2015年10月23~25日 男鹿山塊 大蛇尾川西俣→東俣下降

メンバー:ひろた単独
装備、ザイル8mm×30m、カム#0.4、0.5 靴:アクアステルス
地形図:日留賀岳
遡行図、概念図はこちら

有休消化で3連休。10月下旬で陽も短くなったので、1泊2日だと両日12時間行動となる地元栃木の大蛇尾川を2泊3日で計画してみた。大蛇尾川には東俣と西俣と長大な二つの
沢筋を有するが、WEB上の記録を見ると、誰もが西俣を遡行の東俣下降のルートで行っている。。。ならば逆で行ってみようかとも考えたが、40mザイルを持っていかないとヤバ
そうな感じがしたため、オーソドックスに西俣→東俣下降とした。ところで、この川は大正から昭和初期にニジマスが放流され、現在関東で唯一、沢で自然繁殖しているとの事。。


4:22自宅発→6:10大蛇尾川林道基点着
6:30大蛇尾林道送電線下発→8:00取水堰堤→9:45-10:15二俣→13:25 1000mテン場適地→14:00 1050mテン場適地(行動終了)

二日目
6:00幕営地発→7:15鹿ノ又沢出合→9:10-9:35 1428m左岸枝沢出合→10:55-11:10 1855m西俣/東俣境界尾根→14:45 1230m行動終了

三日目
6:05幕営地発→9:30-10:20二俣→11:25取水堰堤→12:35車両進入可能最奥地→12:57大蛇尾林道送電線下着


自宅から一番近くて一番大きい沢がこの大蛇尾川。沢を15年やってて、なぜ今まで行かなかったのか・・・だが、基点からのアプローチが非常に長いのを
苦にしていただけ。。。

大蛇尾川左岸林道はゲートが無いのだが、林道に入ってすぐ左右の轍の段差が大きく通常の2WD車ではかなり厳しい。昨今の2ボックスカーは燃費向上
のためにスペアタイヤを搭載しておらず、代わりにパンク修理キットを搭載している車が多い。小生のフィットもそうだ。(スペアタイヤはディーラーで購入可能) 
まだ奥に進めそうな気もするが、路上の岩も角が丸くないのも多いので、タイヤサイドを切ってパンクしたらそれこそ大変なので、最初の駐車可能ポイント
である送電線下に車を停めた。地形図にも送電線位置が描いてあるので、現在地把握にも良いだろう。

ここから林道の状態を見ながら歩いていくが、やはり所々荒れており、フィットで入って行かないでヨカッタ。 “全ての車両”の通行止ポイントまでこの先
3箇所しか待避スペースは無い。帰りに見たが、パジェロミ4WDはこの最奥通行止ポイントまで入ってた。ランクル等の大きいSUVも最奥通行止ポイント
での車両転回スペースが小さいので、最奥まで入らない方が良いだろう。
(アプローチ概念図参照のこと)
送電線下から歩く事たかだか25分で最奥通行止ポイント、ここから明瞭な踏跡を歩く事 1時間でようやく入渓点の取水堰堤に到着。ちなみに林道途中
から沢に下りれる道は皆無で、非常に急な下降となる。また、基点Pから歩き出し1時間以上 水場が無いので夏場に行かれる方はご注意を。

ここまで入るのもヒヤヒヤの大蛇尾林道
林道最奥スペース(カーソルあてて):帰りに撮影
取水堰堤に到着

今年の10月は非常に雨が少なく、水量は少ないはずだが、取水堰堤下も結構水量があった。ここから平凡な様相を進むこと1時間半弱で二俣に到着。
この区間でも魚影を見たが薄そう。。。。二俣にはブルーシートが置かれた絶好のテン場があるが、多くの人が利用しているせいか薪は少ない。
取水堰堤から二俣までの様相(カーソルあてて)
二俣到着
二俣にあるテン場

ここから西俣に入る。平凡な様相から右岸切り立った壁を見ると、荒れた様相に変化。すると右岸壁の間から滝が見えてくる。これがヤギ滝。名前の
由来は解らず、教えて欲しいくらいだ。2段滝で下段8m、上段5m。下段は右から上がれば簡単。上段については、”水流右から水流左に横断して残置シュリンゲで
凹角に振り子トラバース・・・”
なんて記載があるが、水量が少ないこともあり? 水流右から左に跨いで、左壁に移動。この左壁にスタンスがあるのでこれに
上がり、左壁外傾岩はラバーソールのグリップが利くので、再びジャンプして人工物を一切使わず凹角に移動。失敗しても下段落ち口側の釜は浅いので
釜に吸い込まれなければ死なないと思う。ちなみに残置ハーケンが同じ場所に2個固め打ちされていたが、1個は叩いたら抜け落ち、もう一つは叩いたら折れてしまった・・・。凹角に移動すれば水流左を3級の登りで滝上に出れる。ちなみに魚影はヤギ滝下までの様だ。

右岸側壁が切り立ったってくるとヤギ滝(カーソルあてて)
ヤギ滝上段(水量少なくて恐怖感ゼロ)
上段5m滝のルート(カーソルあてて)

滝上はコバルトブルーの釜を持ったナメ床。話に聞いていた水の色がコレね 水の色は素晴らしいけどナメ床は滑りやすい。このナメはすぐに途切れ
るが、またコバルトブルーの大釜を持った5mナメが出現!!! これは美しい! 5mナメ滝の上もナメ床が続く。一旦ナメ床が途切れるが再び幅広ナメ
が現れ、左直角に曲がって淵状になった先で7m滝。水流左からしかルートは無く。moto.pさんの記録の通りやたら滑る。当然タワシで磨いてグリップを
確保。幅7~8cmのバンドに一段上がり、バンドを水流側に斜上すると、二つ目の古い残置シュリンゲを発見、一応これに自分のシュリンゲを継ぎ足し
セルフを取る、ガバはあるが、さらに#0.4カムが決まったので、カムとガバを掴んで、3cmくらいの甘いスタンスに右足を決めて、左膝を次の細バンドに乗
せる。これで核心ポイントを終了。ここで残置ボルトに手が届くが、もはや無用。さらに上に意味不明の残置ロープまで転がっていた。Ⅳ、A0
コバルトブルーの大釜5mナメとナメ床(カーソルあてて)
左直角に曲がった淵の先で7m滝(カーソルあてて)
7m滝ルート(クリックして)

この先で、深い大釜を持った6m滝が行く手を阻むが、幸い長者岳から入る右岸枝沢を横断して簡単に高巻けた。ここからはゴーロ状が続く。途中、右岸
から階段状60m滝や、35m滝で出合う枝沢がアクセントをもたらしてくれる。3m小滝を超えた1100m付近で左岸段丘に絶好テン場が、さらに200m程先、
右岸にも草地の絶好のテン場がある。ここで行動を終了しても良いのだが、時間は13時半前。。。1045m付近にもテン場があるという情報を入手していた
のでさらに足を延ばす。

大釜6m滝は右岸枝沢に入って小さく巻く
ゴーロ状の中、右岸から60m階段状(カーソルあてて)
1100m左岸段丘にテン場あり(カーソルあてて)

右岸テン場から先はまたナメ床が続く。。。すると見事な10mナメ滝が現れる。左の草付とのコンタクトラインで登ったが右からも登れそう。滝上で左岸
スラブを見るとトイ状7m滝。傾斜は寝ているのでそう問題はない。この先ナメ床から巨岩帯に変化した先。確かに1045m付近に河原状が現れた。
150m位さらに歩くと、右岸に砂地を発見。薪は1100mテン場より圧倒的に豊富で、ここまで来てよかった。。。時間は14時だが、まぁ急ぐ必要もないので
今日の行動を終了する。この先にはいいテン場が無いので2泊の計画だったらこれ以上進まない方が良い。
見事な10mナメと左岸スラブ
7mトイ状
1045mの河原で行動終了(カーソルあてて)


二日目
昨日19時過ぎには寝てしまったので、4時半起床の6時出発。河原状から淵を持った小滝が現れ、2条5m滝を超えるとまたナメ床。この先平凡な様相に
なると西俣最大の30m大滝が見えてくる。近づいていくと、水流左は難しそうだが、水流右に弱点があるかも・・・と思い、最下部の水の流れる凹角をツッ
パリで上がり覗いてみると、のっぺりしており、弱点と思われるところはガッツリ水が流れていた。。。仕方が無いので、左岸を高巻くが、ほぼほぼ滝沿いを
小さく巻く事が出来、すんなり滝上に出れた。
最初の小滝と2条5m(カーソルあてて)
30m大滝
30m大滝ルート(カーソルあてて)

この先、断続的に現れるナメ床を満喫すると、鹿ノ又沢出合。この出合にはテン場が無いが、moto.p氏の記録によると鹿ノ沢にはいってすぐにテン場が
有るらしい。(未確認) 1泊2日の場合は初日に最低ここまで来ておく必要がある。本流側にはこの先なかなか良いテン場が無い。さらに進んでいくと右岸
1310m付近に焚火の跡を発見。整地済みの場所があったが、上部に壁がそびえ立っているので、落石の危険があり少々不安ではある。次に見つけた
テン場は1390m左岸枝沢出合までなく、ここから50分掛かるので判断材料にしてほしい。。。
断続的に続くナメ床(カーソルあてて)
鹿ノ又沢出合
1310m右岸に有った整地済みテン場

ここからは6m程度の滝がひとつでて来るだけで癒し系の様相が続く。上記した1390m左岸枝沢出合のテン場を確認。さらに進んでいくと、2m滝で出合う
左岸枝沢。。。おそらくここが東俣へ移動する1428mで出合う左岸枝沢と思われたが、どうも稜線の山の形が地形図と異なり、一つ手前の左岸枝沢の
稜線の山の形に似ているのだ。。。こういう時、GPSがあると便利なのだが持ち合わせていないので、仕方なく本流筋を更に先に進んでみると、顕著な
二俣になってしまった。 やはり、先程の枝沢が進むべき1428m左岸枝沢と確認、引き返す・・・。時間のロスは30分程度・・・左岸枝沢には滝は無いが、
高度計読みで1520mで早くも水涸れる。水はしばらく得られないので時期に応じて汲んでおいた方が良い。そしてここからすぐ沢形に笹が覆うようになる。
少し進むと、1610mで沢型も薄くなるが、5mくらい離れたところに別の沢型が見えるので、そちらに移動。これを2、3回繰り返し、極力笹薮の薄いところを
見つけて上がっていく。
1390m左岸枝沢出合とテン場(カーソルあてて)
1428m左岸枝沢。ここを入る
1520m付近で早くも水枯れ

他の記録では“ラストのコメツガの藪に苦労させられる“とあるが、なんてことは無い。それを左に避け笹藪の所を選んで進んで行けばコメツガの藪を避け楽に
1855mの境界尾根鞍部にピッタリ出れた
ここから東俣へはチョットだけだが薄い踏跡まで伸びている。。。時間は11時前。先ほどのロスを完全に取り戻せた感じ。東俣への下降は笹薮を漕いで、
10分程度で沢型に入れる。ただ水はなかなか流れ出さない。水が流れ出したと思ったら伏流になってしまう。

1855m鞍部到着♪
東俣へ。大佐飛山と奥に那須連山
東俣最上流部

1480m付近でやっと水流が安定。2段5m滝を降り、1410mで右岸枝沢が合流する。水量比(1:1)。ここから先位でようやく整地すれば幕営可能な場所が
出て来る。すると、ここで大きい滝が現れる。左岸から笹を掴んで強引に下降したが懸垂した方が安全かも・・・。水流を途中横断して右岸に移るが、全段
で25m位の滝となっていた。屈曲しながら落ちて居る為、最下部から全段は見ることが出来ない。遡行図では多段25mと記載。
水量比(1:1)で入る1410m右岸枝沢
まぁなんとかというテン場
多段25m滝の途中から振り返る

この先もしばらくは良いテン場は無い。右岸から細い10m滝で出合う枝沢見るとナメ小滝が現れる。する1285mで出合う顕著な左岸枝沢が合流。
水量比は(3:2)でわずかに降りてきた本流が多い。この辺りで幕営したWEB記録もあったが、出合から見回した限りでは見当たらなかった・・・。更に下降を
続けると、ナメ床となり下に大釜を持った6mヒョングリ滝が現れる。ここは右岸から巻き、15mの懸垂で沢床に下りる。この少し先で魚影をみたので、この
ヒョングリ滝が魚止めになっているようだ。
右岸10m滝で出合う枝沢と小ナメ(カーソルあてて)
1285mで出合う左岸枝沢
深い釜を持った6mヒョングリ滝(カーソルあてて)

下降を続けると、沢幅がぐっと狭くなり、右壁バンドを経つっていくと、4mトイ上滝となっており、そのまま右岸笹薮に逃げ込み巻いて降りた。そろそろテン
場を見つけようと思っていると、左岸に薪も豊富で平らな場所があったので行動を終了。。。高度計読みで1230mを指していた。

月明かりの下、焚き火で暖まっていると、小雨が降り出してきた。ここは日本海側/太平洋側の境界線。なんか冬型の気圧配置の時と雨の降り方が似て
いるなぁと思ったら、雨も強まってきたのでツェルトに入ったのだが、張りが甘く雨の重みでツェルトが寝袋にペッタリくっつき、さらに雨も浸透してくるので
不快極まりない。風も非常に強まり、まさに嵐のようだった。夜中にようやく雨は止んでツェルトを張りなおしたが、風は依然として強く、そして冷たい。焚き
火で温まりたいところだが、まだ湿った寝袋に入っていた方が寒さは凌げるのでガマン・・・。ほとんど眠れなかった。。。
ナメ床から4mトイ状に(カーソルあてて)
1230m付近テンバ適地で行動終了
ここまでは良かったのだが・・・


三日目
いい加減不快なので5時前に起きる。風は依然として強かったが、バーナーを持ってきていたので焚き火は着火。背中側は多少大きめの石があったので
若干の風よけとなったのか、何とか暖をとる事が出来た。冬晴れの様な青空の下、強風の中 出発する。少し先で岩盤が発達した様相となり、ナメの小滝
をクリヤーすると、また連瀑となる。一部残置ロープがぶら下がっており、これを利用。ザイルは出さずに降りれた。
強風の中出発します
岩盤が発達した様相の中を下降
残置路ロープが有った連瀑(カーソルあてて)

この先、ナメ床やゴーロ状の様相を交えて下って行くと1125m付近左岸に増水には耐えられないが幕営可能地がある。さらに1115mで左岸枝沢が合流。
たかだか2mのナメだが釜が深く左岸を高巻く場所もあった。
1125m付近左岸テン場
1115m左岸枝沢
右岸を高巻いた2m小滝(カーソルあてて)

ここから少し下ると10m級の滝が現れる。左岸に残置シュリンゲがあったので、懸垂するがザイルが下まで届いてなかった。体重を掛けると、1m程ザイル
が伸びて、そこからはザレを2m降りて滝下に出た。2段15m滝としておこう! さらに平凡な様相からナメ床になると、東俣最大の2段30m滝となる。
ここは左岸にトラロープが付けられていたが、笹掴み+クライムダウンで上段を降り、水流を右岸側に横断して乾いたスラブを利用して下段を降りる。
残置ハーケンや残置支点がこの滝には多数有り。
懸垂した2段15m滝(カーソルあてて)
左岸で上段を下降(カーソルあてて)
右岸で下段をクリヤー(クリックして)

滝下はゴーロ状だが、岩盤が発達すると突如現れる5m幅広ナメ。これが東俣最後の滝だった。ここから長く続く河原状・・・まぁ整地すればテン場も見つ
かるだろう。焚き火休憩でもしたいところだったが、良いとこないかなぁー・・・とズルズル進むと二俣に到着。

ここからは来た道を戻るだけ。。。と言ってもこの先が結構長い。。。早足で歩いて下って2時間半強でようやく車に戻れた。
5m幅広ナメ
長く続くゴーロ状
ようやく二俣に到着

P.S:大蛇尾川は確かに栃木県最大の名渓でした。足の揃った少人数パーティでしたら1泊2日で遡行可能ですが、脇目をふらず両日12時間程度の
   コースタイムとなるので2泊3日で計画することを勧めます。西俣と東俣の魚留めポイントが全く異なる為、釣りを楽しみたいなら東俣がお勧め。
   ザイルは30mでOK。東俣→西俣下降の場合は、詰めの藪漕ぎが大分楽になりますが、ザイルは40mは持って行った方が良いでしょう。ナメ床は、
   やたら滑るのでフェルトソールの方が良いかもしれませんが、西俣の滝の突破にはタワシ+ラバーソールの方が有利です。


遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)
 アプローチ概念図(クリックして)


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