2010年10月16日 湯檜曽川 一ノ倉沢本谷(第4ルンゼ)

メンバー:現場監督さん
装備ザイル:8mm×50m(2本)、8mm×30m、カム、靴:アクアステルス
遡行図はこちら、概要写真はこちら

沢と岩の世界の融合点の代表ルートと言えば、真っ先に思い浮かぶのがこの一ノ倉沢本谷。
岩の世界を全く知らない私にとっては、ご一緒していただくのは、この方しか居ないという事で、
現場監督さんにお願いした所、快諾していただき今回ようやく実現する事になった。

アプローチ:FIT
16:25自宅発→17:01上三川ジョイフル→18:45太田桐生IC→20:15湯檜曽
4:55ロープウェイ駅基点発→5:50一ノ倉沢出合→7:10二ノ沢出合→10:15第2ルンゼ出合→14:20稜線登山道
→(西黒尾根下降)17:35ロープウェイ駅基点

どの記録を見ても、本谷遡行は長丁場。さらに車は近年ロープウェイ駅までしか入れなくなったので、朝5時には出発する。
1時間弱で、一ノ倉沢出合到着。すでに数パーティー先行している模様。すれ違ったパーティでは第4ルンゼは今日は居ない様だ。
大きなカメラで紅葉撮影されてるカメラマンの横を谷通しで入渓する。

最初はゴーロ。すぐに右岸から沢筋かと思ったが、下部の沢を巻くための巻き道との事。ここを過ぎると岩盤が発達した様相に一変。
この辺りの小ナメ滝は深い釜を有しており水流通しはチョット躊躇。随所に残置ロープがぶら下がっており、これを
使ってしまえば何ら問題なく通過出来る。
一ノ倉沢
すぐにナメが現れます
残置ロープが随所に有り

一旦平凡な様相になると右岸から一ノ沢が入る。出合いはただのゴーロだが、『沢登り要素を堪能できる名渓』と登山大系では
紹介されている。 
ここから先は再び岩盤が発達。正面に衝立岩が見えて実に見事。ミニゴルジュ内4mナメは水流右の乾いた所で巻き、
その次の5m2段ナメは上段のみ水流通しを両足ツッパリで越える。まぁここも残置ロープあるけど・・・
一ノ沢出合い
4mナメ
5m2段ナメ

少し進むと、衝立前沢が左岸から入り、本流はにかかる小ナメ滝を右岸に付けられた残置ロープで越えると10mナメ
これは、どうあがいても登れる滝では無く、左岸の乾いた岩で高巻く。ここもご丁寧に左岸に2本も付けられており、
事故防止?とは言え、ちょっとやりすぎ感あり・・・ 現場監督さんは、左岸をそのまま高巻いていくが、私は10m滝上に出て
沢通しで行く。
衝立前沢出合
10mナメとその高巻き(カーソル当てて)

現場監督さんも沢床に降りてくると、7mナメ。左岸からヘツリで行こうとしたがムリ。ここは右岸から巻くのが定石か?
この滝の上にも小滝が続くが、どれも風呂釜の様な釜を有し。水流通しで行く人はマズ居ないでしょう。すべて右岸で高巻いた
沢は右に屈曲すると大スラブが広がる。水量が多いと見栄えがさらに上がるが、水は岩を湿らす程度。
7mナメ
すべて右岸巻き
大スラブ

ここは今日の為にわざわざ購入したアクアステルス靴が威力を発揮。とにかく、乾いた岩なら45度くらいまで立てるんじゃ
ないかな?って勢いだ。写真を撮り合いながら、「観光ですから♪」といって快適にスラブを上がっていく・・・
二ノ沢出合い手前の7m滝は水流左をフリーで直登。V  二ノ沢はナメが続いており、快適そうだ。
ここで、先行していた二ノ沢に入るパーティーの方から、
「沢のHP立ち上げてる人ですよね?」
と、ご丁寧に声をかけていただいた。ありがとうございます♪
大スラブ内のナメを快適に歩く
ニノ沢手前の7m滝は水流左を直登
ニノ沢

ニノ沢出合いから先は狭ーいゴルジュ。通常ここに雪渓が残るらしい。今年は記録的猛暑で雪のかけらも無く、完全遡行が出来そう。
最初の3mCSは両足ツッパリで上がって、CSのガバとって直上する。見た目より簡単。
次の4mは現場監督さんが先行。私がビデオを撮っている間に、上がってしまった!
ニノ沢出合いから見る本谷の様相
3mCSへ(カーソル当てて)
4m滝

この滝を越えると、遡行図に書かれてある「幻の大滝」になる。数多くの記録に書かれてあるクラックのある左壁が印象的。
滝自体は大きくなく12mと言ったところで 「まぼろしの大滝」と言うより 「まぼろしの悪い滝」 と言う方が正解かも・・・

ほぼすべての記録に”左壁のクラックを繋げて登っていく・・・”とあるが、まぁ折角なので、直登出来るか見てみる。
下部5mくらいまでは簡単に登れるけどそこから先、右に上がりたいところだが途中ノッペリしておりNG。左は逆層風の
濡れた岩でこちらもムリそう。。。「やっぱダメですね・・・」と私が言うと。現場監督さんは、「あそこ潜れるんじゃない?
とマジ顔で言っている!?    へっ???
「どう見ても潜れないでしょう(笑)」というと、「試しに行ってみる!」といつも以上に強気発言。
”さすが、岩の世界になると凄いなぁー” と50mザイルを出す。
最初の5mを簡単に登ると。

「やっぱ潜れないわ!!!(^^ゞ」

”はい、はい、御苦労さまぁ〜” と苦笑するが、ここからが凄かった!!!

「左登ってみる!」

と、ハーケンでランニングを取り、アクアステルスで濡れた逆層岩を登り始める。スタンス、ホールドが有ったのだろう。
4m直上。「カムそこで決められない!?」と私も応援モード突入。見事カムが決まり一安心。ただ、真の核心はここからで
このまま直上は出来ないため、ノッペリした岩を跨いで右の凹角に移動。右手にガバが欲しいところだが、無い様で、
しかもノッペリした岩を一旦跨いでしまうと戻る事が出来ない。”突破してくれ!” との念も通じて、見事突破してくれた!

トップが行った以上フォローしなくてはいけないのだが、フォローなのに怖い。最初の5mを上がると7cm程の岩がCSになっており
右手でガバが取れる。ここから上に有るカムまで確かにホールドスタンスが拾えたが、リードはかなりキツイと思うW+
カムに手が届き回収。核心の岩跨ぎだが、滑ったら終わりの ”神頼み” の世界。一か所見つけた甘いホールドを右手にとり
何とか凹角に移動。ここから2m上がれば終了。X

定石の左壁に目をやり「あっちは、もっと簡単なんだろ〜なぁ〜・・・?」と、まぼろしの大滝は水流通しの直登で終了する(笑)
幻の大滝全景(カーソル当てると定石ルートが出ます)
大滝登攀(カーソル当てて)
ここで右に移動(クリックして)

大滝上はまだゴルジュで、2方向から水が落ちる9mCS。私は左の水流を目指し、フリーで直登するが最後の1ポイントが渋めで躊躇。
現場監督さんが左壁の乾いたところを上がってくれたので、上からザイルを降ろしてくれるのを待って
突破した。W

この上は3段30mの幅広ナメ。アクアステルスが物凄いグリップ力を発揮。1枚岩をフリー登っていく。監督さんはグリップ力に不安を
感じるとの事で右の階段状を利用して小さく巻いて上がった。ここが普段フェルトを履いてる私と、フラットソールを履いている監督さん
との感覚の差というものなのだろうか・・・?
幻の滝上の9mCS。(カーソル当てて)
3段30mナメ
3段30mナメを細かい起伏を取り直登

3段30mナメを越えると広大なスラブが広がり、この辺りを『本谷バンド』と呼ぶらしい。右岸から滝沢がひたひたと水を落としている。
 このスラブを詰め上がった所で右岸から第2ルンゼが入る。先行パーティが取り付いていたが、結構、石を落としていた。
かなり悪そうだ。 
本流は10mF滝”じゃぁE滝、D滝ってどれよ?”って思うが、解らないまま・・・
とりあえず、このF滝は水流左の乾いたところをフリーで直登。V
本谷バンド
右岸から滝沢が出合う
第2ルンゼと本流のF滝10m

本谷はここからまたゴルジュ。CSの小滝を2つ越え、4m2条を超えると右岸から第3ルンゼが入る。この上の8m滝は右壁に残置
シュリンゲがぶら下がっている。ここまでフリーで上がり、一応長いシュリンゲでセルフを取って、残置シュリンゲに足を乗せて突破。
その上もチョイト悪いが互いにフリーで越えた。
この先、第5ルンゼが左岸から入る。本流となる第4ルンゼも狭いゴルジュが続く。 
F滝上の様相
4m2条
8m滝(カーソル当てて)
第5ルンゼ出合い手前

4m程度の小滝を越えると本日2回目の核心となる20m大滝。ルートは左壁。下から見ると簡単そう。まぁ登れる気はしたが、
「監督さん、ここもお願いします!」と安易に振る。 監督さんも、ここは簡単と感じたか、ひとつ返事でリードを受けてくれた。
しかし、取り付いていると見た目以上に難しそう。残置ハーケンは多数あるのだが、すべて古いらしい。なんとか突破してくれたが、
なかなか”ビレイ解除”の声が聞こえない。 暫くしてコールが届く。フォローすると、下から見るのと大違いで良いスタンス、
ホールドが少ない。W+ 何とか核心を越え、上にあがると、さらに20m以上ザイルを伸ばした草付きで支点を取っていた。
どうもこの辺りまで、良い支点が取れないらしい。

ここからは、草付きスラブを沢筋に向かってそのままザイルを伸ばし30m程トラバースを掛ける。難しいトラバースではないが、
途中の支点はチョットした凸岩にシュリンゲを掛ける程度の物しかない。
20m大滝全景(カーソル当てて)
簡単そうに見えるけど・・・
1ピッチ目終了点から2ピッチ目へ(カーソル当てて)

ここからの沢筋は狭いルンゼに小滝を落とす様相。右岸にスラブが続いており、これを利用して6mチムニー滝上に出る。

この上に控える7mCS。この滝も右岸スラブ利用で簡単に抜けれるのだが、敢えて突っ込む。2つのCSが有るが、手前のCSに乗ると
この岩が動いた!!! これが落ちるとヤバいので急いで左壁に取り付く。現場監督さんにはザイルを出して登ってもらった。

次の2段10mは狭くて全貌が見えない。現場監督さんが下段を突破して私も後に付いていったが、上段がヤバイとの事で。
急いでクライムダウン。左岸から簡単に巻いて上からザイルを出した。ここは左岸を巻いた方が良いだろう。
大滝上から
挟まった石が動く7mCS
2段10m(カーソル当てて)

この先CS滝を越えていくと、黒光りした岩のある6m滝。どう見ても悪いが、一応ルートをさがす。、チョット取り付いてみたものの
辞めることにし、右岸を小さく巻いた。落ち口の高さまで二人とも上がった時、現場監督さんが

「ヤバイ!!!」

と声を上げる、上流を見るとスラブ幅一杯に広がる落石群!!! 距離は70m程度か!
「早く、こっちへ!」と監督さんが言うものの壁にフリーで取り付いている状態。動けたのは1.5m程度。もう、落石を目で追って、
直前でかわすしかない。
致命的な大きさのものは幸いルンゼに落ちて行き、5cm程度の物が右手の甲をかすっただけで収まった・・・
20個以上は有っただろうか・・・時速40km以上で飛んでくる落石の恐ろしさは凄いものがある。
かすったところを見ると手袋が汚れてる。チョット見てみると1cm程皮膚を切っていた。現場監督さんが救急キットを取り出し、
応急手当を受ける。
6m滝(右岸巻き)
このスラブから落石が・・・

この先、右岸スラブを上がっていくとルンゼは終了。ガスって来て視界が悪いが、正面ドーム状の岩壁(?)を避け、
右に延びる沢筋に入る。やがて草付きになり、一ノ倉尾根に出る。この尾根には薄い踏み跡があり、これをたどると国境稜線に到着。

時間は14時過ぎ。下山は西黒尾根に取り、ギリギリヘッデン灯けずに林道到着する。
ドーム状の岩壁
右に延びる沢筋から詰め上がる
国境稜線到着です♪

P.S:記録的猛暑もあり、全く雪渓の無い一ノ倉沢本谷を遡行できました。下山も含めると長丁場になるので早出mustです。
   靴はアクアステルスであれば、フラットソールは要りません。
   ザイルは45m以上1本で遡行足りますが、敗退を考えると2本持って行った方が良いでしょう。
   カムは2,3個持っていくと便利です。

遡行図(クリックして)






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