2016年8月6,7日 蔵王川流域 仙人沢 刈田俣(右又沢)

メンバー:ひろた単独
装備、ザイル8mm×30m、カム#0.4、0.5 靴:イドログリップ
地形図:上山、蔵王山
遡行図、概念図はこちら

東北の天気が安定してるので、蔵王の西面に位置する仙人沢を選択。この沢を紹介しているものは登山大系しかなく、WEBでもアイスの記録は見るものの、沢登りの記録としてアップ
されているものはほぼ皆無だ。地形図をみると、沢沿いに遊歩道が通っているのが沢屋さんを遠ざけているのだろうか? 登山大系による と、澄川八方沢と並んで蔵王を代表
する沢との事・・・。遊歩道や東日本大震災もあり、当時の面影が今となってはどう変化しているのか、今回は単独だが 「まぁ遊歩道もあるから最悪遊歩道で巻いてしまえば。。。」
という軽い気持ちで入渓してみた。。


17:20自宅発(R294)→1918白河IC→19:56須賀川IC→20:25本宮IC→21:15福島飯坂IC→21:48 R457入り口→22:17エコーライン滝見台、
5:15発→5:32エコーラインリフト乗り場P→6:02基点P着

一日目
6:25基点P初→10:15観音滝下→11:05観音滝上→11:40不動滝下→12:20不動滝上→13:28燕滝下→14:00燕滝上
→14:08熊野俣/刈田俣出合→15:43熊野俣側で行動終了

二日目
6:35幕営地発→6:45熊野俣/刈田俣出合→7:42糸滝下→8:27糸滝上→11:05 1560m付近遡行打ち切り→11:30リフト乗り場P(チャリデポ地)


自宅を早く出れたため、“極力一般道で・・・“と頑張ったら、オール下道で23時前に蔵王エコーラインに到着した。澄川遡行時で使用した滝見駐車スペースで
仮眠を取り、翌朝、刈田岳西側のリフト乗り場駐車場に到着。ここにチャリをデポして、入渓点に移動。入渓点に掛かる橋の右岸側には“蔵王猿倉イベント
パーク“とある広い駐車場があるが、ゲートに鍵が掛かっており、どうもイベントが開催されるとき意外は閉鎖されている模様。他には余り良いところは無く。
左岸側50mくらい行ったところに車1台分を縦に突っ込めるスペースを見つけたので、ここに車を停めた。
”南蔵王橋”から見える堰堤上から入渓したら、ゴ
ルジュ内に二連続堰堤が出てきて、小さく巻けず。再び左岸林道にあがる。林道を進むとすぐに終点駐車スペース2台ほど。地形図にある遊歩道の様なもの
は無い。ここから再入渓すると小さな最終堰堤が出てくる。これは小さく左岸巻き。
南蔵王橋左岸側の唯一の駐車スペース
手早く降りるとこの堰堤に捕まる
林道終点から再入渓

沢床に降り、少し進むと両岸切り立ったゴルジュになり2mCS、2条2mと小さいながらも嫌らしい滝が出てくる。2条2mは右の水流を胸まで水に浸かって
両手両足ツッパリで上画廊としたが滑って失敗。左の草付で巻いたが非常に悪かった。2m滑り落ちて右小指の爪を少し剥がす。ここはツッパリで突破した
方が良いだろう。自分は失敗したが、空身で行けば絶対突破できるはずだ。今回、唯一のガイドである、登山大系の記録を持ってこなかったので、
「いきなり最初っからこんなに悪いのか・・・」と不安がよぎるが、もう一つ小滝を超えると両岸の切り立ちは無くなり一安心。左岸に遊歩道(登山道?)が通って
いるらしいが、沢床を歩いている限りでは、左岸に遊歩道があるようには全く思えず。もちろん人なんか歩いていない。ちなみに、8月なのにアブは皆無。
ただ、温泉成分が混じっているのか、魚影も全く見ない。。。

初っ端の意外と悪いゴルジュ
左から巻いたが直登した方が良い
沢床は多少広くなる(カーソルあてて)

しばらく進むと2段10m滝。よく見れば水流左から登れそうだが、安易に右のザレから巻いた。滝上は癒し系になるが、すぐに岩壁を両岸に持つ7m滝
出くわす。滝裏が抉れており直登は不可能。左岸から極力小さく巻くと、滝上はまたゴルジュになっており、高巻きを許さない5m滝が現れる。幸い水流右
から登れた。すぐ上の2m滝を超えると7m2段滝。これも水流右から半身シャワーを耐えて、突破出来た。
2段10m滝(右から小さく巻く)
7m滝と滝上のゴルジュ(カーソルあてて)
7m2段は右から半身シャワー突破

ゴルジュはこれで終了。この先5m滝を左から超えると、遊歩道の橋が現れる。橋は割と立派なものだったが、両岸に遊歩道は無く消失している。この橋の
新しさと対比すると、おそらく2011年の東日本大震災がきっかけで廃道になったものと思われる。遊歩道はこの辺りで沢を縫うように付けられていたのだろ
う、橋は4つあった。ここから右岸の側壁が聳え立つ様になった先でハイライトの”観音滝が姿を現す。45mはあろうか、観賞するには良いが、遊歩道が完
全崩壊しているので、高巻きはかなり苦労が伴いそう。右岸は側壁が続いているので巻きは左岸。滝から一番近くの上がれる所から草付を足を滑らせな
がら登って、20程上がった所で滝に向かってトラバースを掛けるとザレに出るのでザレと草付のコンタクトラインを這い上がる。巻きにしてはかなり悪いので
完全に上まで上がってからトラバースを掛けた方が良いだろう。ザレから再び草付急斜面を上がって漸く巻けた。このまま落ち口に向かって下降すると
8mの懸垂を強いられたが落ち口ジャストに出れた。

遊歩道の橋と崩れた右岸側壁
観音滝45m
ショートカット高巻きで落ち口ジャストへ(カーソルあてて)

観音滝上は側壁3m程度のゴルジュが伸びている。上を見上げると30mくらいの高さの所に遊歩道の橋が架かっていた。この先1m程度の堰堤(?)を見ると
また悪いゴルジュになり7m滝が行く手を阻む。。。ゴルジュ内にも一つ滝を掛けているのが見えた。どうもこれが不動滝らしい。。。両岸の側壁はココもメチ
ャクチャ高く、出来ればゴルジュ内を突破したいところ。入口の7m滝は深い釜を回り込むと水流左から登れそう!岩も安定しておりⅢ級レベルで登れた。

しかし、次の滝が悪かった。。。  2段15m滝・・・下段はほぼほぼ垂直で、両岸とも高巻きも出来ず。下段は右壁の方が一見やさしそうに見えるが、上段
は水流左の方が簡単なので、途中水流を横断する必要がある。一方、水流左は頭から飛沫を浴びながら垂直壁を6m強登り水流を受けながら段を上がる
必要がある。ここは水流左で取り付いたが、1.5m程上がって怖くなり断念。 右壁に視線を送るが、やはり水流左で勝負するしかないようだ。
ザイルを取り出して、空身で出あがって荷物を引き上げる作戦で行く。結構頭から水を被るが、冷静になれば、スタンスホールドは割りと有りⅢ+のレベ
ルで下段を上がれた。荷物を引き上げ、上段はそのまま水流左の確実なラインで上がって15m2段滝を終了。ゴルジュもここで終了でホッとする。
観音滝上の様相(カーソルあてて)
不動滝最初の7m(カーソルあてて)
不動滝奥の15m(カーソルあてて)

滝上はインゼルになっており、右の水流を進むと右岸にテン場が見つけた。この先は右岸の大崩壊地。明るく開けた感じで焚き火休憩。。。この右岸崩壊
地を見送ると、河原状を右岸に発見。増水には耐えられないが4~5人は余裕で横になれる広さはある。この先、あまりテン場適地がなかったので、ここで
行動を終了すると良いかも。。。時間は13時20分。。。まだ早いので先に進む。
ここから4m美滝の奥に地形図には名称が書かれていない大滝が見える。これが不動滝か?と思ったが、後日、登山大系をみると“燕滝“と名づけられて
いた。高さは40m。観音滝とは違い、70度くらいの傾斜はあるものの、岩は結構グリップが利き、登って行けそうな雰囲気を漂わせている。 今回は単独
なので、もちろん高巻き・・・。右岸で巻くが、下部の草付が若干渋め。潅木が掴める所まで上がれば、途中滝を見ながら簡単に上がっていける。途中か
ら見た限り、この滝の直登はどうかなぁー?。。。と言った感じ。
仙人沢ではかなりの極上物件です!
4m美滝とマズマズの物件
燕滝40mは右岸巻き(カーソルあてて)

この先10分も歩かず熊野俣と刈田俣を分ける(1:1)二俣に到着。刈田俣は狭く潅木で暗い様相。一方、熊野俣は明るく開けており、熊野俣に入りたくなる。
「たしか登山大系は刈田俣を薦めていたよなぁ???」と薄い記憶を頼りに入ってみると、ここから魚影が現れた! 熊野俣の水がイワナに悪さをしていた様だ。ただ
鬱蒼としているので竿を出すのは難儀。100m程竿を出しながら進んだがテン場は見つかりそうもなく。二俣まで引き返し、熊野俣でテン場適地を探す。
しかし、岩がゴロゴロした場所が多く、高度計読み1253m付近で見つけた平らな岩にツエルトを張った。二人はムリかも・・・
熊野俣/刈田俣出合から刈田俣を見る(カーソルあてて)
こんな岩にツエルトを張る
行動終了です♪


二日目
熊野俣の明るい様相に、刈田俣を辞めて熊野俣にしようかなぁー・・・と思ったが、計画通り刈田俣に入る。登山大系では熊野俣は滝が一つ二つ出てくる
程度で概ね平凡との事で、やはり刈田俣に入って正解だったようだ。。。

刈田俣の鬱蒼とした様相を進んでいくが、やはりテン場は見つからない。すると、遠目からでもヤバイと思わせる滝が見えてくる。近くに行くと岩壁に囲まれ
10m滝。水を飛ばす垂直滝で全く手が出ないのだが、高巻きも、どこまで戻れば巻けるか?と言うくらい悪い。ここは右岸を選択。滝よこの土盛を登って
壁に沿って戻る方向に進むと、滝芯が見えなくなる場所で唯一灌木に手が届くポイントを発見。ここを上がらないと、側壁はまだまだ続いており、さらに何十
mも戻っての大高巻きになりそう。草も利用して小さなスタンスに足を乗せて1段上がる。あとは何とか灌木掴みの腕力勝負で側壁上に出た。後は密笹薮
を漕ぎ分け、10m滝上に出た。この先、高度計読みで1315mで右岸に整地要だが、幕営可能地が現れる。刈田俣に入って唯一と思った方が良いだろう・
小滝を交えた鬱蒼とした様相の刈田俣
10m滝は右岸巻き(カーソルあてて)
刈田俣入って唯一の物件です

平凡な様相を少し進むと進行方向にどうにもこうにも悪い壁が立ちはだかっているのが目に入る。ここからは見えないが、そこに悪い滝が掛かっているの
は想像に難くない。進んでみると右から一直線に水を落とす20m滝が姿を現す。どうもこれが“糸滝“と名づけられた滝らしい。当然高巻きするしかないの
だが、滝 と右岸側の壁の間に大ルンゼがあり、そこで巻ければ、かなりの時間短縮になりそう・・・と思って取り付いてみたが、取り付から足元が安定せず
。ソロではリ スクが高いと判断し断念。
何か嫌な予感がする全貌の土壁(カーソルあてて)
糸滝20m
あそこまで行ければ小さく巻けるのだが断念

こうなると左岸か右岸の大高巻きになるのだが、問題はどちらを選ぶかだ。登り易さは左岸だが糸滝上は左に沢が曲がっており、滝下から見える滝上の
左岸は結構立っており、沢床への復帰が厳しそう。一方、右岸は草付急斜面で登りにくそうだが、沢床への復帰は簡単そうに見えた。ここで右岸に細枝沢
を見つけ、右岸を選択し、細枝沢で詰め上げる。潅木帯に手が届く辺りで滝側に少しトラバースを掛けるともう一筋沢形が入り、5mほど登って潅木のある
左の小リッジに移りさらに高度を上げる。壁の傾斜緩んだ辺りになると笹の密藪。ここをトラバース掛け沢に近づくと15m程の滝が見えた。この滝は登るだ
ろう・・・と滝下に向け潅木・草を掴みながら下降し沢床に降りる。35分の高巻きだった。すると、15m滝と糸滝の間にもう一つ10m程の滝があり、上から
き込むと、下部はかなり立っており、両岸も切り立っているので、登るのはかなり苦労するものと思われる。あまりショートカットせずに降りなくてホッとした。
15m滝は右端から取り付きそのまま快適直上。
右岸細枝沢で高巻き開始(カーソルあてて)
糸滝上に悪そうな10m級の滝が掛かっていた。
15m滝(カーソルあてて)

15m滝上はナメ床状。5mナメ滝を越え少し進むとまた大滝が前方に見えてくる! 近づいて見ると3段30m滝。これは傾斜も緩く快適に直登可能!こういう
滝を待ってたんだな 3段30m滝を快適に上がると、左に折れた所に10m滝が掛かる。左から簡単に登れそうだが、敢えて右から取りつき水流横断で・・・と思って取りついたのは良いが、横断するところの岩が滑りやすく。バンド幅もあまりないので断念。このまま水流左で登って行ければいいのだが、結構
立ってフリーではムリ。一旦仕切りなおして、左から安易なルートで登り返すも、落ち口へのヌケが悪く。チョット草付に入って岩を1段上がって抜け出た。
ナメ床奥に5mナメ
3段30m滝は快適直登♪(カーソルあてて)
意外と悪い10m滝(カーソルあてて)

10m滝を上がると源頭の雰囲気で、滝は5m滝が一つ出て来るのみ。ところどころ灌木が沢床を覆いうるさい。また車の音も聞こえ、すぐ近くをエコーライン
が通っているようだ。しばらく進むと右岸に綺麗な鎖が垂れ下がっているのを発見!左岸を見ると明らかに踏跡が伸びていた。ここをクサリの方を進んで
みると、『御田ノ神(おたのかみと読むらしい)と刻まれた三角点の様な石碑を発見。道はココまで伸びていた。この先は沢筋も灌木や草ででウザい感じにな
るので、ここで遡行終了。この踏跡をエコーライン側にたどると、遊歩道に出るが、この石碑への案内板は無く。遊歩道からこの石碑へ導かれる様にも
なっていないので、地元の人しかあの石碑にはたどり着けないかもしれない。遊歩道を10分ほど歩くと、チャリをデポしたリフト乗り場に到着。チャリでエコ
ーラインを30分で下って基点に戻った。
癒し系の源頭の雰囲気(カーソルあてて)
『御田ノ神』と刻まれた石碑
遊歩道を10分歩いてリフト乗り場へ(カーソルあてて)

P.S:仙人沢は現在も“蔵王を代表する沢“をそのまま残していました!滝も多く、遊歩道は全く当てに出来ないので、完全に澄川より難易度は上。
  岩壁に囲 まれた滝の高巻きルートファインディグが遡行の大きな鍵を握ります。ザイルは今回のルート取りでは30m1本で足りましたが、草付
  が苦手だったり、燕滝直 登する場合は40m以上を持っていった方が無難でしょう。靴はラバーソールの方が無難です。テン場は燕滝を越えると
  なかなか見つからないです。初日でヘト ヘトになった場合は熊野俣側にエスケープした方が無難かも。

遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)


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