が多いが、今では立派な吊橋(地形図には無い)を渡って左岸か
ら入渓するのが定石となっている。林道から吊橋への下降路に人工的な目印はないが、林道が崩壊する15m手前の石垣の所から道が付けられている。
通常、吊橋下は、すでに河原状で、すぐ降りて入渓できるらしいが、今日は橋下もダムのバックウォーターになっており降りれない。先ほど釣師がいうには
吊橋を渡った直後右に入ると沢床から50mほどの高さで高巻いて沢床に降りれるとの事。また、左に行くと、橋の高さでトラバース道が伸びており、ロープ
が付いているものの道は悪いとの事だ。 釣師は右の高巻き道、自分はトラバース道を選ぶが、途中トラバース道は崩壊しており、満水の時は高巻き道
の方が良いかも。まぁ時間はほぼ同じだったが。。。
沼平ゲート手前駐車スペースが基点
満水のダム湖と右岸林道入り口(カーソルあてて)
ここから吊橋に降りる(カーソルあてて)

歩き出してから1時間強で、入渓する。釣師は「もうここから竿出していくから」との事で、先に行かせていただいた。。。 しばらくは広い河原状だ。水量は多い
のか? なんだか濁ってるし・・・。これがゴルジュになるとどうなるのかと思うと不安をぬぐえない感じ。岩は激しい水流で磨かれて滑らないのが救い。
何度も渡渉をするが転ばずに横断できた。当初、金曜から入渓する計画だったが増水を懸念し、一日ずらしたのが正解だった。昨日だったら増水の
ため敗退の可能性もあっただろう。

しばらく進むと、右岸から顕著な枝沢。さらに少し進むと、また右岸から顕著な枝沢。地形図で確認すると、前者がアシ沢で、後者が西河内。高度計が
すでに100mも食い違ってるが、低く表示されているという事は気圧が上がっているという事で良しとしよう。
水濁ってるんですけど・・・
セルフ撮影です(笑)
アシ沢出合と西河内出合(カーソルあてて)

西河内出合から先の本流はゴルジュ風。水はまだ濁っているが、滝も現れず特に難所は無くホッとする。ここまで全く竿を出す気も起きない様相だったが
この辺りでダメ元で竿を出してみる。水は濁り気味とはいえ隠れる所が無い河原状。。。匍匐前進しないとイワナに見つかるし、激流では餌は飛んで行く
ように流れ、これじゃ幾らなんでもイワナも餌を追えんだろう! と諦めそうになった時、左岸から大ヨギ沢が出合ったので、こういう増水時は、枝沢にイワナが居
るだろうと、竿を片手に渡渉したら、バランスを崩し、流されると同時に左ふくらはぎを攣ってしまう! 痛たたたっ・・・ と耐えながらも、右手に持った竿は
気合で握ったまま離さない。 15m位流されて岩に引っかかって止まった。顔は水から出ているものの、足が攣っているので立ち上がるのも一苦労。何と
か立ち上がり河原に避難、しばしうずくまる。。。

ゴルジュ風ですが水流通しで進めます
この辺りで竿を出してみるが釣れない
大ヨギ沢出合

竿も折れなかったので気を取り直して歩き出す。少し進むと、”三俣”と呼ばれる中俣沢出合に出る。出発してから丁度5時間だ。。。 ここで幕営している
記録が多く、沢中2泊なら初日ここまで進んでおけば十分だろう。テン場適地はいくらでもある。今回出発時間も早かったため、時間はまだ11時前。ここぞ
と、ザックを置いて小沢の方へ釣りに行くが、なぜかここでも釣れない・・・。。。イクラで釣ろうとしてボウズだった あの聖沢の記録がよみがえる・・・、
南アルプスって苦手なんだっけ???、いや、そんな事はない大間川では釣っているしな・・・と自分に言い聞かせる次第だった。。。
 この先、本流に入ると、すぐにゴルジュ。ここからが第一ゴルジュと呼ばれる所だ。進んでいくと、良くWEBの写真で見る2m滝。巻いた記録も見たが、
右壁を経つって突破する。安定したホールドがあるので、問題無し。滝下から見ると高巻くなら右岸に見えるが、滝を超えたあと壁になっているので、左岸
を巻いた方が良いだろう。
三俣(カーソルあてると本流上流側から)
第1ゴルジュに入ります
大釜2m滝(カーソルあてて)

この先、白い激流ゴルジュや淵を前部水線突破する。途中右岸に1か所だけ幕営可能な場所がこのゴルジュ内にある。まぁエマージェンシーとして使える
だろう。この先、大岩が出てくる所は足が届かないので1.5m位泳ぎ。さらに沢が右に屈曲する所の釜も右から経つって、ここまでは水線通しで来れた。
まぁ側壁が切り立った極悪非道のゴルジュと言う感じでは無いので、威圧感はそんなに感じないのが救いでもある。
とにかく行ってみる(カーソルあてて)
ゴルジュ内大岩。右から突破(カーソルあてて)
屈曲部の釜は半身浴で(カーソルあてて)

屈曲箇所を抜けると、高さは2m滝ながら泡立つ釜をたたえ、この水量では どーにも、こーにも進めない場所が出てくる。戻って巻きもあるが、四方八方に
弱点を探し、釜の手前の右壁を5m直上すれば小さく釜を巻けるルートを見出す。荷物は重いが、スタンス、ホールド共に十分そうなので、荷物を背負った
まま、取りつく。最後の1m強の段差は荷物を上に投げ空身で登った。。。するとその先にはトラロープがぶら下がっているではないか! どうもここは通常
手前から左岸巻きする人が多いらしい。この先に第1ゴルジュ終了を思わせる4m滝が出てきて水流左から簡単に超えた。三俣から第1ゴルジュ終了まで
丁度1時間半掛かった計算。平水ならゴルジュ初級と言った所か。この先少し行くと5m滝。ここはボルダー感覚で右壁を登って超えた。

越えられない2m滝(カーソルあてて)
第1ゴルジュ最後の4m滝
5m滝は右から(カーソルあてて)

さて、ここからは、食糧計画にもしているイワナを釣らないといけないので竿だしするが、ここにきても水流が激しく、自分の腕も大したことないので、アタリ
すら・・・いや、魚影すら見ない。ここは支流のオリタチ沢付近で幕営してオリタチ沢でイワナを狙おうとしたが、この沢、単なるガレ沢の様相を呈しており、
全くの期待ハズレだった。結局オリタチ沢を150m程過ぎた右岸に絶好のテンバ適地を見つけ、タープを張る。ここは右岸から細い水流もあり。
ここで、諦めず、さらに上流に向かって釣りに出かける。本流僅かな淀みに匍匐前進で近づいて竿を投じるとアタリが!!! 居た!イワナが居た!
結局この日は2匹を釣り上げ、刺身と塩焼でいただく事が出来た♪

激流はまだ続く・・・(カーソルあてて)
単なるガレ沢のオリタチ沢に愕然・・・
オリタチ沢過ぎて右岸で行動終了♪



2日目

明け方、目が覚めたので、そそくさと釣りに出かける。若干昨日より水流がおとなしくなったか??? 近場でイワナが掛かり朝食準備。。。7時前に出発
となった。平凡な様相を進み沢が右に曲がった所で第2ゴルジュが始まる。滝は無いが少し進んで沢が左直角に曲がると両岸が急に切り立った悪い
様相に変化。高巻きはできない事はないが、かなり面倒な事は確か、ここは水線通しで突破したいが、今日の水量でどうか? と言った所か・・・
弱点を探りながら、経つったり、腰まで使ったりしながら、泳ぐこと無しに進んで行けた。岩が磨かれており、アクアステルスのグリップにも助けられたことは
言うまでも無い。途中滝は無く助かったが、出口に2mのCS滝が掛かっており、激しく水を落としていた。

少し進むと第2ゴルジュが始まる
急に悪い様相に変化(カーソルあてて)
第2ゴルジュ出口が核心

ここには左壁に残置シュリンゲが2か所ぶら下がっている。下側のシュリンゲは利用せず1段上がれたが、ここからが嫌らしい。上側のシュリンゲを掴ん
で直上するにはもう一箇所上に残置が欲しいところだが、見つからない。仕方なく、上側のシュリンゲにてを掛け、アクアステルスのフリクションを信じ。外
傾岩に足を置きトラバースを掛ける。この岩に立てるかが勝負だ。グリップが利いてくれた。ここに岩に打ち込んだ太いボルトがあり、かつてはこれにシュ
リンゲが掛けられたかもしれないが、現在は曲がってしまい利用できない。さらにフリーで1.5mほど上がってゴルジュを終了させる。。信濃俣河内の核心は
ここだった

ゴルジュ出口にある残置
上がれた!(カーソルあてて)
復習です(カーソルあてて)

第2ゴルジュ先はまた平凡な様相、この辺りもテン場は見つかるはずだ。20分弱で右岸からヨモギ沢が入る。この先、左岸から箒沢が入る予定だが、
その手前にザレた斜面から細流が流れ込んでくる。本流はここから両岸が立ってくるが、ここで右岸から箒沢が多段40m級の滝で流れ込んでくる。本流は
しばらく進むと一旦開け、直登不可能な2段6m滝。ここは簡単に右から巻いて上がれる。
ヨモギ沢出合
本流がゴルジュっぽくなると箒沢(カーソルあてて)
一旦開けた先に2段6m滝(カーソルあてて)

この先から第3ゴルジュ突入となる。沢が左に曲がると2条7m滝。単独では全く手が出ず、右岸から小さく巻くが、巻き上がった所にまたトラロープが
付けられていた。。。この先、2条2m幅広滝から両岸切り立った悪い様相。奥に3mCSが行く手を阻んでいるのが、かなり手前から見えているのだが、
最悪、引き返して左岸大高巻きする覚悟で、まずはゴルジュ内に突っ込んでみる。近づいて見ると、CSの左側の激流にお助けバンドが伸びており、難なく
通過する事が出来た。すると、大釜があり、右に7m滝。ただ、これも水流左から登れそうだ。。。しかもよく見ると不必要なトラロープがぶら下がっていた
のにはチョイトガッカリ。もちろん、これを利用せずとも登れる。Ⅲ-
第3ゴルジュ最初の2条7m滝は左巻き
見た目悪い3mCS(カーソルあてて)
7m滝は水流左に取りつく

ここで、一旦両岸の切り立ちは収まるが、ノッペリ岩の小滝が現れる。左岸巻きかなぁー と思ったら最初の小滝が水流左から登れたのでラッキー!
しかし、さらに嫌らしい二つの小滝が連続。。。行くしかないので、経つりとラストの2mの登りで水流通しでなんとか抜ける。これで第3ゴルジュは終了。
概ね平凡な様相が続くようになり、時間は早いが、竿を出してみることに。。。 するとスゴイ食欲のイワナ君たちが居て、時間もまだ12時前ということもあり釣ってはリリース・釣ってはリリース を繰り返す。尺イワナを連続でリリースするなんて!sumimasenn. hajimetedesu...

なんだか、贅沢だなぁーと釣り上がっていくと、西沢出合になる。本流はここから大春木沢と名前を代えるらしい。ちなみに水量比は(3:2)で西沢の方が
多い近県からのアプローちであれば、ここまで来ておけば翌日畑薙ダムまで戻れるだろう。時間はまだ12時前。栃木からだと帰りの運転を考慮すると、
もうちょっと進んでおいた方が良さそう。釣りの事はよく解らないが、ここで、沢が二分すると、大型イワナはここで終了??。。。と若干焦り気味。食欲旺盛
なイワナ君も一回見つかってしまうとなかなか食ってくれず、大休止を挟みながら、8~9寸程度のイワナを2匹いただき、大春木沢に進んでいく。

ノッペリ岩の小滝で始まる3連瀑(カーソルあてて)
第3ゴルジュを終え癒し系になります
西沢出合

ゴーロ状の様相は5m滝で終わる、釣りをするならここまでと思った方が良いだろう。この先、ミニゴルジュっぽくなり、3~4m程度の滝が連続する。すべて水流通しで快適に突破出来る。この先、岩盤が発達したナメ床状になり、左岸の側壁も相まって美しい。
奥に見える5m滝で魚影終了
3m前後の滝が連続(カーソルあてて)
癒されますぅ~♪

1800m付近右岸になんとなく台地が広がり幕営可能そうな場所があるが、ここは見送ると、左岸から見事な20mナメ滝が入る。さらに進むこと、1860m
前後の左岸に草付台地があり、上がってみると、焚火の跡が点在。一人分ならいい感じで岩陰で横になれる場所があったので、今日の行動を終了した。

1800m付近左岸台地
左岸枝沢20mナメ
1900m付近左岸草付台地で行動終了



3日目

ここでは魚影も無いので、食事を済ませて出発する。渓相は小滝を交えた平凡な様相。途中顕著な左岸枝沢が入る。さらに進むと右岸に大ガレ。この
大ガレが切れた所に3m、7mの連瀑がある。7m滝は水流左から容易に超えられた。7m上には間髪入れずに4m滝があり、これも直登、するとまた右岸
大ガレ。先ほどの大ガレと上部で繋がっているようだ。

1890m付近で出合う左岸枝沢*
右岸の大ガレ
3m、7mの連瀑


滝はまだ終わらず、左岸ガレを見た先に2段10m滝と、3日間通して一番大きい滝がこんな上流部で出てくる。幸い、この滝も水流左を容易に直登できる
のが嬉しい。滝上はミニゴルジュで4mCSを超えると(1:2)二俣。ここは水量の多い右を選択するが、そこには9m滝が立はだかる。直登はムリそうだが、
すぐ左にあるルンゼを利用して滝上に出れた。

2段10m滝は水流左を直登
(1:2)二俣は右に入る**
9m滝は水流左ルンゼで上がる(カーソルあてて)


滝らしい滝は、これで終了。この少し先、高度計読みで2120m付近、1~2名なら横になれるテン場はあるが、今日発見した幕営可能場所はこの1か所
のみだった。。。ここから先は水量の多い方を選択して進んでいく。高度計で2350mで水枯れ・・・とほぼ同時に沢型も無くなる。

2120m付近最後のテン場
振り返ると主稜線が見えてくる
ここで水枯れ&沢型も消失


ここからは針葉樹の潅木帯を歩きやすいところを見つけながら高度を上げる。最後はハイ松の藪漕ぎになるが、腰下程度なので、そう苦労は無く希望峰
と仁田岳の間の稜線に出た。折角なので仁田岳を往復してから下山する。既に学生の夏 休み時期だが、今日は月曜、稜線も静かだ、茶臼小屋、横窪
沢小屋は営業していたが、ウソッコ小屋は廃小屋になったようだ。この尾根を歩くのは何十年ぶりだ ろう。一旦大井川本流の高度まで、下がるが、“ヤレ
ヤレ峠“なる余計な登りがあり、結構ムダに歩かされる感がある登山道だ。畑薙大吊橋からゲートまででも意外と長く下山が一番疲れた感じで終了した。

藪漕ぎ途中で聖岳が見えてくる
仁田岳山頂と希望峰(カーソルあてて)
25年ぶりくらいの茶臼岳

P.S:今回は若干水量が多い日の遡行だったが、それでも概ね水流通しで行けたので充実遡行だった。平水であれば、もう少し癒し系のイメージが強くなると思う。
   信濃俣河内は大滝こそ無いものの、3つのゴルジュや釣りが楽しめ、充実した沢旅が約束できる沢です。ザイルは30m1本で十分。靴はラバーソールの方が
   良いでしょう。テン場はゴルジュ以外では至る所にあり困らないです。



遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)


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