2010年8月7,8日 南アルプス 大武川 篠沢

メンバー:現場監督さん、ひろた
装備:ザイル8mm×30m、8mm×50m、カム、靴:フェルト
地図:長坂上条
遡行図はこちら、概要写真はこちら

バリエーションをやる人で知らない人は居ないと言われる”現場監督さん”と久々ジョイント。 行き先は、昨年から目星をつけていた大武川(おおむかわ) 篠沢へ。
この沢は、山岳会の会誌を除けば、いまや絶版になった”登山大系”にしか掲載されておらず。 WEBでは一つしか記録を見ない。さて、どういう沢なのか・・・調査遡行してみる。

アプローチ:フィット(MTだよ!)
18:41自宅発→20:45桶川北本IC→(21:02入間IC通過)→22:20双葉SA(仮眠)、5:30双葉SA→6:10横手駒ケ岳神社。

7:00桑ノ木林道ゲート発→7:55篠沢入渓→8:32篠沢大滝下→10:17大滝上→14:50 1600m(1:3)右岸枝沢
→16:20 宮ノ沢出合(1710m)→16:30行動終了

現場監督さんとは、双葉SAで合流。監督号ナビに従い、横手駒ケ岳神社へ。こちらは竹宇のような広々とした駐車場は無く、
神社の駐車スペースをお借りする感じ。ただ、駐車スペースは十分で。携帯もちゃんとつながる。トイレは神社を拝借かな?

ここに車を1台デポし、桑ノ木林道ゲートへ移動。篠沢大滝キャンプ場を目指し、篠沢大滝と書かれてある標識に従い林道を
入っていく。未舗装だが通常の車で問題ない。汁垂沢を渡る橋が2本あるので上流側を渡る。道は地図の通りに付けられている。
汁垂沢の橋を渡るとすぐに南京錠のかかったゲート。駐車スペースは少なく車3台が限界か・・・。。。ここから歩き出す。

林道は桑木沢を横断し、篠沢第3ダムと書かれた巨大堰堤まで伸びている。この巨大堰堤から150m程戻り、篠沢大滝遊歩道
を利用して堰堤を超え入渓。歩き出しからほぼ1時間弱。
桑ノ木林道ゲート手前
林道から篠沢大滝遊歩道へ
巨大堰堤上から篠沢入渓です

スタートからゴルジュの様相。釜が深い小滝を超えられず右岸巻き。その上の8mナメは、なんとか水流ど真ん中を超える事が
出来た。少し先に進むと左岸の壁が威圧的に切り立っており、その奥で右からヒョングリ滝がすごい勢いで水を落としている
のが見える・・・
近づいてみるとその奥に篠沢大滝があった。写真では見たが、実物はさすがに凄い!
8mナメ滝(カーソル当てて)
思いっきり水飛ばしてますけど
圧巻の篠沢大滝(クリックして)

一通り記念写真を撮って。。。「さてどうしましょ。」

巻きは右岸だが、それでも全体が切り立った壁になっているので、かなり後退した所からでないと、安全には巻けない。
ここは、大滝下にあるヒョングリ前衛滝8mを超えられるか、超えられないかで、勝負が決まるとみて良いだろう・・・
ただ、この前衛滝の弱点があまり見いだせない。現場監督さんが水流端の方からフリーで取り付いて、草付きを水流方向へ
トラバース。ここから凹角を狙うが、「渋い」 との事。それでも微妙なバランスで1段上がりさらに上にハーケンを浅打ちして
A0で凹角を脱出。しかしここから直上出来ず水流を右に横断して突破する。W+A0
上からザイルを投げてもらい。私も前衛滝上に上がった。

遠目に見て絶望的な滝も近くから見れば登れそうに見える事が多いが、この大滝には当てはまらず、ここから右岸高巻きに入る。

しかし、ここも側壁は結構傾斜が強く。神経を使う。さらに悪い事に細い灌木は岩に張り付いた苔に根を広げている様で、
持つと結構ぐらつくのだ。 慎重に上がり、安全圏に出るが、落ち口へのトラバースはさらにもう1段上がらなくてはならない。
チョット上がっては、ギリギリ可能なショートカットルートを見出してトラバースを掛け、見事落ち口すぐ上に出る事が出来た。(懸垂不
要)
結局、前衛滝突破も含めて高巻きに1時間50分かかった。

落ち口に立つと、なんと下に人影が!!!一組のカップルが滝を見に来たらしい。「ヤッホー!」と手を振ると、向こうも手を
振り返してきた
大滝越え(カーソル当てて)
大滝を見上げる
高巻き開始
ガレをトラバースして落ち口へ

大滝上は両岸垂直に切り立ったゴルジュ。前方に9m滝が行く手を阻んでおり、大滝落ち口に出れたのが逆に裏目になるのでは・・・
と、不安を抱えながら進む。幸い、水流右の凹角に取り付いて、灌木利用で突破出来たV

ここを抜けると、小ナメ滝混じりの概ね平凡な様相が続く。平凡だが砕けた花崗岩の白砂が美しい。。
3段5m滝は右から取り付ければ簡単に超えられるが、ヘツリに苦労する私を見て左から取り付いた監督さんだったが、
水流左は全く駄目で、滝壺ギリギリのところをジャンプで右に移動してクリヤーする。
大滝上は悪いゴルジュ
出口の9m滝(カーソル当てて)
3段5m滝

ここから先は、巨岩帯に突入。大岩で出来た小滝を一つ一つ超えていくのは結構疲れる。 しばらく進むと、18m滝が登場。
正面突破はムリ。ただ、両岸とも壁が高いので、高巻きも辛そうだ。「左壁側の草付きから・・・」とルートを追うも、やはりダメで、
左岸ルンゼから高巻く。岩が脆いので、30mザイルを途中から出した。
巨岩帯に突入
2条5mナメ
18m滝(カーソル当てて)

この滝上は、概ね平凡な様相が続く。テン場は所々にあるが、まだこの辺りだと翌日下山できないだろう。
、左岸の上の方に切り立った壁を見ると、倒木のある10m滝が立ちはだかる。ここも両岸の壁は高い。水流右はノッペリしており
取り付けず、水流も結構ある。一瞬”ダメかな・・・”と思うが、水流際をよーく見ると登れそうなので、胸まで釜に浸かって、
取り付いてみる。振り返ると現場監督さんは巻き道を探していた(笑)

 水はガンガン掛るが、スタンス、ホールドも多くあり、水を浴びながらの”セミ”になる事はなく核心部分は登れた。V+
ここから上は、トヨ状で斜上しており問題無し。フリーで登ってしまったので、上まで上がらず、ここで腰に水を受けながら、
ザイルを出して現場監督さんに上がってきてもらった。 この滝の高巻きはかなり大きく巻く事になるので、直登した方が
良いだろう。
倒木のある10m滝
直登!(カーソル当てて)
上部はトヨ状

滝上は悪いゴルジュだが、出口に掛る7m滝は簡単に超える事が出来一安心。

この上で右岸から顕著な枝沢(利平沢)が入る。標高1600m付近。水量比(1:3)。出合い右岸に良いテン場がある。
1泊2日で下山するには、最低ここまで来る必要あり。

本流はこの先で2段12m滝が待ち構える。下段さえ上がれれば突破出来るが、取り付きがハングで登れない。高巻きは左岸で
バンド状を斜上し、難なく巻く事が出来る。
ゴルジュ出口に掛る7m滝(カーソル当てて)
右岸から利平沢が入る
2段12m滝

平凡な様相に戻り、10mナメ、6mナメ滝を快適に越え、大岩の間を突破していくと、滝上に巨岩が乗っかる10m滝が現れる。
両岸の高巻きは結構大変そう。滝の直登ルートを探ると水流右端に取り付いて、1ポイント上がれればクリヤー出来そう。
私がリード。1段上がったところで右にハーケンを1枚打ち、シュリンゲに右足を掛け、もう一段左上に登れれば良いのだが、
どうしても左足にスタンスが欲しい所! 偶々カムが決まったのでさらにそれにシュリンゲを垂らし左を掛けて、核心を突破。

まぁ突破したけど、もろもろ回収しなくちゃいけない現場監督さんは、”ザイルゴボウで上がってもらうしかないかな・・・?”と思ったが、
そうザイルにテンション掛けずに登って来た!!!

この滝上で、1710mで出合う右岸枝沢(宮ノ沢)が入る。
10mナメ
巨岩が乗っかる10m滝(カーソル当てて)
1710m宮ノ沢出合

地図で見ると堅調な沢筋だが水量は少ない。右の本流を少し進むと平らな草地があったので、今日の行動を終了する。
薪は豊富。良いテン場だった。
1730m付近テン場
快適でした



二日目
6:20出発→8:26-9:05七丈ノ滝下→9:45黒戸尾根→12:45横手駒ケ岳神社

ここから何時間で稜線に出れるか解らないので早めに出発。いきなり最初の10m滝が登れないので右岸から小さく巻く。
滝上には、巨大岩が鎮座しており、脇から抜けていく。この先にも増水には耐えられないが良いテン場を発見。
暫く平凡な様相で高度を稼いでいくと、左40mナメ滝、正面30mで出合う二俣になる。水量比は(4:1)。ここは左の40mナメ滝に
取り付く。
初っ端の10m滝
巨大岩が鎮座
40mナメ滝と30m滝が出合う二俣

ここは左の40mナメ滝に取り付く。右から取り付いて、途中水流を左に横断。ここから直上の一歩がチョイと渋めだが
現場監督さんがクリヤー、お助け紐を出してもらう。さらに水流右に横断して40mナメ滝を終了。
滝上はゴルジュになっており2段45m。下段はトヨ状で落ちている。両岸を見ると高巻きは厄介そうだ・・・

「これ登れるのかなぁぁぁ・・・」

と、ビビっていても仕方ないので、滝に近づいてみる。下段トヨ状下部を水流に足を突っ込んで、途中から右壁を上がり、
下段を終了。上段は頑張れば水流左も可能かもしれない。

「行こうと思えば行けるかな」
「守護霊さんに出動要請ばかりしても悪いので・・・」

と、簡単に左から小さく巻いて滝上に出た。
40mナメ滝(カーソル当てて)
2段45m(カーソル当てて)
2段45mの上段

高巻きもままならないゴルジュはまだ続き、V字ゴルジュ化。ここに20m下部トヨ状滝が掛る。この滝は絶対巻けない。
現場監督さんが手前に垂れさがる枯れ木の枝を押しのけ、下部トヨ状をフリーで突破。垂れ下がる枯れ木が落ちてくる
可能性も有るので、その様を離れたところで見ていた。

「水流の中にスタンス結構あるよ」
「了〜解!」

と私も続いた。上段は水流左に移動して直上だが、岩がノッペリ気味なのでスリップ注意。現場監督さんが突破してくれた
ので、お助け紐を出してもらう。(^^)v
ゴルジュはここで終了。この辺りでも整地すればテン場が得られるかも。少し進むと最後のハイライト”七丈ノ滝130m”
見えてくる。
20m下部トヨ状滝
私も続く・・・
七丈ノ滝が見えてくる


今までの滝のスケールと全然違うので間違う事は無いでしょう。少しガスが掛っていたが、近づいていくとガスもとれ、
姿を現してくれた。
『水流が少ないのが残念』とトポには書かれてあるが、今日は、この高度の割にはしっかり水を落としておりラッキーだ。
この滝、下部70m部分は立って居るが上部(滝下まで来ると見えない)は寝ているので、左岸潅木帯を巻いて上がれば、上部
は直登出来そうな感じがした。

”登山大系”によると『滝上は細い流れでブッシュの急斜面に突き上げ興味は少ない』との事。
”もう、ここに来る事は無いのかな”と思うとチョット後ろ髪を引かれるが、左岸の沢筋(七丈滝氷瀑登攀でアプローチに使う枝沢?)
で黒戸尾根を目指す。藪漕ぎする事無しで、七丈ノ滝下から40分の登りで登山道に出た。私の高度計で2230m。
七丈ノ滝130m
左岸枝沢を詰め上がる
黒戸尾根到着


若い女性の間で最近山登りが流行っている様だが、高低差2200mある日本屈指の黒戸尾根に”山ガール”は居ない。(-_-;)
すれ違うのは、「この時間で山頂狙って降りてくるー!?」と無謀な計画を話すオジサンばかり。
長〜い下山路だが、成人病検診の話題になるとお互い話は尽きず、3時間で駒ケ岳神社に到着

温泉は激混みの”おじろの湯”を避け、藪の湯”みはらし”に行く。(500円)ここは超穴場! お客は我々だけで貸し切り状態。
見晴らしは本当に良くて、お勧めだ!
黒戸尾根の下山
横手駒ケ岳神社


P.S:篠沢は登山大系には15時間と紹介されてますが、現在では下部に堰堤が出来、林道が伸びているので、
   現在では余裕の1泊2日コースです。
   平凡な様相も多いけど、花崗岩の白さもあり綺麗でした。圧巻の大滝を二つも持ち、登れる滝も多く
   沢慣れした人にはお勧めかも。ザイルは30m1本で足りました。テン場はゴルジュ以外には結構点在。
   魚は残念ながら居ません。

遡行図(クリックして)





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