2016年5月14、15日 片品川流域 栗原川 十林班沢→ケヤキ沢下降

メンバー:RURUさん、ひろた
装備、ザイル8mm×40m、カム#0.4、#0.5 靴:アクアステルス
地形図:皇海山、袈裟丸山
遡行図、概念図はこちら

皇海山西面側の片品川流域には泙川と栗原川の2本の川が流れているが、沢登りとしては圧倒的に泙川の方が入渓者を迎えている。一方、栗原川は”足尾山塊の沢”で
以前から紹介されていたが、この本自体が廃刊になっていたり、林道が栗原川を囲むように通っているせいか、今となっては、”堰堤ばかり何じゃないか・・・”と言う思いから
いづれ遡行するつもりでいたのだが後回しにしていた。。。近年、山登魂の治田さんが遡行され、大変良い評価をしていた事もあり、いよいよ足を運んでみる事にした。
さて、この栗原川をどう遡行するかだが、”足尾山塊の沢”によるとツバメ沢~十林班沢の間の内容が良さそうなので、十林班沢→ケヤキ沢下降で計画してみる。


18:00自宅発→18:35石橋駅発(金精峠ルート)→21:00鎌田交差点付近仮眠、5:15同発→5:50松ゾリ沢基点P着
6:15基点発→6:40栗原川本流→10:10大膳滝下→11:15不動沢出合(円覚ノ滝往復)、12:00同発→15:45ツバメ沢出合手前幕営地

二日目
6:30幕営地発→7:12十林班沢出合→8:30栗原川林道→9:15ケヤキ沢下降開始→12:15ケヤキ沢大滝下→13:40栗原川本流
→14:25基点P着


2016年の栗原川林道は5月14日から追貝側、根利側どちらからも通行可能になった。この林道の情報は沼田市観光協会HPで得られるので、必ず確認
しておいた方がよい。道はゆっくり走ればフィットでも大丈夫と言うレベル。ダートに入ると携帯は使えなくなる。ケヤキ沢出合の対岸に位置する松ゾリ沢
脇を基点
とした。RURUさんのスマホナビのおかげで難なく来れたが、何にも無いと苦労しそう。。。駐車スペースはこの周辺にいくつかあるので、困るこ
とはないだろう。
松ゾリ沢(ガレ沢)を下降していくと、栗原川出合手前で15m級の堰堤に出くわす。両岸共に壁が切り立っているので、懸垂で下降する。今回は40mザイ
ルを用意してきたので問題ないが、30mザイルでもギリギリ降りれるはず。。。栗原川本流に降り立つといきなり幅広のナメ床。右岸の岩壁も見事。
松ゾリ沢脇が基点
最後に懸垂
栗原川本流に出る(カーソルあてて)

ナメ床交じりの癒し系の様相を進んで行くと、8mの幅広滝。”岩塚ノ滝”と名づけられている滝のようだ。直登は難しく、左のルンゼから上がって滝との
中間リッジを上がって小さく巻くが、沢床へは7m程度の懸垂下降を必要とした。滝上も見事なナメ床が続く。岩盤の発達した4mの”源公ノ滝”も美しく癒さ
れる。右岸に集落跡があるそうだが、残念ながら気が付かなかった。
岩塚ノ滝8mは左から巻く(カーソルあてて)
ナメ床や岩盤の発達した小滝が見事(カーソルあてて)
源公ノ滝

さらにナメ床と小滝を見ると栗原川の核心部ゴルジュが近づいてくる。ここまで栗原川の中流部はお勧めなので林道でショートカットしないで歩いてみて
欲しい!
ゴルジュ入口になる2段6mは左から超えると左岸に大岩壁を見る。すると両岸切り立ったゴルジュ内に大膳滝を見る。地形図には”円覚大膳滝”と記載が
あるが、後日いろいろ記録を見ると、地形図に掛かれた不動滝が”円覚ノ滝”で、円覚大膳滝と書かれたところが”大膳滝”となる。。。この大膳滝、持って
行ったトポでは15mと有るが、高さは9mと言った所。胸まで水に浸かれば水流左に取りつけそう。高巻きは右岸だろうが右岸岩壁もそびえる程高い。
予習もそこそこで遡行して居る為、ゴルジュ奥に滝がいくつあって、どれくらいの大きさなのかよく解らないが、とりあえずこの最初の9m滝を登ってみること
にした。RURUさんに待っててもらい釜に入って水流左に取りつく。案の定、胸まで水に浸かったが登り自体は難しくない。登り切った辺りに残置支点が打っ
てあり、おそらく懸垂下降の支点に使った物だろう。
ゴルジュ入口の2段6m
左岸の大側壁
大膳の滝1段目9m(カーソルあてて)

ゴルジュ内は滝の轟音が鳴り響いている。見上げると7m滝18m滝と続いていた・・・。。。側壁は50m以上切り立ち”ここを抜けるには・・・”と考えているとRURUさんも1段目を上がってくる。 とりあえず写真を撮って、2段目7mも登ってみる事に。2段目は水流右が階段状でスリップさえ注意すれば問題無し。
2段目を上がると3段目の飛沫が凄い。見上げると左の脆そうな壁を上がってスラブに上がり水流左壁を登るルートが見いだせそう。途中灌木もあるため
敗退可能だろうと思い、ザイルを出して登ってみる。

大膳ノ滝2段目・3段目(クリックして)
2段目を上がる
3段目を登ってみる

途中、割と新しい倒木があるのでそれを跨ぎ、そこからは草付スラブ状。そのまま落ち口に向かってスラブを上がって行ければ良いのだが、傾斜は強
まってくるし、支点も取りづらいのでかなり難しい。一旦左に逃げ気味に左の灌木に支点を求め、そこから滝側に向かって斜上する。枯葉や土を落とし
スタンスを慎重に選び掴める物は掴んで、信用できる僅かな灌木で支点を取り登って行く。。。丁度落ち口高さまで上がると垂壁に行く手を阻まれるの
だが、ここにうまい具合に幅50cmのバンドが落ち口に続いており、4m程トラバースして滝上に出れた。ここでゴルジュは終了していたのでホッとする。。。
下から見たのと若干違ったルート取りだったが、ゴルジュを抜けられたので良しとしましょう RURUさんもゴボウも含めたらしいがキッチリフォローして
上がって来てくれた。
7m程登って3段目ルートを見上げる(カーソルあてて)
落ち口付近の壁は思った以上に難しそう
RURUさんフォロー(カーソルあてて)

大膳滝上は間髪入れずに不動沢と本流の出合となっている。水量比はほぼ(1:1)。本流側はハイライトの五段ノ滝が見えている。時間的に余裕があるの
で、不動沢に少し入って、円覚ノ滝を見に行く。。。二俣から円覚ノ滝までは巨岩帯ゴルジュ。迷路を抜けるかのように上がって行き、15分程度で円覚ノ滝
に到着。下からは2段しか見えないが大岩に登ってみると3段あり50mはしっかりありそう。最下段は登れそうな雰囲気を醸し出していたので、ザイルを出
して空身で登ってみたが、落ち口のヌケがⅣ+はありそうで、カムも利く所は無く、ハーケンでキッチリ支点を取らないと滑るのでかなりリスキーで、落ち
口3m下まで登って引き返した。
不動沢/本流出合
円覚ノ滝50m
1段目登ってみたが断念(カーソルあてて)

二俣まで戻り、本流遡行に戻る。すぐにハイライトの五段ノ滝30mに出る。幅広の階段状滝でこちらも見事だ! 両岸は切り立っており、小さく巻く事は
不可能。ただ、階段状だし、4段目・5段目あたりがちょっと難しそうに見えるけど水流右から上がれるかも・・・ハーケンも8枚あるし”最悪懸垂で引き返せばい
いか・・・”
と思って釜を左から経ってフリー取りつく。1段目まで上がってRURUさんにも来てもらった。下から見たとき、ここから水流右に横断して・・・なんて
思っていたのだが、水流が強くムリ! 2段目は階段状なのでフリーで登り、3段目は太い水流の端を上がって突破。RURUさんにはお助け紐で上がって
もらう。4段目はラッキーな事に左端が階段状で段差は大きいものの、左壁も利用しながら這い上がる。ここもRURUさんにはお助け紐を出して上がって
来てもらった。リスは結構あるので、ハーケンは打てる。
五段ノ滝ルート(カーソルあてて)
1段目から2段目3段目を見上げる(カーソルあてて)
4段目は左端から上がる

さて、最後の5段目だが、ここだけで5~6mあり、やはりここが核心部になっていた。中央に弱点は無く、当初目論んでいた右端水流も結構な水量で視界
を遮られるほどのシャワーを浴びながらスタンスホールドを探さなくては登れない感じ。。。残るルートは下から見えなかった水流左壁。垂壁を2.5m程上が
れれば突破出来そうだ。空荷&RURUさんには申し訳ないが、肩を借り1ポイントショルダーで2.5m上の奥行50cmのテラスに上がれた。岩登りをやってる人
にとっては難しくないレベルの登りだと思う。。。ここで荷物を受け取り灌木めがけて上がり、ザイルを出して荷揚げ&RURUさんにはゴボウで上がって来て
もらった。RURUさんには、そのまま落ち口に出てもらう事ができたので、最初からザイルを出して落ち口に向かって上がった方がベターかも。
5段目。。。水流右を見に行く
登った水流左壁
5段目を登る

五段ノ滝上は癒し系の様相に落ち着く。もうあとは完全癒し系かと思い沢を出すが、すぐに10m滝が現れる。登れない滝でもないが竿をしまうのも面倒な
ので持ったまま右から高巻く。この先ナメ床や小滝が出てくる。この先ミニゴルジュ先の2段10m滝を超えると右岸にテンバ適地が広がる。すぐ先にツ
バメ沢出合があり、、時間も15時を回っていたので、今日の行動を終了した。
10m滝上は癒し系(カーソルあてて)
2段10m(カーソルあてて)
ツバメ沢出合手前のテン場で行動終了


二日目
長いケヤキ沢の下降を控えているので早出する。ツバメ沢出合を過ぎてもナメ床交じりの癒し系。岩盤も発達したところが多く、十林班沢出合まで足を
延ばす計画にして正解だった。ただ、テン場は我々が泊まった様な良い場所は無い。この先、少し渓相が荒々しくなると5m滝奥に古い石積み堰堤が
現れる。近くに道も無い場所なので”こんな所に!”と驚きは隠せない。
ツバメ沢出合
癒し系小滝が散見(カーソルあてて)
古い石積み堰堤

堰堤上は、広大な広河原が続いていた。少し進むと十林班沢出合。本流の水量はまだ圧倒的に多く十林班沢自体はショボ沢の印象。少し入ると7m滝
が現れ、水流左を登る。さらに小滝を超えると、またしても古い堰堤が出てくる。すべて古い石積み堰堤で今となっては大きく景観を損ねるものでは無い。
堰堤上は広河原
十林班沢出合
十林班沢入ってすぐの7m滝

小滝を交え上がって行くと1230mに位置する二俣。水量比(1:3)で予定していた右側の方が水量が多く、しかもナメ床になってててラッキー♪  この先、
平凡なゴーロ状を上がって行くと苦も無く林道に到着した。十林班沢出合から約1時間15分。
ナメ床もあり
十林班沢中盤の様相(カーソルあてて)
1230m(1:3)二俣を右に入る

林道をケヤキ沢側に移動。地形図にも書かれているツバメ沢支線(概念図参照)を超えると何処から降りてもケヤキ沢に降りれるので、支線の合流点付近
のカーブミラーから下降を開始する。少し下るとすぐに水の流れる本筋に出れた。歩きやすい細流を降りて行くとナメ床に変化し、7mナメが出てくるが
これ以降はまたしばらく平凡な流れになる。
ツバメ沢支線の基点からケヤキ沢に下降
少し下ると水が流れる
7mナメ

この先、1070mで左岸から枝沢、1040mで同じく左岸から顕著な枝沢を見ると10m滝。右岸から巻いて降りると、高度950m付近でハイライトのケヤキ沢
大滝の落ち口に出る。上から覗くと垂直落下の滝で、40mザイル1本では到底届きそうもない大きさだ!
1070m(3:2)二俣。左から降りてくる
10m滝は右岸巻き
ケヤキ沢大滝落ち口から覗き込む(カーソルあてて)

巻きは右岸。懸垂下降2回入れて大滝下に出た。これまた実に見応え有る滝で、この滝を見る目的でここまで足を運ぶ方々の気持ちもよく解る。。。
この先は石積み5m滝がある程度で平凡な様相になり長い伏流区間に入る。左岸脆い岩壁をヒヤヒヤしながら通過し左岸から枝沢が入ると水が復活。
垂壁の懸垂下降で滝下に降り立つ
ケヤキ沢大滝(クリックして)
脆い左岸岩壁横を通過

ここからナメ床が出始めるが、1か所スリットゴルジュに落ち込む滝があり、ここは左から巻いて降りた。巻き終えるとスリットゴルジュ入口には道を塞ぐか
のように大岩がゴルジュに挟まっていた。この先は、随所にナメ床が現れ、4m幅広滝を二つ降りると栗原川本流にぶつかる。ケヤキ沢大滝下から1時
間半弱といったところ。
入ったら出れなそうなスリットゴルジュ(カーソルあてて)
随所にナメ床が現れます
最後の4m幅広滝を降りると終了です(カーソルあてて)

広々とした河原が癒してくれるが、林道へもう一登りしなければならない・・・。降りてきた松ゾリ沢を登り返そうと、懸垂下降した堰堤の左壁にトラロープが
ぶら下がっていたので登ってみるがトラロープはボロボロで岩壁自体もボロボロ。。。敢無く断念して懸垂で引き返す。ケヤキ沢出合まで引き返した所で
ようやく本流右岸の壁が無くなるので、そこから上がる、踏跡はないが藪も無いのでマズマズと言った所。20分の登りで林道に到着した。
松ゾリ沢の堰堤は上がれない・・・
ケヤキ沢出合対岸から林道に上がる
終了です♪

P.S::隣県の沢なので、若干持ち上げ気味にかもしれないが、栗原川本流は全体的に渓相がよく、“もっと多くの遡行者を迎えていいはず“と書いた
    先人の記載もうなづける。中流部の幅広ナメが見事なので、我々が基点とした松ゾリ沢からの入渓がお勧め。ザイルは沢慣れしたパーティで
    あれば30m1本で何とかなりますが40mを持っていくと不安はありません。林道が全線開通している場合は1台デポして、他の支流を遡行して
    みるのもよいでしょう。。。大滝直登の場 合はラバーソールじゃないとキツイかも。岩は滑るのでタワシMUSTです。遡行タイムはゆっくり目なので
    ご参考まで。。。

遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)


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