2003年12月27,28日 八ヶ岳 赤岳西壁主稜

メンバー:現場監督さん、弘田
装備:ザイル9mm×50m(シングル)
写真はこちら

相互リンクさせていただいている現場監督さんがクリヤーしたいと思っていたルート。
光栄にも、今回「行きませんか」と誘っていただいた。。。
自分は最初『赤岳主稜』と聞いて、”何それ、何処?”。。。という感じだった(^^)ヾ
最終計画では初日”赤岳主稜”、2日目”中山尾根”と言うことに。。。。

前夜移動
17:15自宅発→18:42常磐道谷和原IC→19:30箱崎JC→
20:23中央道八王子IC
→20:33JR八王子駅→22:00小淵沢IC→10:30美濃戸口着

自宅から八ヶ岳へ行く場合、上信越佐久ICから南に下る行き方と中央自動車道を使った行き方の二通りがあるが
今回、●現場監督さんは横浜在住 ●JR八王子駅と八王子ICは近い と言うことで監督さんに八王子駅まで
出てきてもらい、ここで合流することにした。高速道路を途中下車しても料金は変わらない。トータル時間も
上信越道経由と殆ど変わらないか早いくらいだ。久々に合う監督さんだがチョイト病み上がりとの事、
実は私も咳が時々出るというお互い今ひとつの状態。とはいえ、車中での会話は弾み(笑)、あっという間に
到着。
 尚、小淵沢IC降りてすぐのコンビニが最終。IC降りてからはガソリンスタンドは無かったと思う。
美濃戸口はノーマルタイヤでは行かない方が良い。この先の美濃戸は4WDならばこの時期は進めるが
我々は美濃戸口で車中泊。美濃戸口はボーダフォンは通話不可、水洗トイレ有り。駐車場代1日500円だ!


初日(曇り時々晴れ→雪)
6:54美濃戸口発→7:45美濃戸→10:07行者小屋、11:07行者小屋発→12:00主稜取り付き(撤退)
→13:00行者小屋

朝起きると気温は-6℃、準備を整え出発。。。歩き始めて咳が止まらなくなったらどうしようと思ったが
歩きだすと何故か咳が止まった。 それにしても久しぶりの冬山、荷物がこんなに重いとは。。。
腰がすぐに痛くなる。情けない 
  行者小屋に着くと青空は見えなくなり、赤岳山頂は雲に覆われていた。監督さんがテントの受付に行って
来たがなんと一人1000円もするとの事、小屋素泊まりが5700円を考えるとチョイト高い気がする。
テント設営を終了し、登攀準備を整え、何も考えずにとりあえず出発する。時間は11時
 赤岳主稜への取り付きは文三郎道をかなり登って行く。自分が図書館でかりた日本山岳体系では
赤岳沢に入り取り付くように書いてあるが、監督さんの話によると、ラッセルが長く、今では文三郎道から
ルンゼをトラバースして主稜に取り付くのが専らとの事だ。
 荷物は軽くなっているはずなのだが、何故か取り付きまでの文三郎道の登りで息が上がる。しかも
デジカメで写真を撮ろうとしても低温でカメラが作動しない。ガックリ
小1時間かかってようやく主稜取り付きへのトラバースポイントに到着。主稜取り付き点には残置支点、
残置シュリンゲなどが見えるので、注意すれば取り付き点は容易に発見できる。残置支点は最近整備されたそうだ。

上部はガスっていて様子がわからない。取り付いているパーティも皆無。時間も12時近くで

「とりあえずちょいと進んでみます〜?」

と言いつつも自分は今ひとつ戦意消失気味。
しかも出だしのトラバースが結構傾斜が強く3年ぶりの雪山の私にとってはマジー!と言う感じなのだ。
しかしそんな私の不安もお構い無しに(?)、監督さんがサクッとフリーで行ってしまったので、
恐々付いて行く。
 
風がつめたいなぁ。。。4時間かかるのかぁ。。。上の方はガスッてるしなぁ。。。途中撤退って出来るのかなぁ。。。

弘田:「監督さん!今日は止めましょう!」
監督さん:「そうする〜?!」
弘田:「すいません・・・」
監督さん:「いやぁーいいんだよ、いいんだよ!」

と、やさしい監督さんに了承を得、この日は撤退することにした。

テン場には13時にもどり、行者小屋で休憩。とりあえず
”おしるこ”、”ホットレモン”で暖を取る
小屋の中は気温+7度で外は-14℃
天気は雪まじりになり、やはり行かないで正解だったかな。。。

行者小屋では”おでん”もやっていて、値段も街の飲み屋のおでんと
変わらないので二人でおでんをつつく。。。

弘田:「おでんおいしいですね!」
監督さん:「今回の山行は ”おでんがおいしかった” だったりして!」


夜は、カッパの上から綿入りズボンを履き、冬用羽毛シュラフ+シュラフカバーで快適に寝れた。
監督さんは化繊の寝袋のみでやはり寒かったとのこと。。。


2日目(快晴)
5:00起床、6:35行者小屋発→7:35主稜取り付き10:35稜線→10:40赤岳山頂、11:45下山開始
→12:35行者小屋、13:30同発→15:35美濃戸口着
16:52八ヶ岳山麓「もみの湯」発→19:39JR八王子駅→(谷和原IC経由)20:04自宅着

5時に起きると満天の星空!人気ルートである赤岳主稜は何パーティーか入りそうだ。
準備を整え、文三郎道を登っていくと、早くも3人パーティーが主稜取り付きに向かうルンゼのトラバース
に入っていた。
 我々もザイルを取り出し(シングルロープ)、先行パーティーに続く。

赤岳主稜取り付き点から1ピッチ目はルンゼを直登しリッジを右上するのがガイドに書かれてあるが、
先行パーティーのトップが苦労している。快晴とは言え、冬の風は冷たく15分も待っていられない。
違うルートで行けないものか見回してみると。トラバースしたルンゼを少し直登して、左に回り込めば
行けそうだった!
 監督さんに告げると、「チョット見てくる」といってザイルを伸ばして行く、どんどん伸びるザイルに
私も付いて行くと、「いけそう!」とのコール!このまま監督さんが、残置支点を発見!見事先行パーティー
の前に出ることが出来た!私もサクサク付いて行くが、手首からぶら下げた長いピッケルが邪魔で、
時たま岩に引っ掛かったりして・・・言うことを聞かない”ポチ”を連れて歩いているようだ!

2ピッチ目はトップ交代。3級+の5m程の登りで尾根に出るわけだが、A0で残置シュリンゲを鷲掴みしても
なぜか登れず、早々10秒程度で諦め、岩を回り込む安易なルートを登る。ただしザイルの流れが悪く、
監督さんには迷惑をかけてしまった。2ピッチ終了点は適当な残置支点が無いので岩にシュリンゲをかけて
支点を取る。ビレイ解除を笛で知らせようにも、顔がかじかんで、息が漏れ、笛が大きくならない。
こんなことまで冬山は注意しなくてはいけないんだ。。。とにかく大声で叫ぶ!


3ピッチ目は雪交じりの岩稜の登りで特に問題は無いが、スタカットで監督さんがザイルを伸ばしていく。
こういう所では、”ポチ”は”ピッケル”として役に立つのだ!
しかし、いきなり小岩が崩れる。赤岳の岩はもろいと聞いていたが、モロモロではないか!

4ピッチ目は中間に3級程度の岩場があるが特に大きな問題もなく私がリードする。中間支点あり

5ピッチ目は再び雪交じりの岩稜で、正面の岩壁も登り涯はあるのだろが、右側を回り込んで行く。
一般的(?)なルートで監督さんがリードして行く!
 すると、最初に先行していた3人パーティーのトップが4ピッチ目終了点あがってきた!

弘田:「はやいですね!よく登られているのですか?」
相手:「ガイドやってます!!!」
弘田:「そ、それは失礼しました!」
相手:「いえ、仕事ですから・・・」
弘田:「というと、後の二人はお客さんですか?」
相手:「はい、そうです」

今回の様なバリエーションルートの場合、一人ガイド料3万〜4万円くらいの料金で連れて行ってもらえる
のがあるわけだが、そう!この時期、ガイドさんにとっては”カキイレ時”なのだ!
監督さんから「ビレイ解除」の声が届き、「では、お先に!」と言って、その場を後にする。

6ピッチ目は、3級+の岩登り。右側を回り込んだところから稜上に登って行く。本来なら私がトップを
やる番だが、”ポチ”もいることだし(たんなる言い訳)監督さんにトップをお譲りした。
ここは、ビレイポイントからはすぐにトップの姿は見えなくなる。ロープの出方を見守っていると、先程の
パーティーのメンバー全員が追いついた。

弘田:「すいません!お待たせしちゃって!」
相手(お客さん):「いえ、どこかの山岳会に入っていらっしゃるのですか?」
弘田:「いえいえ、フリーです。ちょっとしたホームページ仲間と今回は・・・(^^)ヾ」
相手(お客さん):「・・・と言うと、学生時代は山岳部なんですか?!」
弘田:「いえ、”吹奏楽部”です!」
相手(お客さん):「・・・」

と、”交わらない会話”していると、監督さんからコールが届き、登って行く。ザイルが伸びている
ルートを見ると岩壁を右に右にとトラバースして最後は狭いルンゼを5,6m程直登していた。
”こんなシビアなルート、トップを譲って正解だった”と我ながら感の鋭さに感心する(笑)
 狭いルンゼの直登は足が良く見えず。利いているのか、利いていないのか良く判らないが
まぁ一応手の方はガバ。。。気合で登ると今度は、”ピッケル”が岩に引っ掛かって右手が動かない。
                                            ”ポチ!”ちゃんと付いてきなさい!
よっこらしょ!と乗り越えると6ピッチの終了点。明瞭な残置支点がある。

7ピッチ目は雪の付いたルンゼの左側に岩のバンドが上がっていく感じ。「疲れた!」 とわがままを言って
またもやトップを監督さんにお願いする。と、すぐさま先程のガイドが登ってきた!「はやい!!!」
さすがにプロは”吹奏楽部あがり”なんかにナメラレテはいけないのだった!

監督さんは中間ビレイを取ることも無く、左側に岩のバンドを登攀。私はせっかく長いピッケルを持っているので
雪のルンゼを直登する。
7ピッチ目を終了すると、稜線の登山者が近くに見えてくる。

8ピッチ目は3級-レベルのルンゼ登攀。さすがの私でも行けそうなのでここはトップをやらせていただく。
ルンゼを超えるともう稜線はすぐそこ。ビレイ解除の声が届かないと余計な時間がかかるので、早めに
支点を取り、監督さんに上がってきてもらった。

9ピッチ目はもう全く問題なし。先に監督さんが稜線に立ち、後から私が到着!!!
お互い硬い握手をする!感無量!!!

赤岳山頂はここから歩いて1、2分。気温は-6℃だが、
日向で風を避ければ、ポカポカだ!
360度の展望を楽しみ記念撮影!山頂は携帯がつながる
赤岳2899m山頂から阿弥陀岳
赤岳山頂から横岳、行者小屋

下りは地蔵尾根と登ってきた文三郎道のどちらでもいいが、
日の当たる主稜を見たいという
私の希望をくんでいただき文三郎道でくだる。
再び主稜の取り付き付近まで降りてくると、
数パーティーが主稜に取り付いていた。
あそこを登ったんだ!と思うと実に感慨深い。

行者小屋に戻りテントを撤収し、美濃戸口へ向かう。振り返ると赤岳。
監督さんから「あの3本の尾根筋の真ん中を登ったんだよ」と教えられる。
みるとなんか凄い絶壁!来る時見えないでよかった・・・

温泉は、八ヶ岳美術館ちかくの”もみの湯”に入る。


P.S:ひさびさにやった冬山、しかもザイルをつけての登攀は初めてで、手袋、ピッケルの処置等、
   反省点も多く、次回やるときは潰しておかなければと思う。
   やはり冬の山は人間が立っているだけでどんどん体温が低下する”死”の世界。沢とは違い厳しい
  
 尚、服装は以下の通りで特に問題なかった。
(アプローチ中)上 保温シャツ+カッパ
          下 保温シャツ+沢用半ズボン+カッパ
(登攀中) 上 保温シャツ+カッパ+綿入りジャンパー+目だし帽
       下 保温シャツ+沢用半ズボン+カッパ


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