2016年10月22、23日 越後 三国川流域 黒又沢 中ノ沢(敗退)

メンバー:ひろた、他1名
装備、ザイル8mm×40m、カム#0.4、0.5 靴:イドログリップ
地形図:八海山、兎岳
遡行図、概念図はこちら

三国川 十字峡から北に向かって流れる黒又沢といえば、持場沢、日向沢、五竜沢の3本の記録がほとんどだが、そこから先の荒山沢、中ノ沢、台嵓沢、檜倉沢の
記録は自分が沢を始めてから登山大系以外に観たことが無い。首都圏の屈強沢屋がごろごろ居る山岳会ですらなぜかここを選択しないのはなぜだろうか???
今回はこの4本の沢の中でも比較的簡単そうに見えた中ノ沢を選択してみた。唯一の記録である登山大系の記録では、大方雪渓に埋もれた時期に遡行。遡行時間は
5~6時間とかかかれ、「秋の遡行が趣があり楽しい。」と記されていた。実際の所はどうなのか調査遡行してみる。


18:00自宅発→14:43小金井駅→19:10栃木IC→20:50石打PA、5:45発→6:20十字峡着
初日
6:45十字峡発→8:25五竜沢出合→8:50荒山沢出合→9:00中ノ沢出合→12:50 20m大滝下(大高巻き開始)→13:25 20m大ナメ上
→14:45 950m付近スリットゴルジュ内遡行打ち切り→16:05 1000m左岸樹林帯で構想終了

二日目
6:15出発(左岸尾根トラバース)→8:20中ノ沢/黒又沢本流出合→9:00同発→11:05十字峡着

基点となる十字峡に来たのは数えてみると4年ぶり6回目。黒又沢側に12台くらい。三国川本流側に5,6台、下津川側に25台くらいの駐車スペースがある。
携帯電話は残念ながらDocomoでも通じない。中ノ岳登山口にある祠に手を合わせてから出発。堰堤バックウォーターを左岸の踏跡を利用して入渓する。
11年前に五竜沢に行っているので、そこまでの様相はなんとなく把握。日向沢出合はとても貧弱になり出合はほぼ伏流に。。。持場沢出合手前にある鉄
橋は健在!その下で、左岸から豪快に水を飛ばす湧水滝もそのまま。五竜沢出合までは腰を濡らすことなく到着!中越地震の影響か、新潟豪雨の影響
か11年前と出合の様相は変わっていた。

基点十字峡と日向沢出合(カーソルあてて)
かつての亜鉛採掘トロッコ軌道跡と湧水の滝
五竜沢出合


さて、ここから先が未知の世界。黒又沢本流ゴルジュのゴーロを少し進むと深い大釜を持った3m滝が出てくるが、右岸に上手い具合にバンドが伸びて
おり、これを利用して楽に越えられる。沢が左に曲がるとまた大釜を持った1m滝。ここは釜の左を腰まで浸かって登る。その上は間髪入れずに深い釜を
持った2mヒョングリ。右岸壁に1ポイント弱点があるので、おそらくそれで超えられるだろうが、左岸の外傾岩をラバーソールのフリクション勝負で突破。
RURUさんも同じルート取りで上がってきた。

大釜3mは良い具合にバンドがつづく
1m滝
2mヒョングリ(カーソルあてて)


ここで右岸から荒山沢が出合う。水量比(2:3)。荒山沢を跨いで本流に復帰。この先50m程進むと中山沢が右岸から入る。水量比(2:3)。ここまで十字
峡から2時間15分だ。出合から中山沢最初の10m滝が見えている。本流側を覗いてみるとゴーロ状ながら10m以上の側壁が切り立った狭いゴルジュが続
いていた。
早速、中山沢に入って10m滝を見上げる。階段状だが全体的に濡れており、フリーソロだとチョットいやな感じだ。早速ザイルを出して。リード。ハーケ1発
とカムで支点をとり滝上に出るⅢ+

荒山沢出合
中ノ沢出合と黒又沢本流ゴルジュ(カーソルあてて)
10m滝は水流右を登る

すぐ上の小滝を超えると、間髪入れずに2段12m滝。下段は水流右から思ったが最初の3mに良いスタンスがなく、水流左に移動してみると、黒光して滑
っては居るもののスタンス多めで、何とか登れたⅣ。上段は水流右。最初の一手が遠いが、シュリンゲが上手い具合に岩に掛かりA0で1段上がる。この
先は容易。Ⅲ+A0  滝上は小滝が続き、沢幅も狭くなるが通過に問題はない。
12m滝と下段登攀(カーソルあてて)
上段は岩にシュリンゲを掛ける(カーソルあてて)
小滝は簡単に突破

この上で、ゴーロ状になるが沢が左に折れて、悪そうな7mCS滝。幸い右の水流のから取りつきそのまま水流右のリッジから巻くような形で滝上に出るこ
とが出来た。RURUさんにはお助け紐で上がって来てもらう。滝上は明るく開けるのかと思いきや、ゴルジュ状。威圧感は無いものの、滝が出てくると灌木
がゴルジュ上にも無いだけに高巻きが難しそうだ。沢通しで遡行した人が居ないというのが不安を煽る。。。ただこの先は幸い深い淵が出て来るものの泳
ぐこと無く、簡単な3m程度CS滝と簡単な2段7m滝が出てくる程度だった。
7mCS滝を登る(カーソルあてて)
泳がず巻けます
2段7m滝も登れます♪

3mCS奥にスラブが見え、沢が左に曲がって居るのかな?っと思ったらそこに見事な25m大ナメ滝!ここが中ノ沢で一番癒される所かもしれない。ラバー
ソールであれば、水流左の乾いた岩を快適に登って行ける
大滝を堪能すると傾斜の緩い3段9m滝。水流右を直登するが、下段をバンドで巻いたRURUさんがここで4m滑落してしまうアクシデント!。幸い打撲程度
で済んでホットする。こういう草付沢は巻きの方が悪い場合もあるので、注意が必要だ。。。
この先、癒し系に変わって欲しかったが、期待は裏切られ、また先ほどの様なゴルジュになり深い釜を持った2段4mを右から経つりで突破する。
25m大ナメ(カーソルあてて)
3段9m滝
2段4m滝

すると、状況はもっと悪くなり幅1m程度のスリットゴルジュになる。いやなCS滝が出て来なければ良いけど・・・という悪い期待通り、6mCS滝が登場・・・。
水流沿いはツルツルで、右壁もハングなので、左壁しかルートは無い。幸い落ち口に向かってバンドが伸びているようなので、ザイルを出して登ってみると
バンドは落ち口50cmくらい手前で外傾になり消失。#0.5カムをとりあえず決め、このまま左壁から草付に上がれないか、唯一の弱点でホールドを探すも
確実なものが無く踏ん切りがつかない。仕方なく、落ち口に向かって、安心できるホールドも無い所をギリッギリのトラバースで滝上に出れた。
ザイルを左壁側に移し、RURUさんに上がって来てもらう。ここはバンドに上がった所で空身になり、草付に這い上がる方がベターかもしれない。登った滝
の中ではこれが核心だった。。。
スリットゴルジュに突入。
核心の6mCS、左壁バンドから
ギリッギリ!!!

滝上に出るとスリットゴルジュは終了するが、すぐ上5m滝を左から上がると、また容赦のないスリットゴルジュになる。その奥に絶望的な7mCS滝が行く手
を阻んでいたが、ここは左岸から簡単に高巻き出来た。すると高巻いている途中で20m滝が二つ視界に入る。上側の滝は登れそうな雰囲気を醸し出し
ているが、下の20m滝は直登はパッと見ムリ。。。沢床に降りて右岸巻きも考えられたが、このまま左岸で高巻く事にした。ただ左岸には20m滝の手前に
ルンゼが入っており、70m程巻き上げられてしまった。ルンゼ横断点を見ると、40m程あがればワンポイントだがルンゼを横断できそうな所があった。この
まま草付から灌木帯に入り、上の20mナメ滝も一緒に巻いて沢床に戻る。ちなみに右岸の巻きは割と急傾斜のスラブを横断することになるので、確実な高
巻きを求めるならここは左岸高巻きを選択した方が良いだろう。

スリットゴルジュ内7mCSは左岸巻き
20m滝の二連瀑は左岸巻き(カーソルあてて)
上の20mナメも一緒に高巻いた

滝上は癒し系を期待したが、相変わらず容赦無し。絶望的な4mCSは右岸で巻けた。ここからはV字谷形状の中を小滝を交え進む。右岸は急傾斜の大
スラブ、左岸は急傾斜の草付。景観は素晴らしいが遡行は不安を隠せない。ここに現れる7mナメは水流右にTRYしようとしたが断念。左岸で巻くが、その
上のCS小滝二つを一緒に巻いて沢床に戻る。
4mCSは右岸巻き(カーソルあてて)
美しいけど不安・・・
7mナメは左岸巻き

ここまで悪いながらも左岸側で高巻ける様相を呈していたが、左岸の高巻きも容易に許さないスリットゴルジュになる。時間は14時過ぎ。標高は900mを
超えて、当てにならない地形図が唯一等高線の間隔が広く示しているのにあまりの様相の違いにもはや呆然とするしかない状況。ここでとどめを刺す様
6mCS滝が出て来たが、近づいて見ると水流右の1枚岩にフリクションを利かせて突破。RURUさんにはザイルを出す。さらに3mCSを超え5mCSを滑る
岩になんとか足を決め抜ける。
様相はどんどん悪く・・・
とどめの6mCSと思いきや(カーソルあてて)
5mCSを何とか突破(カーソルあてて)

時間は14時40分過ぎ・・・。200m以上先、ゴルジュの奥にスラブが見えているが、地形図を見る限り、あそこに広河原があるとは到底思えない。。。完全に
気落ちしているRURUさんと共にこのゴルジュを抜けることはまず不可能と判断・・・。空身で先を見に行くが案の定CS滝が行く手を塞いでいた。。。
ここで、敗退を決定。。。 4mの左岸壁を上がれば草付に出れるポイントがあるので、ここから脱出を試みる。各自2Lの水筒に水を確保し、ザイルを出し
て空身で壁に取りつくと意外と容易に登れ、ザックを受け取り上がって行くが、草の密度が薄い泥急斜面。。。支点も取れる所は無く、かなり厳しかった。
35m近くザイルを伸ばしてやっと細灌木に支点を取る。40m一杯にザイルを伸ばして、灌木帯に入れた。

ここで、RURUさんの登りを待つが、待てども待てどもザイルが動かない・・・仕方なく、ザイルを固定し懸垂すると、最初の壁が登れないとの事。。。彼女の
ザックを背負って壁を上がり、空身でRURUさんが壁を上がるのを見届けてから草付を登り、彼女の登りを待つ。RURUさんが灌木帯に到着した時間が
15時50分。ここからさらに10m程上がると熊の寝床の様な場所が運よく見つかり、整地を加えテン場を造成、焚火も出来、十分落ち着くことが出来た。
この様相を見て敗退を決める
ここから厳しい草付の登り
良いところが見つかって落ち付けた♪


二日目
朝起きると曇天で既に右岸尾根にはガスが掛かっていた。今回GPSを持って来なかったので、幕営ポイントの正確な位置は判らないが、二人の高度計数
値から1000mの山の斜面だろうと推察。中ノ沢に入ってまだ1/3くらいしか遡行していないことになる。。。二人とも完全に元気を取り戻しているが、潔く予定
通りここから下山することにした。

途中で沢に降りてしまうと、何度も懸垂を繰り返すことになるので、黒又沢本流と中ノ沢の出合まで水に触れることなく降りていくしかない。やせ尾根であれ
ば、一旦尾根に上がり下降するのが手っ取り早いが、稜線形状が不明瞭な幅広尾根なので、中ノ沢の音を遠くで聞きながらトラバースしていくことにした。
幸い密笹薮など無く、潅木のウザイ箇所もあるが着実に進んでいける。少し進むと、尾根中央には40m級の岩壁が見えたので、このトラバースは正解だっ
た様だ。。。高度を下げずルンゼを2、3本横断、中ノ沢と荒山沢を隔てる尾根の向こう側に左滝ノ上沢の大滝が顔を出していた。
この中ノ沢/荒山沢境界尾根の末端をめざしてトラバース気味に高度を下げていく。すると、見覚えのある巨大CS滝が見えた。確か中ノ沢にはいって3番
目の滝だった・・・
ここまで来ると、黒又沢/中ノ沢境界尾根の高さは低く、この尾根に一旦あがり、そのままジャストで黒又沢本流と中ノ沢の出合に懸垂することなく下山
できた!幕営ポイントから2時間5分でここまで降りて来れたのは、まずまずのペースといっていいだろう。

出合の河原で焚き火休憩後、十字峡を目指す。荒山沢出合直下の滝を1箇所懸垂、さらに鉄橋手前の大釜滝を1回懸垂。あとは何の問題も無く十字峡に
戻ることが出来た。

概ねこんな感じの所をトラバースしていく(カーソルあてて)
荒山沢の大滝を遠望
黒又沢本流/中ノ沢出合ピッタリに降りれた!

P.S:中ノ沢は途中までしか行けなかったが、そこまでも想定以上に厳しい沢だった。雪渓が多い状況ではスリットゴルジュが埋まっているため登山大系に
   書かれている様ににサクサク進めるでしょう。ただ中途半端に雪渓が残るとさらに嫌らしくなるので入渓時期の見極めがポイント。我々が遡行した950m
   付近までは左岸の潅木帯に上がりさえすれば、中ノ沢出合まで戻れます。CS滝の突破がシビアで水無川オツルミズの様な登攀系の沢とは違った難しさ
   がこの沢にはあります。、ゴルジュを巻く場合は真沢並みの大高巻きをも余儀なくされるかもしれません。これに、“情報が無い”という不安要素が加わり
   ます。高巻きするにも場所によっては40m程登らなければ潅木に手が届かない場所も多いのでので要注意。それも左岸のみで、右岸は高さ100m以上の
   スラブが上流部まで続いていました。ザイルは40m2本要。ただし懸垂した先、沢通しで突破できる保証も無いので見極めは慎重に。靴はラバーソールの
   方が圧倒的有利。テンバは中ノ沢に入ると950m付近まで良いところは有りません。屈強沢屋のチャレンジを期待したいところです。支流の中ノ沢がこの感
   じだと、本流筋の台嵓沢、檜倉沢は一体どんなことになっているのだろうか気になるところです・・・

遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)


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