2011年9月23〜25日 中央アルプス 滑川 奥三ノ沢→四ノ沢下降 & 前岳沢 その1
                                                       奥三ノ沢→四ノ沢下降編
メンバー:Takahashiさん、ひろた
装備:ザイル8mm×50m、カム#.4、.5
沢靴:アクアステルス
地形図:上松、木曽駒ヶ岳
遡行図、概念図はこちら

奥三ノ沢は滑川流域で最もグレードが高いと「登山大系」に書かれており、すごい難しい印象をもっていた。。。WEBではアイスクライミングの記録がほとんどの中、
京都雪稜クラブの記録に ”そう登攀的でもない” と書いてあったので、「じゃぁ大丈夫かな・・・?」 と、今季狙っていた沢の一つだった。
当初8月上旬に行く予定だったが、天気で流れ、この3連休も北アの金木戸川流域とこの奥三ノ沢の2案を用意。台風15号の影響もあり、流域面積の小さい滑川を選択。
多くの記録では奥三ノ沢を遡行後、宝剣岳&駒ヶ岳を経て延々稜線歩きの下山がほとんどだが、今回は記録のほとんどない四ノ沢を下降。
さらに、3日目は滑川右岸の前岳沢を遡行して、下山することにした。今回同行のTakahashiさんは既に奥三ノ沢を単独遡行済みで、非常に心強い。。。

アプローチ:フィット
16:08自宅発→(一般道)17:54太田桐生IC→20:22梓川SA(仮眠)、4:45同発→塩尻北IC→5:50寝覚ノ床→6:05北股沢大堰堤P
初日: 6:40北股沢大堰堤P→6:57敬神ノ滝小屋→7:17滑川最終堰堤入渓→8:17三ノ沢出合→9:42奥三ノ沢出合→11:52 F2上→13:40 F5上
     →14:18 F8上→15:30 F13下(2270m付近)で行動終了。
二日目: 7:05出発→9:20三ノ沢岳山頂、10:00同発→10:25四ノ沢下降開始→13:35滑川本流(四ノ沢出合)で行動終了


Takahashiさんとは、寝覚ノ床セブンイレブンで待ち合わせ。滑川流域のアプローチは、ここから完全舗装の道を北股沢の大堰堤まで車で進む。
北股沢に掛かる赤い鉄橋を渡ると広い駐車スペースがあり、ここに車を停める。ここから先、敬神ノ滝小屋までも簡易ゲートをどければ車で入れる。
まぁ歩いても20分弱ですが・・・ 敬神ノ滝小屋を左に見てそのまま滑川右岸に付けられた林道を20分も歩けば滑川の最終堰堤に到着。このあたりで
入渓するのが一般的だ。Takahashiさんに言わせると台風の影響だろう、前回来た時よりかなり増水しているとの事・・・
彼によると三ノ沢までは右岸に踏跡が伸びているらしいが、今一つはっきりしないので沢通しで進む。京都雪稜クラブの記録では本流は”ブタ沢”と
書いてあるが、単に平凡な様相が続くだけで、悪い気はしない。入渓して1時間で三ノ沢出合到着。ほとんど1対1で入るので間違う事は無いでしょう。
ここから先は正面に宝剣岳の主稜線が見え、イイ感じ。途中キノコもGETし、飽きることなく奥三ノ沢出合に到着出合付近にテン場もあり。
北股沢大堰堤駐車スペース
敬神ノ滝小屋にて
三ノ沢出合(ほぼ1:1)
奥三ノ沢出合(大岩が目印)

今日は快晴! 出合からF1 30mがバッチリ見えるはずだが、おもいっきり逆光でうまく写真に収められない(涙)  とりあえず滝に近づいて偵察する。
Takahashiさんは前回左岸から巻いたそうだが、今回は直登する。ルートは左右の水流の凹角。10m程フリーで登り、途中からザイルを出して私がリード。
見た目簡単そうだが、結構大きい岩が動くのが怖い。2泊分の荷物もやはり重く感じる。。。それでも凹角を登りきるとハーケンがベタ打ちされた箇所があり、
ここから左の水流側に回り込むのだが、いきなり80cm以上の大岩が簡単に動くのには驚いた。これを避け草付を上がって灌木でビレイ。
Takahashiさんがフォローするが、いつもと違ってやけに慎重。どうも私が足を置いた岩が簡単に外れたとの事。。。
落石の危険があるため、下からザイルを出した方が良いだろう。見た目V+、登ってV+、恐怖度W+といった感じか。

F1 30m2条
下部はフリー(カーソルあてて)
凹角。動く岩多し
フォローのTakahashiさん

F1を上がるとすぐにF2 50mが見える。この滝はかなり登るのが難しいとの事。ただ、絶望的には見えない。だから登る人も居るわけで・・・一応、ルートを探ると、
水流左端から取りつけそうだ。ただし、途中からどうするんだ?という気もしないでもない。アブミは無いとムリかも。あと、最上段がどれくらい難しいのかが
今一つ下からだと解らない。空身で3時間かけて登ったとの記録もあるようだが、我々は左岸を高巻く。滝下から見える、涸れた白い巨木を目指すらしい。
高巻に危険な個所は無く、目指す白い巨木に到着。ここから左岸涸沢に回り込んで降りれば懸垂の必要はない。
F2 50m(クリックして)
F2登攀ルート?
この白い巨木を目指して巻く
巨木からは左岸枝差を利用して下降

F2上には整地すれば使えそうなテン場がある。少し進むとF3 9m。これは全く問題無く快適に水流右を直登。すると割と最近にできたと思われる崩壊地に
出くわす。左岸の壁が落ちたようだ。巨岩と右壁の間から這い上がりここを超えた。 すると前方に見事な大ナメ。これがF4 2段30mナメ。水流左から
登ってそのまま直登しても良いが、若干草付が混じるため、途中で水流右に移動するとスッキリとした感じで快適に超えられる。
そのままナメ床が続くと顕著な二俣になり左横からF5 15m雄滝が姿を現す。右の滝も15m程あり、こちらは雌滝というらしい。

F3 9m
崩壊地
F5 15m雄滝のある二俣(カーソルあてて)

F5は水流左から取りつけそうだが、落ち口のところがまともに水流を受けてしまい、そこをどう処理するかがポイントになる。・・・という事は下から見て
わかるが。この寒さではあり得ない。雌滝の水流右も見るが、水流右端なら超えられる可能性は高い。
通常は雄滝と雌滝の間の草付スラブを登り、その上の凹角を登って高巻くらしい。結構この高巻きが核心と書いてある記録が多いようなので、
今回はこの定石ルートがどの程度の物なのかを体感することにした。

凹角の取り付きまでの草付は容易で、フリーで登る。この凹角取りつきポイントから一気に落ち口に向けて水平トラバースも有り!?。。。と、下から見て検討
していたが、ザイルを出して実際トラバースしてみると大岩が邪魔をしているのが解る。この大岩をうまく超えても、今度はルンゼらしい切れ込みが入っており
行く手を阻んでいるようだ。。。ここはおとなしく、凹角入っていくしかない。ここもリードは私。

で・・・、この凹角、まず凹角に入るための1m強の段差を登らなくてはいけないのだが、これがチョイと嫌らしい。残置ハーケンがあり、ここにシュリンゲを掛け
それに足を乗っける。。。と経験者のTakahashiさんが説明。。。確かにそれもあり!。・・・で、今回は、#0.4カムがギリギリ左手側に決まったので、カムを左手に
残置ハーケンに掛けたシュリンゲを右手に持ち、腕力勝負でここを登る。カムの回収も可能だが、一応Takahashiさんのために残置。

凹角内は寝ており全く問題無いが、今度は凹角の出口を抜けるのが嫌らしい。ここには残置ボルトが打ってある。その左下50cmのところにスタンスが
あり右足は簡単に乗るが、ここに左足を乗せて直立姿勢にならないと、どうも抜けられそうもない。ボルトに掛けたシュリンゲでA0するが、それだけではダメで、
右足を進行方向左サイドの壁に押し当てツッパリで、左足を浮かせてスタンスに移動させた。ここで直立姿勢を取ると上の細い灌木に手が届くので、
これを利用して凹角を抜けだす。さらに草付を5m登って灌木でビレイ。まぁテクニカルではあったが、高度感は無いので、F1よりは怖くなかった。
ここからは左岸枝沢側に一旦回り込んでF5上に出る。
F5 直登するならこのラインか
雌滝水流右。これで巻くのもアリか
雄滝、雌滝の間の草付スラブ(カーソルあてて)
凹角入り口のハーケンを確認

F5上の右岸は切り立った壁が続く。4mヒョングリ滝を超えた左岸の灌木帯の中に4、5人横になれる絶好のテン場があった。高度計で2105m付近。
薪もこの辺りは豊富。奥三ノ沢ではここが一番ベストなテン場であるので、翌日の行動時間を考慮し判断してもらいたい。我々は、F8を超えた位置で
幕営したという記録を見てきたので、さらに先に進む。沢が右直角に曲がるところに掛かる上部がトイ状になる滝がF6
F5上にある4mヒョングリ
左岸の沢から3m離れた位置に絶好のテン場あり。
隠れた部分にトイ状滝があるF6

ここを超えるとすぐに左から入る見事な滝がF7になる。下からは10m程度に見えるが、下からは見えない上部なるものがあり、全体で25m近い大滝だ。
この滝は右岸草付岩を登る。ルートを選べば難しくは無いだろう。これを上がると間髪入れずにF8になる。登山大系には40mとあるが、実際は20mも無い。
あまりのギャップにこれがF8かと悩む遡行者も多い事だろう。"F8 18m"と私の遡行図にはそう書いておく。F8は逆相なので、これを登るには相当気合いが必要。
巻きは、両岸可能に見えるが、左岸を選んで巻く。藪がチョイトうるさいだけで、技術的には難しくない。
F7 25m全景
F8 18m
F8 は左岸を高巻いた。

F8上で14時半前。ここからF9、F10が見える。F9 5mは水流右から、F10 8mも水流右端凹角からフリーで直上する。そろそろテン場を見つけたいところだが
F11 2段9mを超えると、両岸切り立ったゴルジュになってしまう。ゴルジュ内に悪い滝は無いが、出口に12m3段のF12が現れる。最初、左壁に取りついたが
悪く、1段目を右から登り、水流を横断して凹角を直上。最初の一歩に踏ん切りがつかず、Takahashiさんのひざを借りて上がる。Takahashiさんにはザイルを
出して上がってきてもらった。今まで濡れなかったのだが、ここで結構飛沫を浴びてしまった。雲行きは悪くなり、雨か? と思ったら、みぞれ・・・
F10 8m(カーソルあてて)
両岸切り立ったゴルジュが現れる
ゴルジュ出口のF12 3段12m(カーソルあてて)

早いところテン場をを見つけたいが、また前方に10m級の悪い滝(F13)。これは巻しか無いが、両岸が高く時間がかかりそう。ここにテン場を見つけられないかと
Takahashiさんが右岸を物色とすると、整地すれば2人寝られるスペースを発見♪ 『ここにしよう!』と行動終了する。2270m。彼に整地を任せ、私は薪集め。
乾いた薪は少なかったが着火は手馴れているので、とにかく量を集めた。整地も済ませ草を引いてほぼ完ぺきなテン場をTakahashiさんが完成させる。
焚火も見事着火。天気も回復、濡れた服もすべて乾かすことが出来た 
F13。これは高巻くしかない
F13下で整地してテン場を作る
焚火も着火♪


二日目
テントと、0℃用寝袋もあり暖かく寝れたが、朝起きて靴を履こうとしたら、靴が凍っていた。。。放射冷却??? 焚火で温めて靴を履く。
F13は、右岸ルンゼを利用して高巻く。小さく巻くと、大岩に残置シュリンゲが掛かっており、これを利用して懸垂12m程度でF13上に降り立つ。
ここは二俣になっているが左俣の水量は少なく。右のF14 8mに取りつく。・・・と、言っても飛沫を被っている岩は凍っており”摩擦係数=0”
乾いた岩を拾っては慎重に登って行く。幸い、ここから先は、悪い滝は無く、この状況下でも進むことができた。沢床も広がりを見せてくるが、
良いテン場は無く、かなりの整地を要しそう。
F13上は二俣。右にF14 8m。
凍ってます・・・
小滝が続く・・・

ゴーロ帯をを詰め、F15 8mを超えると最後の大滝F16 20mとなるが、水量は既に少なく、威圧感は無い。登れなくもなさそうだが、右の沢筋を詰めて巻いた。
この上で、急に水が涸れる。沢形を詰め、ちょっとしたハイマツ帯を抜けると三ノ沢岳山頂にダイレクトに出る。三ノ沢岳山頂は主稜線から離れているのだが
登山者は多い。朝の寒さが嘘のように風も無く暖か。。。大休止して四ノ沢下降ポイントに移動。
F16 20m
最後の詰め
山頂到着です♪


四ノ沢下降点は三ノ沢岳から下り続け、2655mのコルに位置する。1〜2分の薄い藪漕ぎをすれば、すぐに沢形に出る。滝も少なく、ストレス無く下降可能。

三ノ沢岳直下から四ノ沢方向(カーソルあてて)
四の沢下降点到着
下りに特に問題はありません。

2470mまで下って水流が現れ、滝も出てくるが、ここから先も問題なく下降できるのはうれしい。2段10m滝は下段がクライムダウンできず。7m程の懸垂で
沢床に降りる。 3m大岩滝を降り、少し行くと、8m滝。その下に大滝が控えて居そう。大滝下では右岸から枝沢が入っているのが解る。左岸巻きは考えにくく、
ここは右の子尾根に登り尾根伝いを降りていくか、子尾根から右岸枝沢に降りてしまおうと目論む。。。高さ15m程の子尾根に上がり、右岸枝沢を覗くと、
かなり深く切れ込んでおりNG。尾根伝いに下っていく事にした。本流は8m滝下に登山大系に書かれている25m滝が控えて居た。子尾根を下り続けると、
右の枝沢にノーザイルで降りれそうなポイントを発見したので、灌木を掴みながら沢床に降りる。
懸垂した2段10m滝
3m大岩滝
8m滝上から。右岸子尾根に上がる。

下から見る25m滝も見事だけに、さらに下に控えるハイライトの2段60m大滝が楽しみ。少し下降し、その大滝上に立つ。滑川本流も見え、やはりスゴイ。
下降は右岸。 落ち口上の大木に残置シュリンゲがあったが、アイスクライミングの下降で使うのか。50mザイル2本あれば下降できるのでしょう。
右岸の樹林帯に入り小さく巻こうとするが、1つ2つルンゼが入っており、少し大巻きになる。1回10m程の懸垂を交え大滝下に出れた。
25m滝(カーソルあてて)
2段60m大滝上から
直登する場合、2段目はこのルンゼを登るらしい

2段60m滝は、奥三ノ沢のどの滝よりも圧巻!!! しかも、この滝は登山大系によると直登可能らしい。。。ここから小滝を2,3降りて、滑川本流に到着。
時間は13時半。1泊2日で奥三ノ沢を遡行する際、四ノ沢の下降でも時間的にOKという事だ。  我々は明日、前岳沢の遡行を残しているため、
四ノ沢出合付近でテン場を探すと、本流右岸、ちょうど2段60m滝が正面に見える位置に平らな大岩があり、ここにテントを設営。本流側には中央アルプス
主稜線が見え、絶好のロケーションだ。乾いた薪も大量にあり、昨日の幕営地とは雲泥の差。これだけ条件がそろえば1泊2日で帰るのは勿体無いくらいだ。
2段60m大滝(カーソルあてて)
絶好のロケーションにテントを設営
テン場からの大滝
暑いくらいの焚火・・・

P.S:奥三ノ沢はどちらかというと夏向きの沢です。難しい滝は簡単に巻け、その場合の核心はF5の高巻きになります。アブミ1個持っていけば、
   これも楽に超えられるでしょう。テン場は上部に求めると広いところは無く、少人数パーティでの遡行に適してます。ザイルはF2を登らないのであれば
   四ノ沢の下降も含め30m一本でも足りますが、F1直登の場合は落石に対し注意が必要。四ノ沢の下降と宝剣岳経由の下山のコースタイム同じです。
 
遡行図(クリックして)
概念図(クリックして)

前岳沢編はこちら





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