アルバム「INCARNATIO」


このアルバムをより理解を深める為には、「輪廻転生」」
といったものを信じる、あるいは受け入れるといいかもしれない。
おそらく角松も以前から「輪廻」を受け入れてきたのだろう。
ただ、前世を見る、また現世の目的を見るには"退行催眠"と
いう手法を用いるのが一般的だが、角松のトーク、コラムまた、
今回の詩を見る限りでは彼はまだ前世を知るに至っていない
様だ。
 自分の恋愛をテーマにした"君をこえる日"までのアルバム
から、解凍後の"存在の照明"で人間の内面を鋭く考察した作品
へ、そして日本の民族文化を通して、我々は何処から来て
何処へ行くのかという「輪廻転生」の概念へ角松の作品が
移行している以上、彼に付いて行く為には我々も
"角松敏生とは***"という固定観念を持たずにどんどん
多くの考え方を許容して行く必要があるのかもしれない。

 よく、"GOLD DIGGER"を代表する昔の作品の方が良かったと口にするファンが多いが、
自分はサウンド的には脈々と角松サウンドが続いている気がする。全然違和感は無い。
ただ詩は大きく変化していて、昔のような詩が良かったという人は残念ながら、もうあの頃のよ
うな詩に戻ってくる事はもう無いだろう。彼がLIVEで「付いて来い!」と言っているのは、もうあ
の頃のような作品は作らないという意味と私は解釈している。自分にとっては角松がどんどん
自分の方に近づいて来てくれているよう感じでフィーリングもどんどん合って来る。

 ただ、角松は"長万部太郎"という別ブランドも持っているので、このブランドを用いての多角
展開は十分考えられる。

 それにしても、1昨年までのLIVEでは「自分で歌ったメジャーヒットが無い」「売り上げを上げた
い」といっていたにもかかわらず、詩の内容が非常に難しく、新たなリスナーを作り出していけ
る作品とは思えない。私のようなBICメンバーでさえ、このアルバム
のよさを伝えるには、聴いてくれそうな相手をまず選び、CD以外に楽曲解説書、さらには口頭
での説明を必要とし、簡単にはいかない

  相手が聴きたいと思ってもらうには、私自身の人間性に魅力を持つしかない。。。
  角松を聴いている人は優しさが溢れている。。。と感じてもらうしかない

自分はそう思っている。

 "知る人ぞ知る角松敏生"こんな位置付けに益々なっていくのか。。。
======================================
1:INASA
  出雲の稲佐の浜を音像化した作品とのこと。「アイヌの民族楽器"トンコリ"がこのアルバム
ではふんだんに取り入れてます」と言う様に登場。いかにもオープニングという感じだ。トンコリ
には魂があり、頭・耳・肩・胸・へそ・腰・陰部・陰毛などの人体名称を持ち、くりぬ いた空洞部
にはへそ穴から魂(心臓)として青玉(ガラス玉)などが入れられている構造で、演奏するという
のは「精霊の業」といわれているそうです。まさに「INCANATIO」のアルバムにピッタリの楽器で
す。

2:IZUMO
 アルバムタイトル、1曲目のINASA同様、この曲もタイトルは"漢字"ではなくローマ字にした所
にも、"和"の硬いイメージを少しでも"POP-MUSIC"の柔らかいイメージをかもし出したいという
意思の現れなのだろうか。曲の感じからしても"出雲"より"IZUMO"の方が合っている。この曲
は変拍子を用いた技巧的な曲で、「TIME TUMMEL」の1曲目と志向的には同じ物か。よくこん
な曲に詩がつけられた物だと思う。この詩の中に出てくる、「僕」、「君」というのは、角松もBIC
の会報No27で書いてある様に、"僕達"、"君達"と解釈した方がよく、もちろんアルバム「君を
こえる日」までの「君」とは全く違う
ものだ。この詩の中に頻繁にでてくる"何かが"というものは、"神"のような存在を指すと思う
が、そう考えると、詩の最後にでてくる"I LOVE YOU"で急に訳のわからない詩になってしまっ
ている"I LOVE YOU"では無くて"He LOVE YOU"(Heは神を指す)じゃないのかな?
 また、"幸魂奇魂まぐわいながら(さきみたまくしみたま)"という、誰も使わない言葉を用いて
いる点からも、このアルバム(曲)はメジャーヒットを狙ったものではない事は明らかです。

3:Prelude#1
トンコリの特徴をフルに感じてもらう為の曲と言うことで、2曲、インストを入れている。
特に、この曲はトランスミュージックと紹介されている通り、すーっと引きこまれていく感じであ
る。

7:常世へ続く川

角松本人が、このアルバムのメインテーマであると紹介するこの曲。人生を川の流れにたとえ
た曲で、"美空ひばり"が歌った「川の流れの様に」と同じような作品。
人の一生は、よく川でたとえられるが、やがて海に出(→死を意味する)、雲になって(→いわゆ
る死後の世界というもの)雨になって再び川の流れに入る(→生まれ変わる)と言う意味で使わ
れるのです。"涙で濡れた君の顔も" "大声で笑う君の顔も" 生身でいられる「今」でしか体験
できない非常に貴重な物なのです。それを角松は"素敵"と言っている訳だと思います。

14鎮魂の夜
島根県物部神社で毎年11月に行われる鎮魂祭があり、小学校3年生くらいの女の子が巫女さ
んを勤めるそうです。この曲はこの祭りを非常に神秘的、厳粛的に描写しており、非常に好き
な作品です。ネットで"鎮魂祭"を見ましたが、写真撮影禁止で具体的な内容もわからず残念な
思いをしました。

15:太陽と海と月
 アイヌ、沖縄、島根。。。と日本の歴史を探る上で重要な地域をめぐって。数多くの作品を作
ったわけだが、この曲がこのアルバムの最終的な考察的な作品となっているようだ。
曲調はAFTER 5 CLASHの「あいらぴゅ音頭」に似たお祭り的な曲であるが、詩が語った要る
内容は非常に感動的だ。
前作の"存在の証明"の「存在への不安と欲望の12ヶ月」で
"流れてくる全ての音に何も感じられなくなった 
こいつらの何処に魂があるというの。。。"
と歌っていたわけだが、
この曲では
  "気に入りはCLUB & MUSIC、HIP HOP何でもいいけれど
   語り継がれた言葉の意味がわかるなら。。。"
と歌っている。
アイヌ、沖縄、島根。。。と旅してきたが、語り継がれた言葉の意味がわかるなら
その表現形態は何でもいいから、歌って踊ろう そしてそれが全てを繋ぐのだ
と言っている
自分はこの部分に自分は角松の大きな優しさを感じ、涙を流してしまった。

その空の下で。。。TOPへ   開設者紹介へ   角松敏生トップへ


inserted by FC2 system